エネミー・ライン


(原題:Behind Enemy Lines)
2001年/アメリカ
上映時間:106分
監督:ジョン・ムーア
キャスト:オーウェン・ウィルソン/ジーン・ハックマン/ガブリエル・マクト/ジョアキム・デ・アルメイダ/デヴィッド・キース/他

 




 

セルビア人武装勢力に撃墜された戦闘機のパイロットが、敵地から単身で逃走劇を繰り広げる戦争映画。

1995年に実際に撃墜された、米空軍兵士の6日間の逃走劇と酷似した内容だそうで、当人に無許可で映画化したということで裁判沙汰にもなった作品でもあります。

 

ちなみに1994年にも英国海軍パイロットが撃墜され脱出しており、それも元になっているのではという説もあるそうです。

日本人としては非日常的な話ではありますが、「兵士」という職業の危険性や意義を考えさせられる気がします。

「プライベート・ライアン」や「シン・レッド・ライン」や「フューリー」など、近年でも戦争を題材にした作品は少なからずありますが、本作はその中で埋もれてしまった不遇の傑作かなと思っています。

ん?「エネミー・ライン2/北朝鮮への潜入」だって?知らんなぁ。

 

 

 

さっくりあらすじ

1992年、旧ユーゴスラビアの紛争が解決の兆しを見せ、一応の和平が結ばれたボスニア。

米海軍パイロットのクリス・バーネット大尉は平和維持活動として、建前としての訓練に意味を見出せず、苦言を呈したレイガード司令官に対し退役願を提出した。

休暇であるはずのクリスマスにて、司令官の命令によりボスニア上空からの撮影を命じられたクリスは相棒のスタックハウスと共に戦闘機F/A-18Fに乗り発進する。

無駄口を叩きながらも辿り着いたボスニア上空にて、クリスは本来の飛行ルートを外れた場所にレーダー反応を探知し、向かった先での撮影を開始。

しかしロックオンの警告を受け、いきなりミサイルによる攻撃を受ける二人は避けきることができずに撃墜され、辛うじてパラシュートで脱出するのだが、、、

 

 

 

 

生意気なパイロット
クリス・バーネット大尉

 

敵地に迷い込んだクリスを付け狙う男
通称”ジャージ”

 

艦隊司令官・レイガード少将
部下の救出と政治的駆け引きで揺れ動く

 

 

 

 

”逃げるだけ”の緊張感

”優秀な指揮官”や”歴戦の猛者”や”ワンマンアーミー”的な、強靭な肉体や兵器を片手に敵と対峙するような物語ではありません。

むしろ圧倒的な人員や、兵器を要する敵兵からひたすら逃げ回る作品です。

ガトリングガンやロケットランチャー、装甲車や戦車などの兵器は敵が保有しているものであり、拳銃1つで逃げ回る姿にはヒロイックな活躍は無く、地味な映画なのかもしれません。

 

 

最後の任務のつもりだったのに偶然と不運が重なり、投げ込まれた過酷な環境で逃げ回る1人の兵士。

一方で政治的な理由で部下に直接的に援助ができない司令官。

そしてとある理由から全力で殺しに来る武装勢力。

それぞれに行動する”理由”があり、三者三様の思惑が交錯するサマは非常に重厚な物語で、戦争というものの複雑さを端的に表しています。

 

さらに部隊のほとんどは隠れるところの少ない寒い山野であり、重火器を抱えた敵兵にジワジワと追い込まれる緊張感はかなりのものです。

やっとこさ市街地に着いたかと思えばトラップだらけであり、”戦場には休息の場は無い”というのが嫌でも伝わってきます。

 

 

訓練を受けてきたものの、あくまでクリス大尉はただの兵士であり、卓越した狙撃技術や器用なブービートラップ技術は無く、本当の意味でひたすら隠れ、逃げ回ることに終始します。

この最初から最後まで”逃走劇”として描いてあるのが実に潔く、このシンプルさ故の緊張感が本作最大の見どころと言えるでしょう。

 

主演は個人的に大好きなオーウェン・ウィルソンですが、本作に限ってはお笑い要素は一切無し。

能天気な兵士から研ぎ澄まされたサバイバーへと変貌する演技は圧巻ですな、本当に演技の幅が広い俳優です。

 

また司令官・レイガード少将を演じるジーン・ハックマンも安定の素晴らしい演技を誇ります。

自身の部下を助けたい熱意、政治的な軍上層部の意向で手出しできないもどかしさや苦悩が滲み出ており、影の主役と言っても差し支えない存在感を発揮しています。

 




 

まとめ

アメリカ国防総省が製作に全面協力したとされるだけあって、嫌な見方をすれば「米兵賛美」な映画ともいえます。

しかし本物の空母や戦闘機、兵器に至るまで精密な考証がなされており、非常に現実的で怖い描写は一見の価値ありかと思います。

時折挟まるスローモーションやフラッシュバックの映像も先鋭的で個人的には好きですね。

 

「トラップと地雷は本当に止めようよ」と本気で訴えたくなる作品です。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 



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