蒼天航路

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英題:Beyond the Heavens
1994年~2005年
原作:李學仁
作画:王欣太
モーニング(講談社)
全36巻

 




 

三国志続きで申し訳ないですが、興味はあるけど触れる機会が無かった人にオススメの漫画。

 

”三国志演義”は王朝の血筋を持ち漢王朝の復興を目指す勇士・劉備と、漢王朝を手中に収め大陸の制覇を狙う曹操との戦いを描くのが基本となります。

従って劉備は民の意を汲む”正義”として、曹操は権力を傘に領土を広げる”悪”として描かれることが多くなるものですが、本作はその曹操を主役に据えて、一人の”英雄”として描いてあります。

 

ブロードウェイミュージカルを模したとされる通り、作画を担当した王欣太の凄まじい画力もあいまって圧倒的なエンターテイメント性を誇ります。

ややクセのあるタッチではありますが、特徴的な絵柄で漫画を見分けると本当に後悔しかねないので気を付けましょう。

 

 

 

 曹操の教科書

といえば良いんですかね。

ほぼ全編に渡って曹操の人生を描いてあるので、あらすじは割愛しますが、詳しくは「レッドクリフ」をご参照ください。

 

 

 

511uhivzazl曹操
治世の能臣、乱世の奸雄

 

8d1fa451劉備
蜀漢の初代皇帝

 

51dz6y1uhl__sx350_bo1204203200_孫権
呉の初代皇帝

 

 

 

 

全員、主役

蜀(劉備の国)サイドの視点で三国志が描かれることが多い中で、魏(曹操の国、厳密には曹操の息子の国)サイドの視点で進む本作は、この時点で異例の作品と言えます。

 

戦争も政治も、ついでに詩歌の才能まで一流である超天才・曹操という人物がどう成り上がり、どう世を渡り、そしてどう死んでいったのか?

物語中にちょくちょくと伝記が挟まる構成は非常に丁寧で、常識はずれでリアリストとされる曹操の魅力を語るにはとても言葉が足りません。

さっくり言えば法を作り、兵器を開発し、強大な敵を制圧し、王朝を支配し、新たな酒を発明したかと思えば詩歌にふける。

この複雑な人間性は非常に魅力的であり、ミステリアスでもあり、読み進めるごとに新たな側面が次々と現れます。

 

 

歴史モノなんで多少の知識は必要かと思いますが、続きが気になる深い内容は一見の価値ありです、マジで。

「登場人物は全員主役」とされる通り、準主役から端役まで、どのキャラクターも非常に良い味を出しています。

 

最終的に曹操と覇権を争う劉備、曹操に反抗した孫権はもとより、各陣営の配下、戦場で散っていった者、全てにおいて非常に緻密で細かい性格の描写があります。

各キャラクターに触れると本一冊くらいは書けてしまうので割愛しますが、もの凄く濃い人間ドラマがそこかしこに溢れています。

 

そしてその画風は正にミュージカルを観ているようで、迫力・美しさ・儚さ、どれも申し分無し!

きちんと特徴的にキャラクターを描き分け、またそれぞれに人格を構築していく、その数が数百にも上ればどれほど大変な作業なのかを想像するに難くはないでしょう。

戦争の描写はもとより、政治や王朝の権謀術数にすら迫力を感じる構成は本当に素晴らしいですね。

 




 

まとめ

歴史を動かしてきた曹操、曹操のいない歴史を作ろうとした劉備、その間で自国の平安を夢見た孫権、これぞ正に三国志。

実際には曹操が死んで物語が終わるので、三国時代の完結が最後まで描かれることはありません。

天に昇り、かつての妻を探しに蒼天の向こうへと旅立つ曹操の姿はマジで泣けます。

 

総評としては

序盤→つまんない、、、かな?

中盤→超面白い。

終盤→泣ける。

といった感じ。

 

特に最後の5ページくらいは本当に美しく感動します、この5ページを読むために長々と読んでると言っても過言ではないと思います。

ちなみに筆者は観てないですが、アニメにもなっています。

ぶっちゃけ「レッドクリフ」より遥かに高いエンターテイメントです。

 

オススメです。

ぜひ一度ご拝読くださいませ。


 

 

 

 



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