ボビー


(原題:Bobby)
2006年/アメリカ
上映時間:120分
監督:エミリオ・エステベス
キャスト:アンソニー・ホプキンス/デミ・ムーア/シャロン・ストーン/イライジャ・ウッド/リンジー・ローハン/ヘレン・ハント/クリスチャン・スレーター/他

 




”ボビー”の愛称で親しまれたロバート・F・ケネディの暗殺事件が起きた当日、現場となったアンバサダーホテルにいた人々の姿を描いた群像劇。

第35代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディが暗殺されたことは非常に有名な話ですが、弟さんも暗殺されてしまったそうで、恥ずかしながら知りませんでした。

いやぁ、無知って怖いね。

 

ベトナム戦争が転換点を迎え、キング牧師が暗殺され、公民権運動が活発化した1960年代。

怒りや悲しみで動乱した時代が終焉を迎え、新たない時代の幕が上がるはずだった1日を描いた作品として、これほどに人の心に訴えかける映画は久しぶりです。

 

 

 

さっくりあらすじ

1968年の6月5日。

ロスのアンバサダーホテルでは、選挙活動中の上院議員ロバート・ケネディを迎える準備が進められている。

ホテルロビーではドアマンを引退したジョンが、友人のネルソンとチェスの対戦中。

厨房ではアフリカ系のジェフや、メキシコ系のホセやミゲル達が不満をこぼしながらも働いている。

 

マネージャーのティモンズは人種差別的な言動を理由に、支配人のエヴァースから解雇を通告されたところだった。

エヴァースの妻・ミリアムはホテル内で美容師として働いており、ダイアンという女性の接客中。

ダイアンはウィリアムとの結婚式を予定しているが、それはウィリアムが徴兵を逃れるための偽装結婚だった。

 

酒に溺れる歌手のヴァージニアに、夫でありマネージャーでもあるティムは手を焼いている。

女優志望のスーザンはホテルのカフェで働き、彼女と親しいボランティアスタッフのジミーとクーパーは売人のフィッシャーから麻薬をもらい、ラリっている。

 

富裕層のジャックは鬱病を患った過去があり、妻のサマンサも情緒が不安定だった。

選挙活動を仕切るウェイドの元にやって来た、チェコスロバキアの記者・レンカは粘り強く交渉を進め、短時間ではあるがケネディへのインタビュー許可を得る。

 

各々の想いが交錯する中で、いよいよケネディの祝勝会が始まるのだが、、、

 

 

 

 

 

ロバート・F・ケネディ
通称”ボビー”
劇中では実際の映像が使われています

 

明日を夢見る人々
誰もがボビーの描く未来を望んでいた

 

 

 

 

 

 

「明るい未来」という夢

まずはロケ地となったアンバサダーホテルは、老朽化のために取り壊しが決まっており、エミリオ監督の嘆願により1週間の期限付きで撮影が許可されました。

実際に解体されていく現場で撮影を敢行できたこと、数多くの俳優が参加できたことに、エミリオ監督の想いが垣間見える気がします。

 

というのも、ケネディが暗殺された当時、エミリオ監督は6歳だったそうで。

事件後、民主党を支持していた親父さんは、エミリオ少年をアンバサダーホテルへと連れていき「ここでアメリカの夢が消えた」と伝えたんだとか。

 

泥沼化しまくったベトナム戦争から撤退しようと。

貧困や格差を減らそうと。

黒人も白人もヒスパニックも手を取り合おうと。

アメリカに住む人々に選挙権をあげようと。

 

誰もが願った未来を掲げたロバート・ケネディが亡くなり、同時にアメリカの夢も無くなったことがエミリオ監督の心に深く焼き付いたんでしょうね。

 

 

映画の舞台となる60年代は実に複雑な時代で、色々な人々の喜怒哀楽が交錯しているように見えます。

長引くベトナム戦争への反戦ムードからか、徴兵から逃れるために結婚を偽装するアメリカ人。

公然と人種差別をする白人に、苛立ちを抱えながらも働かざるを得ないヒスパニック系。

そんなヒスパニック系を横目に、怒りに飲まれることなく、黒人の地位上昇を目指すアフリカ系。

そして、ドラッグを用いて新たな生き方を模索するヒッピー達。

 

人種・政治・経済・外交と、様々な問題が蓄積し、誰もが現実に疲れ果て、それでもやって来る日々を乗り越えようとする姿は実に現実的なものです。

ヒスパニック系のホテルマンが野球観戦を何よりも楽しみにしていて、しかし差別主義の上司に常勤以外の仕事を迫られるシーンなんかは個人的にかなり印象的。

当たり前の権利を行使できず、仕事に隠れてはラジオで試合経過を盗み聞く姿には、何とも言えない感情が沸き起こります。

これは「苦労の中の些細な幸せ」なのか?

それとも「些細な幸せしか手にできない、不幸せな世の中」なのか?

 

また、そんなヒスパニック系を横目に、白人との付き合い方を考える黒人シェフも印象的。

キング牧師が暗殺され、光が差し込もうとしていた黒人社会に再び暗雲が立ち込めている状況で、いかに怒りを抑え、実を得るか。

見ようによっては白人に擦り寄っているようにも見えますが、実際に(白人から見て)有能であり、優遇されている彼の現状に嘘はありません。

そんな人種の壁に阻まれる、地位の向上とは何を指すのか?

 

 

世の中が平等ではないこの時代、人々は自由や平和を求め、世に漂う閉塞感からの脱出を胸に秘めています。

そんなモヤモヤを振り払うかのように、アメリカ大統領になるであろう”希望の星”ロバート・ケネディに誰もが夢を見たんですな。

彼が大統領になれば、きっと国が変わるんだと。

 

ケネディが語る理想の世界を信じ、待ちわび、夢を託す。

そんなことができる世の中に、少しだけ羨ましさを感じますね。

 

 




 

まとめ

凶弾に倒れたロバート・F・ケネディ。

映画は彼の肉声による演説で終わりますが、非暴力を訴える彼の声は是非とも一度聞いて欲しい。

それほどに、このセリフはすごいっす。

政治家の戯言かもしれませんが、それでも人の胸を打つ言葉の数々だと思います。

 

映画としてはケネディがどうこうではなく、あくまでアンバサダーホテルで過ごす人々の一日が描かれます。

実際の過去の映像を編集し自然に映画に組み込んであり、さらに多くの実力派俳優たちが集結しただけあって、映画としての完成度も極めて高いです。

久しぶりに映画で感動しましたよ。

 

オススメです。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。



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