エクソシスト


(原題:THE EXSOCIST)
1973年/アメリカ
上映時間:122分
監督:ウィリアム・フリードキン
キャスト:リンダ・ブレア/エレン・バースティン/ジェイソン・ミラー/マックス・フォン・シドー/リー・J・コッブ/他

 




 

皆さまご存じ、悪魔と神父の戦いを描いたレジェンド的なオカルト系サスペンス・スリラー。

古典的ホラー映画の傑作としても有名ですな。

ちなみにコッチじゃないよ。

 

いわゆるオカルト系映画のパイオニア的な作品であり、ホラー映画としての質の高さや悪霊・悪魔といった存在の表現方法として革新的な作品でもあります。

これまた有名な逸話ですが、1940年代に起きたとされる自称・霊媒師の叔母の死後に14歳の少年が悪霊に憑りつかれた、通称”メリーランド悪魔憑依事件”が元ネタとなっているんだそうです。

数十回に及ぶ神父の悪魔祓いにより少年は我を取り戻したとして当時話題を呼んだそうですが、現在の見解では強迫神経症や統合失調症が原因だったと言われております。

科学はロマンを壊しますなぁ。

 

 

 

さっくりあらすじ

イラク北部の遺跡を発掘調査していたメリン神父は悪魔・パズスの像を発見し、過去に闘ったことのある悪魔の像を前に、再びやってくるであろう因縁を予感し、アメリカへの帰路に着く。

人気女優のクリス・マクニールは映画撮影のためワシントン・ジョージタウンにある一軒家に住んでいた。

女手ひとつで愛娘・リーガンを育てていたが、奇妙な物音がしたり、やや情緒不安定な娘の様子が日に日におかしくなり、遂には別人のような顔つきになり、乱暴で卑猥な言動を繰り返すようになる。

あらゆる検査を試みてみるも異常は見当たらず、映画監督のバーグがクリス宅を訪ねた直後に不審死したことでキンダーマン警部が捜査に当たることになった。

そして悪魔的な魔術や儀式が行われたのではと推察したキンダーマン警部に対し異常な行動を取り罵詈雑言を浴びせるリーガン。

ようやく”悪魔に憑りつかれたと思い込む夢遊病の一種”だと診断する医者が現れ、近所の教会にいるカラス神父に悪魔祓いを依頼するのだが、、、

 

 

 

あどけなさの残る少女・リーガン

 

憑りつかれてこんなことに

 

メリン神父とカラス神父
悪魔祓いを行う

 

 

 

 

巧妙な心理描写

神父と悪霊の闘いを描く作品のようで、メインとなるのは人間の心の闇、それぞれに問題を抱えた人間達のドラマです。

基本的に宗教色、並びにオカルト色の強めな背景があり、ある程度の素養が求められる本作ですが、古典的な”悪魔”の存在と現実的な”人間”の対比を描いた作品として、やはり他のホラー映画とは一線を画す内容かなと思います。

 

まず特筆すべきはやはり美術。

イラクの発掘現場の不気味さ、クリスの家での揺れ動くベッド、悪魔に憑りつかれ激変したリーガンの顔、そして回転する首など文字通りの演出でありながらも、とにかく怖い。

スパイダーウォークばかりが取り沙汰される本作ですが、むしろそこは可愛いものです。

この画面にへばりつくような独特の恐怖感は本当に素晴らしく、CG映像に慣れ親しんだ現在とは異なるベクトルでの迫力を感じます。

感覚的に言えばスプラッターな怖さではなく、薄気味悪いジャパニーズ・ホラーに近いかな。

 

そして本作最大の”深み”として、”科学”と”宗教”の対比を描いた点にあります。

憑りつかれた少女のいかなる症状も医学的には問題が無く、なおかつ意味不明な症状、つまり解決できない問題を”悪魔”のせいにするということ。

 

実際にリーガンの症状を診るにあたり、精神医学を学んだカラス神父もまた神学と医学の間で頭を悩ますことになり、最初はあくまで精神科医としてリーガンに触れています。

明らかに異常な状態にも関わらず何もできない医者達、反対に聖水と偽った水道水でもがき苦しむ悪魔、この矛盾した展開が物語に奥行きを持たせるわけで。

実際に”悪魔”に憑依されたのか、はたまた極限状態で起きた集団パニックなのか、7:3くらいで悪魔寄りですが決して断定できず、考察の余地が残るあたりがミソですな。

 

 

監督を務めたウィリアム・フリードキンですが、撮影時に持参したショットガンで空砲を撃ったり、役者を床に叩きつけたり、顔を平手打ちしたりと、誰が悪魔なのか分からないほど常軌を逸した方だったそうです。

そのおかげとは言いづらいところではありますが、どの俳優も非常に鬼気迫る素晴らしい演技を見せてくれます。

余談ですが、やけにマッチョなカラス神父をスタローンだと思ったのは筆者だけではないでしょう。

 

 




 

まとめ

非常に想像力と集中力を要する高尚な作品だと思います。

ピンと張り詰めた空気の中で淡々と進む物語は一瞬も見逃せない重たい空気が漂い、オカルトなのか現実的なのか、その狭間を行く脚本は深い感銘をもたらします。

 

都会に住む人間の心の闇、そこにつけこむ悪魔、そして抗う人間。

濃いめのサスペンス・スリラーとして、70年代にこれほどの映画が作れること自体が驚きです。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。



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