ゴースト・イン・ザ・シェル


(原題:Ghost in the Shell)
2017年/アメリカ
上映時間:107分
監督:ルパート・サンダース
キャスト:スカーレット・ヨハンソン/ピルー・アスベック/ビートたけし/ジュリエット・ビノシュ/マイケル・カルメン・ピット/チン・ハン/他

 




 

士郎正宗の代表作「攻殻機動隊」を原作としたSF作品。

原作は非常に現実的な未来を描きながら、人や機械のアイデンティティという概念、そして「魂はどこにあるのか?」という疑問を哲学の領域にまで昇華させた名作です。

筆者は観ていないですがアニメ版も非常に高く評価されており、近未来SFアニメの金字塔とも評されております。

 

そもそも映像化するにあたっては演出よりも脚本の方が難しい印象でしたし、原作が訴える思想をハリウッドがどこまで表現できているのかに興味がありました。

本作を観る際にはぜひとも原作を読んで欲しいものですし、かなり多めの注釈も読破しなければ作品としての意味すら理解することは難しいかもしれません。

 

 

さっくりあらすじ

脳にマイクロマシンを埋め込む”電脳技術”が発達し、ネットに直接アクセスできるようになり、また体の義体化(サイボーグ化)が一般的なものとなった未来。

ロボット・テクノロジーの最先端を行くハンカ・ロボティクス社は次世代サイボーグ技術を極秘に研究し、その被験者としてテロ事件の生存者ミラ・キリアンが選ばれた。

1年後、サイバー犯罪やテロ対策を任務とする公安9課のリーダーとなったキリアンは脳以外の全てを義体化し、超人的な戦闘能力と判断力を有している。

とあるテロリストの捜査をしていた9課はハンカ・ロボティクスの会合中に接待役の芸者ロボットが暴走し、また何者かが襲撃に入ったことを確認し現場へと突入。

襲撃者を制圧し、芸者ロボットを破壊したキリアンだったが、破壊された芸者ロボットは「ハンカと組めば必ず破滅する」と言い残し機能を停止した。

それ以降は幻覚を見るようになり、全身の義体化を施す以前の記憶を持たないキリアンは自身の過去に疑問を抱き始めるのだが、、、

 

 

 

 

公安9課のリーダー・キリアン少佐
脳以外の全てが機械の体

 

その相棒・バトー
目を義体化する

 

接待をプログラムされた芸者ロボット
個人的に一番アガった瞬間

 

 

 

 

表面的

原作漫画は非常に複雑で練りこまれた世界観があり、それを理解するだけで極めて難しいような敷居の高さを誇ります。

よって設定的な部分を簡易化し、2時間の枠で表現しようとするとなると、どう転んでも表面をなぞるだけに終わってしまうわけですね。

本作で表現された演出や脚本が悪いとは言いませんが、やはり1本の映画で表現するには無理のある内容だったなと言うのが率直な感想です。

 

原作で訴えられる人間と機械の境界線や、それぞれの自我や魂の概念などを通した哲学性が無く、単なるSFアクションに終始してしまったのが最も残念なところ。

映像的には良くできていますし、近未来サイバーパンクな雰囲気も全く問題ありませんが、安易な脚本なせいでB級アクション感が出てしまっているのが問題点と言えるでしょう。

 

義体や電脳という未来の技術が持つ可能性、それに伴う危険性など、想像力豊かな考え方が活きてないんですね。

ただ主人公の出自をオリジナル要素として掘り下げてあるだけで、魂や自己の存在に対する問いかけは無く、流れとしてはむしろ「ロボコップ」の方が近いような。

というか、そもそも機械(シェル)に魂(ゴースト)は宿るのかという一貫したテーマをガン無視してるし、設定だけ借りた別物として観た方が正解なのかもしれません。

 

公開当時は主演を務めるスカヨハのムチムチ具合が話題に挙がりましたが、個人的には全く気にならず。

光学迷彩機能を有する白いスーツが膨張色となっているだけで、本人のボディラインはあまり関係ないような気がします。

黒いスーツでも良かったような気もしますが、それだとまんまブラック・ウィドウになってしまうので、苦肉の差別化といったとこなんでしょう。

やたら猫背なところだけ気になりましたけど。

 

むしろ本作で最大の問題は言っちゃ悪いけどビートたけしの起用、並びに改悪なキャラクター性、これに尽きます。

基本的には全ての映画は字幕で観る派ですが、日本語で話す公安9課のボス・荒巻(ビートたけし)の台詞にも字幕を入れてくれと。

 

原作では軍上層部への太いパイプを持ち、優れた政治手腕で9課を率いるボスですが、本作で描かれる荒巻は切れ者というよりかはしょぼくれたおじさんという感じで、どうにもキャラ的な魅力がありません。

何を言っているのか分からないし、最終的に謎のアクションまで披露しちゃうし、登場人物としての立ち位置が何かおかしい気がします。

 

ビートたけしや桃井かおりのキャスティングは日本に対して何か気を使ったのであろうと推察しますが、これだったら外人だけでも良いから完成度を上げて欲しいなと。

原作の雰囲気を引用したCG映像集というか、こういうのが作りたかったのかなぁと、、どうにもコレじゃない感が拭えない印象でした。

 




 

まとめ

原作のテーマに重きを置くか、それとも世界観や映像表現に重きを置くかで評価は分かれそうなところですが、個人的には正直イマイチでした。

そもそも悪い意味でビートたけしが作品で一番インパクトがある時点で映画としては破綻しかけてますし、やはり脚本に難ありな仕上がりだと思います。

 

つまらなくはないんだけど、原作に匹敵する魅力には到底及ばないレベルですし、むしろ元ネタを何も知らない人の方が楽しめるかもしれません。

良ければ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 



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