火消し屋小町


1998年~2004年
逢坂みえこ
ビッグコミックオリジナル(小学館)
全4巻

 




 

世にも珍しい女性消防士にスポットを当てた作品。

全然知りませんでしたがTVドラマにもなったようで、もしかしたら知ってる人も多いのでしょうか?

 

成り行きで消防士になった女性が仕事の意義や楽しさに目覚め、キャリアとプライベートも含めて描いたヒューマン・ドラマ作品であります。

シリアスなお話からコミカルなお話まで、一貫して同じテンションで表現される物語として非常に見応えがあり、全体的に漂うゆるーい空気感は独特の魅力があります。

 

何かと言えば転職だ離職だと騒ぐ昨今ですが、「仕事に向き合う」意味や価値をゆるーく教えてくれる秀作だと思います。

 

 

 

さっくりあらすじ

短大を卒業し、証券会社への就職も決まり「花のOL生活」を満喫するはずだった南夏子だったが、入社を目前にして会社が倒産してしまう。

世は不景気で求人にも恵まれず、不況を乗り越えるために募集締め切ろうとしていた公務員「浪速市職員(消防士団)」の張り紙を見つけ、受験することに。

どうせ受かるわけがないとタカをくくっていたものの結果は合格、消防士としての基礎を学ぶため、浪速市消防学校へと入学することになるのだが、、、

 

 

主人公・南夏子
気合と根性で成長していく

 

 

 

 

”人間臭い”魅力的なキャラクター

逢坂みえこ先生の作品はぶっちゃけ本作しか知りませんが、キャラクターの個性を深く掘り下げることに長けた漫画家なんだなと言う印象。

本作に登場する人物は大抵が消防士なわけですが、同じ仕事でも役割や立ち位置が当然変わり、それに応じて人間臭く魅力的なキャラクター達が物語を彩ります。

 

消防士なので火を消すのが仕事の中心なわけですが、それ以外にも消防署の掃除や洗濯、消火活動のPRに人命救助など、僕らの知らないところで魅力あるキャラクターが活躍するサマは読んでいて非常に興味深いものです。

それ故に消防士としての活動やトリビア的な話が多めではありますが、本作に於ける本当の魅力は総じて人間模様にあると思います。

 

初回から社会の荒波に翻弄され、何となしに受けた公務員試験で採用され、不満や後悔を感じつつも本人なりにひたむきに頑張る姿は胸にジンとくるものがあります。

「火消し屋」としての楽しみに気が付き仕事にのめりこんでいく主人公・南の姿は頼もしくもどこか頼りなく、時にコミカルに、時にシュールに展開する彼女の生き方は何か惹きつける人間的魅力があり、また感動するものです。

 

それに加え、南もさることながら相棒的なヒロイン・梢の存在も然り、更に消防署の上司や同僚、しょーもない南の彼氏まで。

誰も相応に人生に悩み、仕事に悩み、毎日必ずやって来る”日常”に必要とされる存在となっていく。

何か上手くいけば何かで失敗し、何かを得れば何かを失ってしまう。

 

そんな当たり前の事、社会にいれば誰でも感じる一喜一憂、そんな人並みの喜怒哀楽をとても興味深く描いてあるわけです。

それはつまり、突き詰めれば”社会に於ける自分の仕事の価値”や”人間関係に於ける自分自身の価値”を思い出させてくれるような優しさに溢れた作品だと言えるでしょう。

 




 

まとめ

全4巻と少な目でスッキリサッパリ読み切れる良作です。

良くも悪くも能天気で前向きな、それでも人並みに悩んだりもする南のセリフは心を打つ説得力があります。

 

どこかコミカルで読みやすい絵柄も含め、ぜひとも読んでほしい作品です。

ぜひ一度ご拝読くださいませ。

 

 

 



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