イングリッド ネットストーカーの女


(原題:Ingrid Goes West)
2017年/アメリカ
上映時間:98分
監督:マット・スパイサー
キャスト:オーブリー・プラザ/エリザベス・オルセン/ビリー・マグヌッセン/ワイアット・ラッセル/ボム・クレメンティエフ/他

 




 

SNS依存症の女性が、ネットストーカーと化していく様を描いたサスペンス・ドラマ。

2017年のサンダンス映画祭で脚本賞を受賞し、なおかつ最近ハマっているオーブリー・プラザ主演ということで、個人的に楽しみにしていた作品です。

 

誰でもSNSを通じて情報を発信し、自己主張が可能になった現代。

今や社会に不可欠なツールになった反面、数多くのデメリットも指摘されるようになりました。

最近では相手の素性を知らずに顔を合わせた上でのトラブルや、いわゆるバカッター的な飲食店の悪戯などが目につきますね。

 

その一方でインスタグラマーやインフルエンサーのような、華やかで注目を浴びる存在がいるのもまた事実。

誰もが憧れる”虚構の存在”と、憧れるあまりに己を見失った人を描いた本作はなかなかに良く出来た佳作だと思います。

 

 

 

さっくりあらすじ

異常なまでにSNSにのめり込むイングリッドは、仲良しだった友人の結婚式に呼ばれなかったことに腹を立て会場に乱入し、暴行したことで施設に入ることになる。

カウンセリング等の治療を経て退所するも、相変わらずスマホを片時も離すことなくSNSに没頭していた。

カリフォルニアで充実した日々を送っているテイラー・スローンという女性の毎日は実に魅力的で、すっかり彼女のファンになっていた。

イングリッドの暴行事件は町中の噂になっており、イングリッドは奇異な目で見られることに苛立ちを覚える。

そして憧れのテイラーがヴェニス・ビーチに住んでいることを知り、母の遺産を手にカリフォルニアへと向かうのだが、、、

 

 

 

 

友人の披露宴に乱入し暴行
施設へ入れられたイングリッド

 

退所後もSNSが手放せなず
母の遺産でカリフォルニアへ引っ越す

 

ヴェニス・ビーチ在住のテイラー
誰もが憧れるリア充

 

 

 

 

幻想

恐らくは10代~50代くらいまでは誰でも触れるであろうSNS。

実際にガチでのめり込む人は一部だけだと思いたいところですが、本作で描かれるような依存がもたらす異常性はかなりの説得力を感じます。

 

というか余談ですけど、センスが良く憧れの対象になり得るインスタグラマーなんて、実際は極一部の人だけじゃない?

その極めて少ない洒落たインスタグラマーを、大多数を占める田舎者がこぞって追いかけているように見えますが違いますかね?

何故そう思うかというと、筆者自身が超田舎者だから。

SNSが世を席巻する前におっさんになったのは本当に幸せなことで、10代の時にこのツールがあったらのめり込んでいたかもしれませんね。

話しが逸れました、閑話休題。

 

 

物語としては、粘着質な女性がお洒落なインスタグラマーに近づくため、大金と悪知恵を駆使して憧れの世界に飛び込むというもの。

ヴェニス・ビーチ在住な時点で既にお洒落な女性ですが、インスタで更新される情報はどれもこれも洗練されて輝いて見えるわけですな。

素敵な家に住み、芸術家の夫に恵まれ、可愛い犬を飼い、お洒落な仲間に囲まれ、充実した日々を送る。

リア充のキラキラな毎日を垣間見て、自分の淀んだ毎日を考えれば、憧れる気持ちも分からんでもないですよ。

 

そんなイングリッドがあれこれと策を講じ、憧れのテイラーとお近づきになってから物語は動き始めます。

お金と嘘にものを言わせ、親友になった彼女の人生は最高潮になり、まさに夢に描いたような生活を手にするわけです。

手段はどうあれ、お洒落な家に住み、お洒落な友人を持ち、かつて憧れた日々を送る。

実際にイングリッドが存在すれば、彼女に憧れて似たようなことをする人もネズミ算式に増えるかもしれませんね。

 

しかし嘘を重ねた結果として、全てを失ったイングリッドは初めて本質に気づきます。

自分が躍起になって追いかけてきたものが幻・虚構・嘘だったと知った時、ようやく彼女も我に返るわけで。

傍から見れば一瞬で分かるようなことではありますが、やはり憧れの存在には盲目的になってしまうのがSNSというものでしょうか。

「隣の芝生は青く見える」とはよく言ったもんだ。

 

 

イングリッドを演じるオーブリー・プラザが本作でも怪演を発揮、もう本当に素晴らしい。

感情の振れ幅が大きく、鬱屈したイライラを押し隠すような表情の数々は実にリアルなもの。

紙一重なストーキングの数々を成功させ、リア充な生活に触れた際の満面の笑顔は悪い意味で素敵なものであり、心を病んだ人の本質を思い知らされます。

 

対するエリザベス・オルセンもなかなかの存在感。

というより、この人リアルにセレブだしね、前身から溢れ出るセレブ臭は極めて自然で苦笑いしちゃいますね。

スカーレット・ウィッチを皮切りに、最近は数多くの作品に出演するようになりましたが、着実に演技の幅が広がってますね。

これからが益々楽しみですな。

 

全体的にストーカー気質な物語ではあるけれど、サスペンス性やスリラー的な雰囲気は薄めな印象で、どちらかと言えばドラマ風な仕上がりです。

最後にイングリッドがとった行動と、エンディングでイングリッドが思う未来はちょびっと考えさせられるものがあり、メッセージ性を感じますね。

 

 




 

まとめ

狂気的な恐ろしさは感じませんが、リアルな不気味さは感じます。

SNSをやっているかどうかで受け取り方は変わると思いますし、人それぞれ感じ方も大きく変わるであろうユニークな映画です。

サスペンスとしては弱い作品ですが、現代に蔓延るブラックユーモアなドラマだと思えば観て損はないでしょう。

 

SNSにハマっている人、もしくはSNSに疲れている人にオススメです。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 



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