パイレーツ・ロック


(原題:The Boat That Rocked)
2009年/イギリス・ドイツ
上映時間:135分
監督:リチャード・カーティス
キャスト:トム・スターリッジ/ビル・ナイ/フィリップ・シーモア・ホフマン/ニック・フロスト/リス・エヴァンス/クリス・オダウド/他

 




 

毎度お馴染み「映画天国」で視聴。

ラジオ放送が規制されていた1960年代のイギリスを舞台に、法律の及ばない船上から24時間ロックを流す海賊ラジオ局にスポットを当てた作品です。

 

ロックが絶頂を迎えようとしていた当時の世相を背景に、民放ラジオが許可されず、ジャズとクラシックしか流されなかった時代。

一応は実話が元になっているんだそうで、「聴きたい」と「聴かせてあげたい」という、とってもシンプルなニーズから生まれた物語には極めて熱い鼓動が宿っています。

 

 

 

さっくりあらすじ

1960年代、未だイギリスには民放ラジオ局が存在せず、ロックを含むポピュラー・ミュージック放送には制限があった。

ドラッグと喫煙で退学処分を受けた青年・カールは更生の為、母の古い友達であるクエンティンの元で暮らすことになる。

しかしクエンティンが住んでいるのは海上に浮かぶ船の上であり、海賊ラジオ局「ラジオ・ロック」の拠点にもなっていた。

船上で暮らすDJ達は皆こよなくロックを愛し、放送禁止用語を放ったり、船に若い女性たちを招いては楽しい毎日を送っている。

国の風紀を乱す存在として政府に睨まれながらも、カールは先輩達との気ままな暮らしに馴染んでいくのだが、、、

 

 

 

 

海賊ラジオ局で暮らすことになったカール

 

局のプロデューサー・クエンティン

 

どれも味のある俳優ばかり
素晴らしいキャスティングです

 

 

 

 

Rock’n’Roll!!

明確に違法ではないものの、法の支配の及ばない海上で音楽を電波に乗せて送り届けるという行為、これはもうカッコよすぎでしょ。

 

乗組員たちは一様にロックに惚れ込んでおり、開放的な海の上で、陽気に楽しそうな毎日に浸っています。

この生き様こそが”ロック”そのものであり、船上の開放的な雰囲気も相まって非常に魅力的な場所に見えるわけです。

 

古典的でレトロな雰囲気が漂いますが、映画を通して表現されるファッションや小物など、当時の時代感を感じさせつつも非常にファッショナブルで洒落ているものばかり。

それに加え作品を盛り上げるBGMにも拘りが感じられ、そこまでロックの造詣が深くない筆者でも分かるほどにシビれる選曲が楽しめます。

狭い船の上というロケーションの中で、目と耳で楽しめるギミックがこれでもかと詰め込まれているわけです。

 

 

ただ全体を通してちょいとドキュメンタリータッチな雰囲気もあり、船上で暮らす人々のアレコレを中心に描かれていますので、悪く言えば抑揚には欠けるかもしれません。

”ロック”をテーマに雰囲気で楽しむ系の作品とも言えますし、この手の作品に馴れていない人には退屈に感じるかもしれません。

 

しかし本作を語る上で外せないのは音楽でもなく、ファッションや時代背景でもなく、とにかくキャスティングの一言に尽きます。

一応の主人公・カールを演じるトム・スターリッジこそ(子役上がりでキャリアは長いけど)無名の俳優ですが、脇を固める俳優陣が本当に豪華。

 

まずラジオ局のプロデューサー・クエンティンを演じるビル・ナイは芸術映画でもエンタメ映画でも活躍している名俳優で、シリアスな役からコミカルな役まで、数々の作品で活躍する万能型です。

「パイレーツ・オブ・カリビアン」のタコ船長だと言えば誰でも分かるっしょ?

 

2014年に亡くなってしまいましたが、フィリップ・シーモア・ホフマンも文句無しで名俳優。

こちらも心底笑える演技からマジでビビるような迫真の演技まで、あらゆる場所で輝ける名脇役でしたが、本作でもその演技力をいかんなく発揮しております。

 

カムバック!」でお馴染みの、ニック・フロストとクリス・オダウドのコンビも安定感のある流石の演技力。

どちらも自然で笑える演技を持ち味とし、派手過ぎず地味過ぎず、実に良い塩梅での存在感があります。

 

加えて「マイ・ファニー・レディ」のリス・エヴァンス、「マイティ・ソー」では監督も務めた俳優ケネス・ブラナー、ハリポタの占い学の先生エマ・トンプソン、そして「プリンス・オブ・ペルシャ」のジェマ・アータートンなどなど。

どの役者もコメディアンだったり、脚本家だったり、映画監督だったりと、マルチに活躍している印象が強めであり、またどれも素晴らしいキャリアを築いているのも特徴的だと言えます。

 

この味のあるキャスティングは本当に素晴らしいですね。

良い意味で個性の無い主人公、個性が強すぎる登場人物たちと、うまい具合に噛み合ってバランスが取れており、全員が主人公とも言えるような密度のドラマは非常に見応えがあります。

 

 




 

まとめ

聴きたいものを求め、聴かせたいものを提供する。

倫理的な問題さえ無ければこれほどに幸せに満ちた環境はそうは無いでしょう。

 

そういった夢や希望をロックに乗せた「音楽映画」としては傑作と言えるかもしれません。

PVもどきやMVもどきのオシャレぶったエセ作品とは一線を画す”本物”があります。

 

やや玄人向けなテイストなので万人にオススメはできませんが、ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 



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