ポカホンタス


(原題:Pocahontas)
1995年/アメリカ
上映時間:81分
監督:マイク・ガブリエル/エリック・ゴールドバーグ
キャスト:アイリーン・ベダード/メル・ギブソン/デヴィッド・オグデン・スティアーズ/リンダ・ハント/ラッセル・ミーンズ/ゴードン・トゥートゥーシス/他

 




 

ディズニー映画史上で初めて実在した人物をテーマにした中編アニメ作品。

ディズニー・ルネサンス期(1989~1999年頃までの作品)に公開された本作ですが、正確には実在した人物の歴史に加え様々な伝承や逸話を付け加えた物語であり、異なる人種による争いや恋愛を描いた変わり種な作品でもあります。

 

インディアン(ネイティブ・アメリカン)という迫害された民族をテーマに掲げただけに、物語の背景や表現方法などに批判が集中し、特にインディアン側からはかなり酷評されたようです。

意図したかどうか別にして、結果的に”白人至上主義”や”差別的表現”という価値観がやり玉に挙げられ、公開当時は抗議運動やデモにまで発展したんだとか。

興行的にはそこそこに成功したようですが、日本では「美女と野獣」とか「アラジン」と比べてお世辞にもヒットしたとは言い難く、「聞いたことあるけどよく知らんディズニー映画」の代表格とも呼べるかもしれません。

 

 

さっくりあらすじ

17世紀初頭、イギリスのジョン・ラトクリフ提督は英雄ジョン・スミスと船員を従え、黄金を発掘するためにアメリカ大陸に向け出港した。

 

ポウハタン族の娘・ポカホンタスは好奇心豊かで大自然の中を駆け回り、森と共に暮らしていた。

村の英雄であるココアムから求婚され、首長でもある父からも婚姻を勧められるが、何事にも縛られず自由に生きたいポカホンタスは深く悩んでしまう。

そんな折、イギリス人の船が長い航海を終えアメリカ大陸へと到着、すぐさま金を求めて大地を掘り起こし、木々を切り倒していく。

未知の大陸を開拓するという冒険心に胸を躍らせるスミスは大陸内部へと進み、また未知の異人種に興味を惹かれるポカホンタスはスミスの後を追うのだが、、、

 

 

 

 

インディアンの娘・ポカホンタス
陽気で多感なお転婆娘

 

イギリス人ジョン・スミスと出会う

 

全体的にアーティスティックな映像が印象的

 

 

 

 

ちょいと無理がある

ネイティブ・アメリカンの女性・ポカホンタスは1595年頃から1617年に実在していたとされています。

ちなみに”ポカホンタス”はあだ名なんだそうで、名付けられた英名はレベッカ・ロルフさんだそうですよ。

 

先に触れておくと当時のネイティブ・アメリカンは”文字”の概念が無かったそうで、つまり彼女の物語も口頭で伝えられるものが多く、不明瞭な部分も少なくないそうです。

本作の土台としては当時アメリカ入植の責任者だったジョン・スミス氏が語ったものが軸になっており、また彼が語るポカホンタスとの逸話は大いに信憑性に欠けるんだとか。

端的に言えば酔っ払いの水兵さんの戯言(武勇伝?)に尾ひれがついたというのがオチかなとも思いますが、それだけに実在したインディアンの娘が何を思ったのかの真実に興味が湧きますね。

 

正確な情報はWikiさんにまかせるとして、掻い摘んで言えば残念ながら現実は映画と異なり、武力を以て植民地化を進めたイギリス側と、虐げられぬように抵抗したインディアンの構図が見え隠れします。

とはいえ、白人とインディアンの間で和平の象徴となり、最終的に神格化されたポカホンタスという存在は決して否定できるものでもないでしょう。

 

 

前置きが長くなりましたが、アニメーション作品としてはとにかく高い芸術性が印象に残ります。

この時代のアニメーションは現代ではやや古臭くも感じますが、それを補って余りある雰囲気がありますね。

何というか、絵に味があるというか、、ポカホンタスも美人とは言い難いですし、スミスも決してイケメンとは言えない感じではありますが、それでも劇中のヒロイン・ヒーローという役割がよく伝わる不思議な魅力があります。

 

ところどころに愛くるしい動物たちの絡みはあるものの、全体を通してみれば結構大人向けな印象です。

メインテーマは異人種同士の邂逅に始まり、争い、憂い、そして許されざる恋など、ある意味で運命に翻弄される人々が描かれているとも言えます。

人種間の争いというセンシティブなテーマもありますし、アニメならではのデフォルトもあるにしても、私利私欲で自然をガンガン破壊していく白人の姿は他のディズニー作品には無いインパクトがありますね。

 

ついでに言えば明確なハッピーエンドで終わらないあたりも珍しいと言えるかもしれません。

それなりな余韻もあって好きなエンディングではありますが。

 




 

まとめ

良くも悪くもディズニー風味が少なめな異色の作品です。

 

映画を通しての独特の世界観や雰囲気は非常に素晴らしく、映像美も含めて仕上がりとしては決して悪くはありません。

ただ、いかんせん土台となる脚本に無理があり、完全なフィクションならともかく史実をベースにしているとなると複雑な気持ちにさせられます。

嘘ではないんだろうけど、これが真実とは到底思えず、のめり込むだけのリアリティに欠けるのが残念なところ。

 

しかし、それを差し引いても観て損は無い映画だとは思います。

良ければ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 



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