レインマン


(原題:Rain Man)
1988年/アメリカ
上映時間:134分
監督:バリー・レヴィンソン
キャスト:ダスティン・ホフマン/トム・クルーズ/ヴァレリア・ゴリノ/ジェリー・モーレン/ジャック・マードック/他

 




 

ちょいと古いですがダスティン・ホフマンとトム・クルーズが主演を務めた名作ヒューマン・ドラマ。

自分勝手で利己的な青年が重度の自閉症を患う兄と出会ったことで成長していくサマを描いた作品ですが、ダスティン・ホフマンという俳優の何たるやを知るための映画と言っても過言ではありません。

製作陣との確執も辞さない超完璧主義者として有名なダスティン・ホフマンですが、本作や「クレイマー・クレイマー」などの数々の受賞歴を見れば納得せざるを得ない稀有な実力派俳優です。

 

 

 

さっくりあらすじ

中古車ディーラーを営むチャーリー・バビットは恋人・スザンナと旅行へ向かう道中に嫌っていた父の訃報を聞き、葬儀に出席するためシンシナティへと向かった。

いざ葬儀の席に着き、父の遺言状を開封すると自分への遺産は車1台と薔薇の木だけであり、その他の全ての財産はある人物へと託されることを知り、納得いかないチャーリーは財産を管理している医師・ウォルターを問い詰める。

しかしウォルターは受取人の詳細を明らかにせず、意気消沈して帰ろうとすると謎の男性が車に乗り込んでいた。

その男性こそが父の遺産の受取人であり、歳の離れたチャーリーの兄・レイモンドなのだが、レイモンドは重度の自閉症で長く入院していたためチャーリーは兄の存在すら知らなかった。

そこでチャーリーは兄の後見人となることで遺産を横取りしようと企むのだが、、、

 

 

 

 

中古車ディーラーのチャーリー
憎んでいた父が死ぬ

 

突然現れた兄・レイモンド
遺産の横取りを狙うチャーリー

 

レイモンドは重度の自閉症
しかし特殊な能力が、、

 

 

 

 

文句無し

自己中心的に遺産の横取りを考えていた弟が自閉症の兄と徐々に心を通わせ、それと同時に幼い頃の思い出や、嫌っていた父からの愛情に気づき、人間的に成長していくサマが極めて丁寧に描かれます。

 

特筆すべきはやはりダスティン・ホフマンの演技で、表情を作らずに喜怒哀楽を表現するという神業を披露してくれます。

文字にすると何てことないんだけど、これは本当にすごいことですよ。

基本的に重苦しい物語のはずなのにも関わらず、どこか笑えて感動させられるのは彼の演技の賜物であり、これほどに印象深い表現を観たことはそう多くはありません。

 

それに対するトム・クルーズもまた素敵。

いまや文句無しで超一流俳優の地位を得た彼ですが、個人的にはこの時の演技が最も素晴らしいのではと思っています。

兄の感情の起伏にイライラしながらも、最終的には誰よりも深く兄を理解し、その存在を穏やかに受け入れていくサマはメチャクチャ感動します。

 

 

筆者の近くにはサヴァン症候群の羅漢者がいないので聞きかじりの域は出ませんが、言語でのコミュニケーションを強要するチャーリーと、感情でしかコミュニケーションできないレイモンドのやりとりは正直にストレスフルなものです。

 

遺産相続の下心を看破され、あれやこれやと策を練るチャーリー。

それを知ってか知らずか、結果的に極端な自己防衛で弟の思惑を打ち砕いていくレイモンド。

 

まだ自閉症に対する理解や研究が進んでいなかった当時は言わずもがな、現代でもレイモンドの癇癪を見て心穏やかでいられる人は多くはないでしょう。

 

 

しかしこのストレスフルな旅こそが感動的な名作としての背景になります。

この構成は本当に見事なもので、何でも記憶するレイモンドの呟きによって紐解かれていく過去の話がチャーリーの心に波紋を広げ、何故に父親が兄弟を分け、レイモンドの存在を伏せたのかという確信にも触れていきます。

 

そして終盤、家族として、また兄弟としての絆を思い出したチャーリーとレイモンドですが、一般的には”常識”と定義されるであろう司法の判断が悲しい現実として立ちはだかるわけで。

それと同時に分かりあえたはずの二人、特にレイモンドが本質的に物事を理解できないという事実が露呈してしまうわけで。

家族であれ兄弟であれ、はたまた親友であれ、弟・チャーリーが兄・レイモンドの難解な心の奥底で求めた”理解者”という存在になれた時、チャーリーはレイモンドの人生において何が最善の選択なのかを理解し、笑顔で見送るわけですな。

 

一週間に及ぶ旅を終え、結局は不愛想でTVの時間ばかりを気にするレイモンドに対し、自分が訪ねていけば良いだけだと割り切ったチャーリーの、悲哀を感じさせる清々しい笑顔は本当に印象的です。

予定調和のようなハッピーエンドではなく、あくまで現実的な既定路線の上で成り立った物語として、感傷的なエンディングを選ばなかった判断は素晴らしいの一言です。

このエンディングあればこその、極めて優れた完成度だと言えるでしょう。

 




まとめ

誰がどう見ても良い映画です。

人それぞれ好みがあるのは重々承知の上で言いますが、最高峰の映画のひとつだと思いますし、これで感動しない人はいないと信じたいところ。

グッと心を掴んで離さない秀逸な脚本と演出、それを彩るダスティン・ホフマンとトム・クルーズという名俳優、まさに名作と呼ぶに相応しい素晴らしい映画です。

 

オススメです。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。



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