シュリ


(英題:SHURI)
1999年/韓国
上映時間:124分
監督/脚本:カン・ジェギュ
キャスト:ハン・ソッキュ/キム・ユンジン/チェ・ミンシク/ソン・ガンホ/他

 




 

朝鮮半島における南北問題をテーマに”愛情”と”憂国”の間で揺れる繊細な心理描写、それに派手なアクションシーンを足した秀作です。

限りなく本物に近いモデルガン(ステージガン)を採用し、役者には実弾射撃訓練を課すなど、視覚的な迫力に非常に力を入れ、韓国映画としては極めて挑戦的な作品でもあります。

とある女性を中心にしたスパイものではありますが、国家間に鎮座する高い壁、それに伴う男女の悲哀を描いた点で独自の魅力を放ちます。

ちなみに題名の「シュリ」とは淡水でも海水でも泳げる魚の名前(ヤガタムギツク:コイ科の淡水魚)なんだそうで、韓国と北朝鮮を行き来できるようにという南北問題を端的に表しております。

さっくりあらすじ

秘密情報機関に勤めるユ・ジュンウォンとイ・ジャンギルは相次ぐ要人暗殺事件の捜査中、情報提供者の武器商人が射殺されたことを受け、一連の事件の背後に北朝鮮特殊第8軍団が関与していることを知る。

暗殺犯の行方の追跡の中、特殊第8軍団が国防科学技術研究所が開発した液体爆弾「CTX」の奪取を計画していることが判明し、「CTX」の移送現場に急行するも既に強奪されてしまっていた。

奪取犯が過去のテロ鎮圧作戦の際にすれ違ったパク・ムヨンだと気付いたジュンウォンだが特殊第8軍団の工作員たちの狙いが掴めない。

追跡を続けるものの常にあと一歩で容疑者を逃がしてしまい、ジュンウォンとジャンギルは捜査情報が洩れていることを危惧するのだが、、、

 

 

 

ジュンウォンと婚約者のイ・ミョンヒョン

捜査の過程で知る本当の敵

そして工作員イ・バンヒとして対峙することに

 

 

拭えない痛み

最近の朝鮮半島の動向を見ていると尚更にリアルに感じてしまう本作ですが、とりあえず本作を観るにあたって近いか、遠いか、どちらかのスタンスで観ることをオススメします。

”近い”とは主人公のユ・ジュンウォンの視点で物語を観ること、彼に感情移入できるかどうかで物語の深さが段違いで変わります。

”遠い”とは傍観者のつもりで淡々と見続けること、歴史上の一つの事件に数えられそうな物語を観ることで南北問題の理解に繋がることもあるでしょう。

 

一時期の韓流ブームの反動も大きいと思われますが、やれミサイルだ、やれ慰安婦だで嫌韓ムード漂う昨今ですが、映画には罪はありません。

面白いものは面白い、感動するものは感動すると素直に認めることが互いの文化を尊重するということでしょう。

 

そしていきなりですがこの映画、まず名前が覚えづらいです(笑)

誰が誰なんだか把握している間に物語が次々と展開していくので、初見ではやや難解に感じるかもしれません。

とはいえストーリー自体は割と単純なものである上、ある程度の予想もつく内容なので困惑することはないでしょう。

 

映画の特徴としては巧みな演技を誇る極めて優秀なキャスティング。

名前は覚えづらいものの登場人物はどれも存在感があり、また印象的な人物による血生臭く容赦ない演出は一見の価値ありです。

個人的にはヒロインはともかく、主人公もバディもイケメンでないところにリアルさを感じます。

 

互いに隠し事がある中で、幸せそうな生活の中にふと現れる影、ちょっとした表情の曇らせ方が上手いですね。

心の奥底に眠る葛藤や苦悩、そういった負の表情を実にさりげなく演技しており、これほどに繊細な演技力はなかなかお目にかかれません。

 

愛し合う二人が闘わざるを得ないという展開は少なからずあるものですが、生々しい演出もあり、より深みを感じる切ない流れ。

最後の半端ない切なさと共に故人を忍ぶような伏線も張り巡らされており、義務と権利で葛藤した末の悲しさは非常につらいものがあります。

同じ民族だけれども不変の格差が存在し、時として憎しみの対象に、時として敵になるという苦しさはよく伝わってきますね。

 

やや粗さが目立つものの、気合十分で臨んだアクションシーンも迫力満点。

南北問題の事情が事情だけに、詳しくなくても説得力を感じる脚本の根幹もまた素晴らしいものですな。

ただ物語として、スパイに情報漏洩→犯人逃げるの構図の繰り返しになるのだけは少々残念、ここだけもうひと捻り欲しかったかなぁ。




 

まとめ

「所詮映画だしね」という気持ちと「北朝鮮ならやりかねない」という気持ちが交錯する複雑な映画です。

細かいツッコミどころも無いわけではないですが、それを補って余りある演技力や迫力あるアクションは十分に魅力的なものだと思います。

愛憎入り乱れ、人の感情を揺さぶる秀作です。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。



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