スパイダーマン:ホームカミング


(原題:Spider-Man:Homecoming)
2017年/アメリカ
上映時間:133分
監督:ジョン・ワッツ
キャスト:トム・ホランド/マイケル・キートン/ジョン・ファヴロー/マリサ・トメイ/ロバート・ダウニー・Jr/ゼンデイヤ/他

 




 

 

待ちに待ったマーベル・コミックのヒーロー・スパイダーマンの活躍を描いた大作で、前作では色々とやらかして頓挫したプロジェクトに変わり、新たに始まったシリーズの一作目。

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の一部としては通算16作目に当たります。

ちなみに副題のホームカミングの意味は「帰宅・帰郷」を指しますが、本作で描かれるのは同窓会のようなパーティー風。

ただ、このパーティーはどちらかと言えばプロム的な要素の方が強めに見えますし、もしかしたらスパイディがクイーンズに、マーベルに戻ってきたよ的な意味もあるのかもしれません。

 

お盆休みもあってか、公開3日目のレイトショーで客の入りは4割くらい。

ただね、そんなことよりバルト9よ、劇場内が暑いんだよ(怒)

何でか空調の効きが弱めで湿気っぽいし、じんわり汗かきながら観たよ(怒)ナメてんのかオラオラ。

 

 

 

さっくりあらすじ

アヴェンジャーズとチタウリ軍の壮絶な戦いの後で、半壊したスターク・タワーをはじめとした解体工事を請け負っていたエイドリアン・トゥームスだったが政府が組織した復興班により解体の職を奪われてしまう。

すでに大金を投資していたトゥームスは当然のように経営の行き詰まりを予想し、政府に提出していないチタウリ軍兵器を再利用し、新たな兵器としての売買を思いつく。

それから8年、シビル・ウォーの内乱から2か月が経ち、アイアンマンことトニー・スタークに見出された少年ピーター・パーカーはトニー直々に特製のスーツを渡された。

アヴェンジャーズに憧れていたピーターは嬉々として犯罪の防止活動に勤める一方で、トニーに命じられお目付け役となったハッピーからは相手にされず、わだかまりが募っていく。

そんなある日、ピーターはATM強盗と遭遇し交戦、しかし強盗は未知のハイテク兵器で抵抗するのだが、、、

 

 

 

ピーターと親友のネッド
歳相応の少年といった感じ

 

本作のヴィラン・バルチャー
演じるは元祖・蝙蝠男

 

お馴染み”ハッピー”ことジョン・ファブロー

 

 

 

スパイディの新たな挑戦

トビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールドに続き、3代目となるトム・ホランドですが、恐らくは歴代一位のハマり役であり、無邪気で純粋な正義感を目一杯披露してくれます。

youtubeなんかで彼のトレーニング動画を視聴することができますが、小柄ながらも卓越した運動神経にしなやかな筋肉、そしてかわいらしく甘いマスクと、見れば見るほどに魅力が深まる俳優ですな。

 

そんな彼が演じる新たなピーター・パーカーはとにかく元気。

大きなホテルに泊まり無邪気にはしゃぎ、アベンジャーズの面々を見て無邪気にはしゃぎ、ヒーローとして活躍できる機会に無邪気にはしゃぎます。

それ故に「得た能力の使い方」や「悪に染まった者の対処」といった重大さを本当の意味で理解できておらず、”ヒーロー”と”トラブルシューター”の差を痛感させられるあたりが本作のキモでしょうか。

シリーズの定番とも言えるベン叔父さんの「大いなる力には大いなる責任が伴う」という堅苦しさに取って代わる表現として、大人の事情と責任を理解できない一人の若者としての面が強いように感じます。

 

 

そしてピーターの物語を彩る、個性豊かな脇役たちも素敵。

明るく朗らかで、何よりも心からピーターを心配してくれる、超絶若くて美人なメイ叔母さん。

ピーターの正体を知り、自分に闘う力は無くとも押しつけがましくバディを自称する親友・ネッド。

そして影ながらもピーターを見守り、導いていこうとするトニー・スターク。

 

本作でのスパイダーマンは二面性のある生活に疲れ、力を持つ者ならではの孤独に悩むような描写は皆無であり、全体的に明るく楽しい雰囲気に終始しております。

これはシリーズ作品の中では異例な脚本であり、大人に憧れる少年が我に帰るような、ヒーローに憧れるピーター・パーカーが、自分が何者なのかを見つける話だとも言えるわけですな。

そういった意味では過去作と一線を画す独特の作品だとも言えますね。

 

 

そんな調子で、どこかお気楽ムードが漂うヒーロー側とは対照的に、今回のヴィラン(敵)は重く、深いメッセージ性が見え隠れします。

闇に堕ちた武器商人・トゥームスを演じるは往年の名俳優マイケル・キートン、初代バットマンを演じた彼がスパイダーマンで敵に回るのも個人的には感慨深いところ。

トニー・スタークとアメリカ政府により半ば強引に仕事を奪われ、投資した費用の回収の目途も立たず、家族や従業員を含め路頭に迷うところから物語が始まります。

 

チタウリ軍の兵器の残骸を盗み、改造し、兵器に仕立てた上で売買を行っているわけですが、彼自身には大きな野望はなく、あくまでついてきてくれた従業員と家族のために悪事を重ねているわけです。

非合法な兵器売買で大金を得ているのが問題なわけですが、彼が語る「トニー・スタークは武器で儲けてタワーを建てた」の一言はなかなかに重みがありますねぇ。。

合法・非合法問わずに”武器”がお金になるのは間違いないわけで、過去の事とはいえトニー・スタークは良くてそれ以外はダメだという理屈は不自然にも感じますな。

 

結局はそのボーダーラインを引くのは「司法」になるんでしょうが、「強きは正しく弱きは愚行」という思想はいかにもアメリカ的な考えだという皮肉にも聞こえます。

そんな「罪」と「家族」に板挟みになりながらも、迷うことなく冷静に悪に染まっていくトゥームスを演じるマイケル・キートンの演技は本当に素晴らしい。

比較的ゆるーい作品を引き締める敵として、一番の存在感を発揮していますね。

車でピーターを送るシーンとかマジで怖いしね。

 

 

あとはスパイディが過去作に比べて弱いかもしれませんね。

これは肉体的に弱いってわけじゃなくて、今まで描かれなかった彼の弱点や心の弱さを極めてコミカルに描いたってことで、スパイダーウェブが使えない広場のシーンだったり、スタイリッシュに飛び回れずに色々と壊すシーンだったり。

あくまで”超人的”なだけで無限のパワーを持っているわけでもなく、そういった意味で超人的な肉体で等身大に頑張る姿は微笑ましさすら感じさせます。

ついでにスパイダー・スーツに内蔵されたAIのカレンも素敵、ピーターとのチグハグなやりとりは普通に面白かったです。

 

 




 

 

まとめ

冒頭で述べた通り「スパイダーマン」を単体でフォーカスした作品ではなく、あくまで「MCU」の一環として作られた映画なんだと思います。

表情豊かで楽しいピーター・パーカーと、色々と背負いながら戦うトゥームスの対比はまさしくマーベルのものであり、若干の物足りなさは感じつつも非常に高い完成度を誇ります。

リブート作品ではありますが「何か新しいことに挑戦しよう」という気概が良い方向に現れた秀作です。

 

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。



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