ヴィンセントが教えてくれたこと

(原題:St.Vincent)
2014年/アメリカ
上映時間:102分
監督/脚本:セオドア・メルフィ
キャスト:ビル・マーレイ/メリッサ・マッカーシー/ジェイデン・リーベラー/ナオミ・ワッツ/クリス・オダウド/他

 




 

ゴーストバスターズ」でお馴染み、名俳優ビル・マーレイ主演のコメディ・ドラマ作品。

アメリカで極々わずかの少数上映だったはずが、噂が噂を呼び瞬く間に全米で公開となり、最終的にゴールデン・グローブ賞にまでノミネートされた素晴らしい作品です。

 

「ゴーストバスターズ」繋がりなのか、エミー賞に輝いたコメディアン女優メリッサ・マッカーシー、派手さはないけれど堅実にキャリアを重ねているナオミ・ワッツ、個人的に好きな俳優クリス・オダウドなどなど。

ミニシネマ風な作品に対して味のあるキャスティングです。

 

 

さっくりあらすじ

アルコール中毒でギャンブル中毒で偏屈な老人・ヴィンセントは自宅を担保に銀行からの借り入れで日々を暮らしている。

しかし融資の限度額を超えてしまったため、生活費の工面ができなくなってしまった。

売春婦のダカに支払うお金や、金貸しのズッコに支払うお金が無くなってしまったヴィンセントだが、そんな彼の隣にシングルマザーのマギーと息子のオリヴァーが引っ越してきた。

聖パトリック小学校へと転向したオリヴァーだが、さっそくイジメっ子たちに目をつけられ荷物を盗まれてしまい、体操着のまま下校するも家には入れず、帰宅してきたヴィンセントに頼ろうとする。

オリヴァーに頼まれ嫌々マギーに電話をするも、医療従事者で多忙なマギーは仕事が終わるまで面倒を見て欲しいと言い始め、時給12ドルで引き受けることになるのだが、、、

 

 

 

自堕落で偏屈な老人・ヴィンセント
彼は人を嫌い、人は彼を嫌う

 

隣に越してきたマギーの息子・オリヴァー
ザ・もやしっ子

 

妊娠中の売春婦・ダカ
口は悪いが、わりと常識人

 

 

 

 

泣かない強さ

ストーリー的には特筆すべきものは無く既視感があるというか、どこかで観たことありそうなお話ではあります。

口が悪く、借金をギャンブルに回し、年がら年中お酒にふけるヴィンセントの生き方は刹那的で、見方によってはただのアホなおじさんといったところ。

 

そんなヴィンセントに、なし崩し的に面倒を見てもらうことになったオリヴァーですが、彼も彼で変わっていて、小柄なもやしっ子に似つかわしくない達観した独自の人生観を持っています。

仕方なく面倒を見てやってると言うヴィンセント。

それを理解した上で互いに打ち解けようと試みるオリヴァー。

どっちが大人か分からないような精神面ですが、この対比はなかなか新鮮で、似たようなバディ・ムービーとは一味違うアクセントになっていると思います。

 

 

ヴィンセントはぶっきらぼうで嫌味なジジイですが、こと自分の大事な人に対しては誠実で優しい男です。

素直ではないので分かりづらいところですが、彼なりの真心は随所に散りばめられており、またそれがユーモアたっぷりで人間味に溢れているため、時として魅力的なおっさんにも見えます。

ふてぶてしくも茶目っ気溢れるビル・マーレイの演技はさすがの一言でした、本当に素晴らしい。

 

そんなヴィンセントに、悪い方向に導かれているオリヴァー君もなかなかキャラが立っていて良かったかな。

ひ弱い少年ですがどこか悟っているというか、子供だからと気を使わないヴィンセントのペースに合わせ、すでに独自の哲学を持ち合わせているかのような落ち着きっぷり。

年齢以上に大人になってしまっているせいか、ヴィンセントが人に見せない部分や、背負っているものなどに気づいているフシがあります。

その上で、逆にヴィンセント自身の人となりを教えてあげようとする姿はなかなか感動しましたよ。

 

そして忘れちゃいけないのがロシア人の腹ボテ売春婦・ダカを演じるナオミ・ワッツの存在感。

典型的なロシア訛りで口汚く相手を罵るわりに常識人であり、生まれてくる子供のためにヴィンセントを巻き込み、あの手この手で稼ごうとする姿は非常にコミカルで面白いものでした。

そのくせ意外と家庭的で病み上がりのヴィンセントの家に(勝手に)住み始め、パンチラ付きの家政婦としてお野菜中心の健康的な生活を強要するシーンはとっても素敵。

むしろ独身であれば筆者の家にも来てほしいくらい。

 

 

本作の良い所は変なところで現実的というか、頑張っても報われない時の人間の表情を描くのに長けています。

ヴィンセントの場合は必ずしも真面目な人間ではないですが、自分の大事な物事のために真摯に向き合い、不可能を可能にするため、彼なりに頭を悩ませます。

それでも全く良い方向へは向かわない、報われない悲しい結末が待っているわけですが。

 

そういった時に普通はどうするんでしょう?

酒を飲んで荒れるのか?

友達や家族に愚痴るのか?

買い物や食事で発散するのか?

 

ヴィンセントは一人で我慢します、普通なら悲しくて口からこぼれそうな嗚咽も我慢します。

つらいことや重たいものを独りぼっちで背負う姿はしょうもないおっさんのそれではなく、紛れもない”漢”の姿であり、その丸まった背中こそがカッコいいなぁと感じるのです。

そんな人だからこそ、悪態をつかれながらも助けてくれる人がいるのかもしれません。

 




 

まとめ

まず非常にテンポが良い作品で、話の流れもスムーズであり、余計なエピソードを挟まなかったあたりに好感が持てます。

やや説明不足な部分も見受けられるものの、個人的にはむしろこれくらいの方が深みがあって好きですね。

まぁ終わってみれば、ヴィンセントが教えたことはケンカと馬券の買い方だけだけどね。。

 

最後の最後で盛り上げるためか、ヴィンセントの過去に触れることが少なかったのがやや不満かな、もう少し掘り下げた方が魅力的になったかなぁとも思います。

筆者が昔住んでいた町・ブルックリン(SheepsHead Bay)の街並みも懐かしく、久しぶりのヒット映画でした。

 

オススメです。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。



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