レスラー


(原題:The Wresler)
2008年/アメリカ
上映時間:115分
監督:ダーレン・アロノフスキー
キャスト:ミッキー・ローク/マリサ・トメイ/エヴァン・レイチェル・ウッド/マーク・マーゴリス/トッド・バリー/他

 




 

かつて大スターだったプロレスラーが、己の人生を見つめ直すヒューマン・ドラマ。

監督を務めたダーレン・アロノフスキーは主演にミッキー・ロークを起用することを強行し、製作会社からの予算を大幅に削られた逸話があります。

 

わずか600万ドルで製作された本作ですが、ヴェネツィア国際映画祭での金獅子賞(最優秀賞)を皮切りに、数々の映画賞を受賞しました。

何故に予算を削ってまで、ダーレン監督はミッキー・ロークを推したのか。

いざ映画を観てみると、その判断の素晴らしさが良く分かります。

 

強者を演じ、虚実を交えるプロレスの世界。

そんな世界に生きる男の栄光と転落を描いた哀しいドラマとして、かなりの良作だと思います。

 

 

 

さっくりあらすじ

1980年代、かつては大人気を誇ったランディ”ザ・ラム”ロビンソン。

それから20数年が経った現在でもランディはプロレスを続けてはいるが、生活費をスーパーのバイトで賄い、孤独な日々を送っていた。

そんなある日、名勝負と謳われたジ・アヤトラーとの20年ぶりの記念試合が決定する。

久しぶりの大きな試合に胸を躍らせるランディだったが、突如襲ってきた心臓発作に倒れ、医者からは現役の続行は無理だと宣告されてしまう。

これを機にプロレスを引退し、疎遠になっていた娘・ステファニーとの関係を修復しようとするのだが、、、

 

 

 

 

 

かつての人気レスラー・ランディ
既に体はボロボロ
地方の営業で食いつなぐ日々

 

ベテランストリッパー・キャシディ
彼女に会うのがランディの唯一の楽しみ
違う世界ではクモ少年の叔母だったり

 

ランディの娘・ステファニー
親子としての関係は破綻していて、
ランディを激しく嫌っている

 

 

 

 

 

心地良さの対価

全編に渡って哀愁が漂う本作ですが、もうポスターからして切なくてカッコいいよね。

ぐったりとロープにもたれ掛かり、下を向くランディの姿、そこに漂う悲しい雰囲気は芸術的です。

普通に部屋に貼っときたいくらい。

 

 

さて、積み重ねた歳と怪我が限界を迎え、心臓に爆弾を抱え、それでもなおプロレスラーでいようとする男の物語です。

まず、このランディ・ロビンソンという人物は粗暴で教養も無く、携帯電話すら持たない前時代的な男です。

しかしプロレスを愛する気持ちは純粋で、また彼自身も愛すべきバカな魅力に溢れています。

 

近所の子供たちに慕われ、プロレスラーには尊敬を受け、また興行スタッフの仲間達にも敬意を払われる。

その透き通った人間性に嘘はなく、誰も彼を嫌うような人が出てこないんですな。

そんな”人格”が愛されているにも関わらず、ランディ自身は”プロレスラーとしての人気”だと勘違いしているところが本作のキモとなるわけですが。

誠実なプロレスラーではあるけれど、誠実な人間ではない、というところがポイントです。

 

 

そんな彼が心臓を手術し、プロレスを引退せざるを得ない状況になって初めて物語が動きます。

毎日のようにステロイドを投与し、体をイジメ抜くトレーニングを課し、リングの上で輝いていた生活が一変するわけです。

 

待っていたのは(バレないように)名前を偽り、スーパーでバイトする現実。

小銭を稼ぐつもりで参加したプロレスのサイン会で、客が来ない現実。

その過酷な現実に触れ、ようやくプロレスラーとしてではなく、一人の男性としての自分の立場を自覚します。

 

 

正式にプロレスからの引退を告げ、バイトの数を増やし、行きつけのストリップバーのダンサー・キャシディとの仲も進展し、新たな人生に目を向けます。

さらには絶縁状態にあった娘にも連絡し、強烈な拒絶反応にもめげずに仲直りの目途まで立ち、プロレス以外で止まっていた自分の時間が、再び動き始めるわけです。

 

 

特筆すべきはダーレン監督が予算を犠牲にしてまで、渇望したミッキー・ロークの演技でしょう。

かつての有名人で現在は人気に陰りが見えている、そんなミッキー・ロークとランディ・ロビンソンの共通性は映画の中で存分に発揮されています。

そんな彼が肉体を作り上げ、プロレスの動きを身につけ、何よりもプライドをかなぐり捨てるような演技に徹したことには脱帽ですね。

 

人気者としての自己認識を捨てない傲慢さ。

よりよいプロレスを作ろうとする生真面目さ。

そして、いかつい顔の中で光るクリクリな瞳。

 

彼の持つキャラクター性や、限界まで掘り返した演技力は本当に素晴らしいもので、何度も見返したくなる本作の魅力は彼にこそあると言っても過言ではないでしょう。

 

 




 

まとめ

ちょいと男性寄りの視点の映画なので、女性には理解し難いところも少なくないと思われます。

充実した過去に目を向け、過酷な現実から逃げる姿は滑稽に見えるかもしれません。

 

もし自分がラムのファンであれば、リングで果てる彼の雄姿はいつまでも記憶に残り、輝き続けるものでしょう。

もし自分がランディの友人であれば、ラムではなく、ランディとして幸せな人生を歩んで欲しいと願うことでしょう。

そんな具合に、観れば誰もが何かを思う映画です。

 

不器用で純粋なお馬鹿さんの物語として、メンズは一度は観て欲しい作品ですね。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。



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