THX 1138


(原題:THX 1138)
1971年/アメリカ
上映時間:86分
監督:ジョージ・ルーカス
キャスト:ロバート・デュヴァル/マギー・マコーミー/ドナルド・プレゼンス/イアン・ウルフ/ドン・ペドロ・コリー/他

 




 

近代映画界で押しも押されぬ巨匠、ジョージ・ルーカスのデビュー作となるSFドラマ。

ルーカスが大学生の時に製作した短編映画「Electronic Labyrinth:THX 1138」が学生映画祭でグランプリを受賞。

それを知った大御所、フランシス・コッポラの資金提供によりリメイクされ、またコッポラが製作総指揮も兼ねたそうです。

ちなみに興行的にはあまり振るわなかったみたいですね。

 

ルーカス氏が原作を製作したのが1967年。

半世紀以上も前にこういった未来社会を頭の中に描き、極めて理論的に、現実的に管理社会を想像できる発想力は当時からずば抜けていたようです。

25世紀の世界を舞台にした作品ですが、現代ほどのCG技術はなく、映像と脚本にチグハグな印象はあります。

それ故に、若きルーカスが映画を通して伝えようとしていることも、分かりやすく感じ取れるわけですが。

 

 

 

さっくりあらすじ

25世紀の地球。

コンピューターが支配する地下に広がる世界で、人類は精神抑制剤の服用を義務付けられ、徹底した管理の元で暮らしていた。

名前ではなく登録番号で呼ばれ、様々な作業に従事している中「THX-1138」という男性と、そのルームメイト「LUH-3417」という女性は抑制剤の投与を拒否するようになる。

次第に感情が目を覚まし、固く禁じられている肉体関係を結ぶ2人。

それに気づいたコンピューターは1138を拘束し、裁判にかけようとするのだが、、、

 

 

 

 

 

THX-1138
精神抑制剤の服用を止めてみる

 


LUH-3417
同じく薬の服用を止め、感情に目覚める

 

ロボットが治安維持を務める

 

 

 

 

 

管理社会のイメージ

とにかくジョージ・ルーカスが描いた未来の姿や、それに伴う想像力に脱帽といったところでしょうか。

コンピューターに管理され、徹底的な合理主義の下で暮らす人間たち。

名前や感情といった概念は(恐らく)不要なものであるとされ、自由意志は剥奪されつつも、健康な毎日は保証される完成されたディストピアの形ですな。

 

識別番号で人間を管理するというと聞こえが悪いですが、現実にマイナンバーやソーシャルセキュリティといった制度はすでに配布されていますし、現在進行形で進化しているものです。

今はまだ税金や年金の管理に留まりますが、いずれは病歴や居住履歴、果ては犯罪歴まで網羅することにもなるかもしれません。

人間よりも賢いコンピューターの合理性を鑑みれば、近からずも遠からずな未来が十分に描かれているようにも思います。

 

 

で、映画としてですが、面白いかと聞かれれば微妙なところ。

作品のテーマと公開された時代を考えれば、興味深い内容ではありますが、現代のエンタメに馴れている人からすれば退屈な映画だと思います。

 

映像事態は後付けのCG編集もあり、そこまで古臭い出来ではないと思いますが、抽象的な概念を表現するにはちょっと物足りない印象です。

具体的には、ルーカス氏の考えた未来の管理社会を描くにあたり、説明不足な点が多々見受けられるんですね。

ただでさえ”感情”という抽象的な概念を描く作品なので、心理的な気持ちの変化が分からないと理解が追いつきません。

 

少な目の台詞と表情の変化だけで汲み取るには難易度が高く、変わり映えのしない白い背景もあり、退屈に感じる原因になっていると思います。

未来や感情という、形の無いものを形にした映像なので、ある程度は仕方がないものでしょう。

ルーカス氏が製作のイロハを身に着け、大御所となった現在で、同じテーマで作ったら魅力的な作品になるかもしれませんね。

 




 

まとめ

映画としては正直微妙ですね。

しかし繰り返しになりますが、年代的なものを考慮すれば観て損は無いと思います。

映画好きが観るというよりは、映画の勉強をしている人が観るべき作品かもしれません。

 

よって、筆者みたいに”映画を観るのが好き”レベルの人であれば、無理して観るほどのコンテンツだとは思いません。

よければ一度ご鑑賞くださいませ。

 



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