セッション


(原題:Whiplash)
2014年/アメリカ
上映時間:106分
監督・脚本:デミアン・チャゼル
キャスト:マイルズ・テラー/J・K・シモンズ/ポール・ライザー/メリッサ・ブノワ/オースティン・ストウェル/他

 




 

きちんと内容のある映画を正当に評価するサンダンス映画祭で注目を浴び、その後の映画賞に大旋風を巻き起こしたヒューマン・ドラマ。

監督・脚本を務めたデミアン・チャゼルは学生時代のバンド活動の経験を元にしたそうで、相当に過酷でつらい経験をしたそうな。

 

映画化されていない優秀な脚本を載せた、いわゆる”ブラックリスト”において注目を集め、その一部を短編映画として公開したことでサンダンス映画祭で大絶賛を受けました。

これにより投資家からの資金の獲得に繋がり、本編への製作に相成ったというわけで。

良い脚本が信用を勝ち取り、潤沢な資金で良い映画を作る。

まさに理想的な映画製作の形と言えるのではないでしょうか。

 

 

 

さっくりあらすじ

偉大なジャズ・ドラマーを目指す19歳の青年・アンドリューは名門のシャッファー音楽学校に入学し、日々研鑽を積んでいる。

ある日、一人で練習していると最高の指揮者であるフレッチャーが見に来るが、すぐに立ち去ってしまった。

しかし後日の授業中にフレッチャーがやって来ると、その場でアンドリューをスカウトし、自身が持つスタジオ・バンドへと引き抜いた。

プライベートでは映画館でバイトするニコルとも親密になり、全てが上手くいっていると感じるアンドリュー。

いざバンドに加わり、スタジオに入ったフレッチャーの指揮の元、練習が始まるのだが、、、

 

 

 

 

 

ドラマーとして高みを目指すアンドリュー
フレッチャーにスカウトされる

 

喜んだのも束の間
鬼畜トレーニングに追い込まれる日々

 

鬼教官フレッチャー
マジキチ

 

 

 

 

 

 

天才になるための狂気

もうね、この映画は本当に凄いです。

「面白い」とか「素晴らしい」ではなく、「凄い」の一言に尽きますね。

 

ジャズ・ドラマーとして大成したいアンドリュー。

自身の抱えるバンドを成功させ、指導者として大成したいフレッチャー。

それぞれの思惑が交錯し、反発し、混ざり合う奇怪な描写は迫力に満ち、ただただ度肝を抜かれるばかり。

2人そろって「良い人」とか「嫌な奴」とか、そんな低い次元の人物ではなく、揃って頂上を目指す狂人の姿そのものです。

 

 

かなりパンチの強い作品なので、今でいうパワハラ上等な指導方法の描写は人を不快にさせるものだと思います。

ついでに言えばジャズ経験者の方が見ればへそで茶が湧くレベルの演出だと思いますし、ある意味で「巨人の星」に通ずるような超絶スポ魂系なノリだとも言えるでしょう。

無理のある演出で苦笑いをするのか。

狂気的な迫力に圧倒するのか。

このあたりをどう受け取るかで、作品に対する評価も180度変わりそうな気がしますね。

 

 

筆者は音楽好きではありますが、ド素人なので音の質は正直よく分かりません。

しかし最高の音を、幻のような最高の一瞬を追い求める狂気はよく分かります。

だって突き詰めたら芸術とは狂気に繋がるものじゃない?

 

本作で描かれる2人の主人公はプロを目指す(=食ってくための音楽を身に着ける)というよりは、存在するかどうかも分からない音楽の頂を本気で目指しているわけですな。

かつての偉人たちが奏でた、奇跡的な音を追い求めているとも言えます。

これは絶対に凡人では理解できない領域の話ですし、超一流を目指す努力の形でもあるわけです。

 

自身の”作品”として狂気的に天才を作ろうとするフレッチャー。

天才になりたくて狂気的に研鑽を積むアンドリュー。

立場の違いはあれど結局は似た者同士なんですよね。

 

 

そんな彼らの凄い狂気を表現するJ・K・シモンズと、マイルズ・テラーの鬼気迫る演技も称賛に値します。

 

鬼教官・フレッチャーを演じるJ・K・シモンズは、歴代の出演作の中でも過去最大級のインパクト。

最初こそ拘りの強そうな音楽教授という感じですが、一皮めくれば現れるキ〇ガイじみた練習風景はもう本当に怖い。

性格的にも決して良い人なわけでもなく、どちらかと言えば8:2くらいで嫌な奴と言うのもポイントですな。

散々嫌がらせをした上で反撃に遭い、その上でさらに嫌がらせを繰り返した結果生まれた天才ドラマーの姿に、歓喜と畏怖と驚嘆を感じ、興奮の笑みがこぼれる瞬間が最大の見どころです。

 

そんなフレッチャーを結果的に捻じ伏せた、新鋭ドラマーのアンドリューを演じたマイルズ・テラーもまた素晴らしい演技。

ひたむきに努力を続けたことで上を目指す道が開けるものの、待っていたのはドン引きするほどのパワハラの嵐

しかし厳しい叱咤に負けずどんどん成長し、彼もまた少しずつ傲慢な人間へと変貌しくのもまたキモとなります。

人に認められなかろうと、大事な彼女を失おうと、どれだけの嫌がらせを受けようと、自分のドラムが叩き出す最高の音を目指す彼もまた立派な狂人ですな。

 




 

まとめ

要はキチ〇イじみた向上心を持つ若者と、まんまキ〇ガイの鬼教官がもたらす狂気的なドラマなんでしょう。

とにかく純粋に怖い叱咤の数々と、徐々に昇華されていく狂気的な情熱。

迫真の演技で彩られた物語は稀有な迫力を誇り、極めて内容の濃い作品として素晴らしい完成度となっております。

 

個人的には。エンディングのもう少し先まで描いて欲しかった気もしますけどね。

やはり「面白い!」ではなく「凄い!」の一言ですな。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 



ブログランキング参加してみました。
良ければポチっと押しちゃってください。