ゼロ・ダーク・サーティ

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(原題:Zero Dark Thirty)
2012年/アメリカ
上映時間:157分
監督:キャスリン・ビグロー
キャスト:ジェシカ・キャステイン/ジェイソン・クラーク/ジョエル・エドガートン/ジェニファー・イーリー/マーク・ストロング/カイル・チャンドラー/エドガー・ラミレス/ジェームズ・ギャンドルフィーニ/他

 




 

あと半年(2016年5月現在)と少しで終わる任期を横目に、広島訪問を含めレガシー(政治的遺産)プロジェクトに奔走するオバマ大統領。

いわゆる国民皆保険を実現する”オバマケア”に始まり、イラク戦争の撤退・終結、米ロ戦略兵器(核兵器)削減条約の締結、ならびに米国・キューバ間の国交回復など。

形としては重要な成果を挙げたと言えるオバマ氏です。

反面2011年のリビア介入での失敗を認めたり、打ち出した数々の政策で国家の負債が増えてしまったりと、、、まぁその辺は社会派の雑誌とか経済誌でも読んでください。

 

史上初の黒人大統領としてアメリカを導いたオバマ氏ですが、他国民から見て最もインパクトに残ったのは国際テロ組織「アルカイダ」の指導者、ウサマ・ビン・ラディンの殺害と言えるでしょう。

そんな実際に起きた一連の出来事を描いた作品ですが、どうあがいても政治的な匂いが無くならない作品になってしまうのは仕方がないところでしょうか。

 

公開前どころか撮影が始まる前にアメリカの政党間で政治的論争が始まり、配給会社のコロンビアが公開時期の変更を検討するなど、色々なところで思惑が動き話題を呼んだ本作。

「ハートロッカー」でアカデミー賞を受賞したキャスリン・ビグロー監督が送る、ドキュメント風プロパガンダと思って観るのが正しい姿勢です。

 

 

 

さっくりあらすじ

CIAの女性分析官・マヤは中東パキスタンに配属され、米国同時多発テロに関連するテロリストの尋問に携わっていた。

ビン・ラディン関係者を捕らえ拷問していく同僚のダニエル、拷問現場を目にしたマヤは不快な気持ちになりながらも、必要なことだと自身を納得させるように努める。

やがてビン・ラディンへと繋がる人物「アブ・アフメド」を追い始めるが、条件付きで米国側に投降すると取引を持ちかけたバラウィという人物の罠により同僚捜査官ジェシカを含む数名が命を落とす。

さらに「アブ・アフメド」という人物がすでに死亡していることが判明し、マヤは落胆すると共に必ず仲間の仇を取ると誓うのだが、、、

 

 

 

 

Zero-Dark-Thirty-04若きCIA捜査官・マヤ

 

Zero-Dark-Thirty_03米海軍特殊部隊・パトリック

 

ZeroDarkThirst 08「生ぬるい」と評される拷問シーン

 

 

 

 

「嘘っぽい」リアリティ

まず長い。

 

話を考えれば仕方がないのだけれど、2時間半を超えるわりに物語の起伏が無い。

ドキュメンタリーだと思えば悪くはないんだけど。。

現実として報道で答えを知っているだけに、その間の部分を演出として観るわけですが、なんか内容の薄いものばかりで少々飽きてしまうのが正直なところ。

 

女性分析官・マヤの魅力もイマイチで、冷静に膨大な情報を分析している描写があるわけでもなく、どちらかといえば自分の主張を貫くために上司に食って掛かってる印象の方が強いです。

そう言った感情と思考の演出はお世辞にも上手とは言い難い気がします。

 

 

そして評判の悪い拷問シーンですが、これに関しては何とも言えないなぁ。。

「屈強なテロリストがそんな簡単に口を割るかい!」という主張はもっともですが、実際にどういった尋問・拷問をするのか良く知らないしねぇ。

逆に屈強な男が白状したくなるほどの拷問を見たいのか?というのも疑問ですよね。

 

実際にCIAが行ったとされる拷問動画が流出した際には世界中がドン引きしましたし、どう転んでも正義の行為には見えません。

いずれにせよ戦争経験の無い、戦争に興味を持たない平和主義を謳う人間が批判してはいけない領域だと思います。

 

 

テロリストと闘う捜査官、軍人、米国、、全編を通して映画に漂う”緊張感”は非常に素晴らしいと思います。

特にビン・ラディンの殺害命令を受け、屋敷に潜入する特殊部隊員の緊迫感はマジでハンパない。

 

テロや戦争で犠牲になった人達の想い、そしてマヤが心血を捜査に注いだ10年間。

そんな思いを両肩に背負い、暗闇の中ターゲットを探す部隊の静かな緊張感はこちらにも伝わり、じわりと手に汗握るシーンが続きます。

現実の緊張感はこんなもんじゃないでしょうが、ラスト30分の静かな迫力は観ても損は無いと思います。

 

 




 

まとめ

9.11のテロからもうじき15年。

筆者が渡米、ニューヨークに住み始めたのが2001年10月、当時のグラウンド・ゼロは瓦礫の山でテロの凄惨さにビビッたことを思い出します。

ウサマ・ビン・ラディンが「死亡した」とされてから5年が経ちました。

相変わらずテロは起きるし、戦争は無くなりません。

政治的、経済的な側面もある「紛争」というものは非常に複雑で、難解で、平和な日本に住んでいると本当に”遠い”ものだとつくづく感じたりします。

 

どう見てもアメリカのプロパガンダ映画にしか見えませんし、物語全てを鵜呑みにするのはどうかと思います。

しかしテロリストという存在と、それらと直接的に戦う人達がいるという事実は知っておくべき、観ておくべきかなとも思います。

 

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。


 

 

 



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