紀元前1万年


(原題:10,000BC)
2008年/アメリカ・ニュージーランド
上映時間:109分
監督:ローランド・エメリッヒ
キャスト:スティーヴン・ストレイト/カミーラ・ベル/クリフ・カーティス/ジョエル・バーゲル/アフィフ・ベン・バトラ/他

 




 

 

「デイ・アフター・トゥモロー」や「インディペンデンス・デイ:リサージェンス」のローランド・エメリッヒ監督による、文字通り紀元前10000年を描いた古代SFエンターテイメント。

ピラミッド、マンモス、サーベルタイガーなど、昔懐かしのロマンを背景にした作品であり、良くも悪くも「古代冒険物語」といったところか。

まぁ時代考証やら風土やらを再現した上にストーリー性を持たせようとすると、どうしてもB級な香りが漂ってくるものですが、広大な大地を舞台にした壮大な物語にはそれなりの迫力があります。

 

 

 

さっくりあらすじ

はるか昔、ヤガル族は降雪地帯の山奥に住み、マナク(マンモス)の狩猟をしながら生活していた。

ヤガル族の若者・デレーの父は優秀なハンターであり、デレー自身も将来を有望視されていたが、突然父は行方を眩ませてしまい、一転してデレーも「裏切り者の息子」として蔑まれるようになる。

そんなある日、ヤガル族の村に青い瞳の少女が運び込まれ、同時に村の巫女はいずれやって来る最後のマナクを倒したものこそがエバレットと名付けられた少女と結ばれ、村に新たな時代を呼ぶことを予言した。

数年後、マナクの大群が村に押し寄せ、村の若者・デレーは偶然にも最も巨大なマンモスを仕留め、族長の証となる白い槍を受け継ぎ、エバレットを妻にすることも認められる。

しかし喜びも束の間、”四本足の悪魔”と呼ばれる騎馬民族がヤガル族の村を襲い、エバレットが連れ去られてしまうのだが、、、

 

 

 

 

マンモス!

 

サーベルタイガー!

 

青い瞳の少女・エバレット
演じるカミーラ・ベルが可愛い

 

 

 

 

”太古”を描く難しさ

発掘探査技術や科学技術が発達するにつれ、考古学というものも進化に次ぐ進化を遂げ、何千年も前の白骨が発見されてはコンピューター上で復元されるようになった今日この頃。

氷河期が一時的に終わりを迎え、人類が狩猟生活から農耕生活へと切り替わったことは学説的にも根拠がある有力な説であり、物語の土台としては大まかに正しいと言えます。

でもツッコミどころの宝庫ではありますけどね。

 

そもそもピラミッド建造はBC2000年頃だと言われてますし、トウモロコシは寒いところでは育たないし、その他諸々、学術的に突っ込んでたらキリがないのはお約束。

しかし、歴史的や人類学的な観点で正確な描写を描こうとすればそれは非常に地味なもの。

明らかに絶滅していたであろう巨大な肉食鳥や、明らかな超文明による巨大国家などを登場させたエメリッヒ監督の判断は、内容はどうあれ悪くはないのかなと。

 

 

言うなれば本作は教育TVでやるようなドキュメンタリーではなく、エメリッヒ監督が送る「古代をテーマにしたエンタメ」なので、いかに突拍子の無い展開であろうが、それはそれで受け入れてあげる懐の広さが必要になります。

太古に存在したとされる大型の動物のCG造形はどれも強く美しく、壮大な規模のピラミッドの描写も思わず唸るほどの迫力があります。

実際の歴史考証はさておき、この映像美はなかなかのものですよ。

 

考古学的に正しくなくてもSFとしては良くできてますし、ドキドキワクワクを盛り上げるエンターテイメント性が無ければ映画なんて面白くはないもんね。

そういう意味では正しい選択と言えます。

 

 

しかし、物語としては青年が愛する人を攫われ、彼女を取り戻し、真の戦士となるべく旅に出るというオーソドックスな流れ。

興味深い時代背景の描写が終わると勇者の冒険譚に変わるので、ここに違和感を感じる方も多いでしょう。

後半に至っては投げっぱなしで伏線も回収されず、何ともスッキリしない仕上がりなのも良くないですね。

先述したように圧倒的な映像美を誇る本作ですが、対照的に物語の印象は非常に薄く、迫力あるシーンの連続ながらも「おぉ、冒険してる」以上の印象が残りません。

 

主人公・デレーもワイルド味に欠け、単に綺麗な顔したイケメンということで、絶妙に記憶に残り辛いのも原因かな。

ついでにヒロイン・エバレットを演じるカミーラ・ベルも非常に魅力的で可愛いのだけれども、それ以上の印象深さは無いです。

さらに言えばラスボスにあたる”神”を名乗る権力者も記憶に残るようなものは無く、あれだけ強力だった軍隊もあっさり瓦解してしまうし、、なんだかねぇ。。

 




 

 

まとめ

巨大な動物、ピラミッド、呪術、神話、騎馬民族に恋愛など、色々と詰め込みすぎて物語に深みが無いのが最も特徴的となってしまう皮肉な完成度。

子供ならともかく、大人としてはやっぱり正確な根拠に基づいたドキュメンタリーの方が面白いのが残念なところですな。

やはり見所は美しいCGを用いた描写や造形などの映像美に尽きます。

ストーリーはあくまでオマケ程度に考えて、気楽にダラダラ観るのが良いのかな。

 

オススメはしませんが太古を描く映画は多くないので、観て損は無いでしょう。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。



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