15ミニッツ・ウォー


(原題:L’Intervention)
2018年/フランス・ベルギー
上映時間:98分
監督:フレッド・グリヴォワ
キャスト:アルバン・ルノワール/オルガ・キュリレンコ/ケヴィン・レイン/ヴァンサン・ペレーズ/ジョジアーヌ・バラスコ/他

 




 

 

スクールバスを乗っ取った武装テロリストを、制圧すべく集められた精鋭部隊の姿を描く伝記的アクション。

実際に起きた事件を元に作られたんだそうで、史実に多少の脚色があるそうですが、伝記的映画と呼んで差し支えないでしょう。

 

映画の舞台はジブチ共和国。

何となく聞いたことはある国だと思いますが、エチオピア・ソマリア・エリトリアに接するアフリカ北東部の小国です。

よって政治と治安に不安定な国(ソマリアの海賊とかね)に囲まれており、イラクやアフガニスタンにも近いためアメリカ軍・フランス軍・日本の自衛隊が駐留する軍事的に重要な場所だと認識されているようですな。

ちなみに、一般的にはあまり知られていないものの、親日国家であり阪神大震災や東日本大震災の時には支援を申し入れてくれた国でもあります。

夏季には平均40度を超え、一説には70度超えも記録したことがあるんだそうな。

 

 

 

 

さっくりあらすじ

1976年当時、フランスの植民地だったジブチで独立派武装組織にスクールバスが乗っ取られる事件が発生。

実行犯は投獄されている組織のメンバーの解放とフランスからの独立を要求し、応じない場合は子供たちの喉を切り裂くと声明を出した。

これを受けてフランス政府は特殊部隊を編成、精鋭の狙撃手5人が現地へと派遣される。

責任者のジェルバル大尉は現場の偵察を終え、狙撃手の一斉射撃によるテロリストの排除を立案するのだが、、、

 

 

 

 

バスジャックした独立運動組織
国境付近で迎えを待つ

 

子供たちの身を案じ人質となった教師
本作1番の漢

 

特殊部隊の責任者・ジェルバル大尉
難しい判断を迫られる

 

 

 

 

 

前代未聞

狙撃を扱う映画は数あれど、ここまで狙撃手だけにフォーカスした作品は少ないように思いますし、そもそも「5人の同時狙撃」なんて聞いたこと無いよね。

映画としては余分なものは極力削ぎ落とし、テロリストがバスジャックを起こし、それを制圧するために集められた狙撃手が相対する、それだけ。

このタイトな仕上がりは十分評価に値するものですし、それだけにスナイパーの弛緩・緊張のメリハリが良いスパイスとなり、全編に渡り緊張感に溢れています。

 

前半はリアリティーを、後半はややエンタメに寄せたバランス感覚も個人的には好み。

最後の最後に起こってしまった銃撃戦には重い責任感と、派手なドンパチの娯楽性が混在しており、何とも不思議な味わいになってますね。

上からの指示にヤキモキするドラマ性、失敗の許されない狙撃の緊張感、派手な銃撃戦を描く娯楽性と、どれを取っても良い出来じゃないでしょうか。

 

とはいえ、ある意味では玄人向けな映画とも言える要素もあり、フランス‐ジブチ間の政治的背景や歴史、狙撃手の本来の任務などを理解できないと退屈な作品にもなり得ます。

良く言えば漂う緊張感だと言えますが、エンタメ映画と捉えれば長々と続く偵察シーンに飽きる人も少なくないでしょう。

つまりは独立運動やテロリズム、ひいては戦争そのものをどれだけ身近に感じられるかという感覚により、映画としての面白さが増減すると言っても良いでしょう。

 

 

物語の中心となる5人の狙撃手もそれぞれが個性的で、キャラが立ってます。

隊長のジェルバル大尉は指揮官としての責任を背負いながらも、部下の狙撃手を全面的に信頼して高難度なミッションに臨む勇気がとにかく印象的。

失敗は許されず、「イケるか?イケないか?」の瀬戸際に晒され続ける心労たるや、観ているこっちまで疲れるようなストレスは相当なものでしょう。

 

軽口を叩きながらも、そんな大尉を信頼して任務に臨む部下もまた魅力的。

職人気質だったりお喋りだったり、寡黙で不愛想だったり、それぞれが異なる個性を存分に発揮しながらも、いざ作戦を実行する時には見事なチームワークを発揮する”プロ”としての姿が実に恰好良いわけですよ。

終盤はそれぞれが超絶狙撃力を発揮し「人質となった子供を救出する」ことに100%集中し、銃弾の嵐を潜り抜けていく彼らの雄姿は観て損は無いでしょう。

 

ついでに子供たちが心配だからとテロリストの元へ自ら突っ込んだ女教師。

元々は教師だったと疲れた顔で語るテロリスト。

そして、事件の1年後に独立を勝ち取ったジブチ政権などなど、色々と考えさせられるのも印象的です。

 




 

まとめ

実際に起きた事件を元に作られているわけで、悲惨な事件の犠牲者まで出た物語です。

成功を労われたジェルバル大尉が「成功ではない」と涙を流す結果も、手放しで喜んではいけないものなのだと教えられます。

でもね、不謹慎だけどやっぱり狙撃手って格好良いんですよねー。

 

小粒な作品ではありますが、面白いですよ。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。



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