BANANA FISH


バナナフィッシュ
1985年~1995年
作者:吉田秋生
フラワーコミックス
全19巻

 




 

これまた古い作品ですが、紛れもなく不朽の名作と呼べるかと思います。

何故に少女漫画で連載されたのか不明なほどにバイオレンス&悲しい作品で、キラキラしたハッピーな話をイメージするとエライこっちゃなのでご注意を。

 

舞台はアメリカ。

ニューヨークのスラムを根城にするストリート・キッズと、とある日本人との出会いから物語は始まります。

そしてある薬物をキーワードにギャング、ディーラー、マフィア、果ては政治家までを巻き込む壮大で骨太なストーリーは読み応え十分です。

その中にある友情・愛情・嫉み・妬み・そして異常なまでの支配欲や復讐心など、人間が持つあらゆる感情が交錯するのも特徴的で、これほど感情移入させる長編漫画も多くないのではと思います。

 

 

 

さっくりあらすじ

1973年、ベトナム戦争に従事していたアメリカ兵グリフィン・カーレンリースが突然仲間に向けて自動小銃を乱射する事件が発生、取り押さえられたグリフィンは「バナナフィッシュ」と意味不明な言葉を呟いた。

 

12年後のニューヨーク。

ストリートキッズを束ねる少年・アッシュは銃撃を受け、瀕死の男から「バナナフィッシュ」という言葉と共に小さなロケットを受け取る。

廃人となってベトナム戦争から帰還した兄・グリフィンが時折つぶやく「バナナフィッシュ」という言葉、そして受け取ったロケットに隠された薬の調査を開始するため、アッシュは行動を開始する。

一方で、日本からストリートキッズの取材にやって来たカメラマンの伊部俊一と助手の奥村英二は、ガイド役のマックスと待ち合わせるもマックスは刑務所に入っており、代理でやって来たチャーリーと合流する。

そしてチャーリーの仲介により、アッシュと英二は出会うのだが、、、

 

 

 

 

主人公アッシュ・リンクス
IQ180・驚異的な戦闘能力・カリスマ性
人の上に立つ”神の器”

 

 

 

 

硬派で男性的な女性目線

作者の吉田秋生は女性漫画家ですが、男性的な視点も持てる稀有な作家でもあります。

絵のタッチもさることながら、女性としては嫌悪感を抱くような演出もありながら、尚且つグロさや生理的に受け入れないものをソフトに描く感性があります。

 

どのキャラクターも個性があり、善も悪も魅力に溢れ、人間味を感じるリアリティがあります。

ただ物語の特性上、同性愛の表現がとても多いですけどね。

ややBL的な表現はあるものの、あくまでこれは友情と愛情が混ざったものであり、プラトニックに美しいアッシュと英二の関係に下品さは微塵も感じません。

 

ひと昔前のアメリカ・ニューヨークという舞台、治安が悪く日影に染まっていた街にスポットを当て、街の冷たさを感じ取れるような画力と表現力は本当に秀逸です。

とある薬物を追って展開されるミステリー性&サスペンス性も完成度が高く、少女漫画というジャンルに収まらないハードボイルドな展開が最も特徴的と言えるでしょう。

 




 

まとめ

人が抱える光と闇や人間的な内面にスポットを当て、人の心を描ききる吉田秋生の想像力、構成力はずば抜けて高く、読み手の心を掴んで離しません。

ぶっちゃけ個人的には、下手な男性作家が描くハードボイルド系よりも面白いと断言できます。

ハマれば誰でもアッシュ・リンクスという青年の輝きに魅了されることでしょう。

 

ちなみに続編となる読み切り「光の庭」もオススメです。

ぜひ一度ご拝読くださいませ。


 

 

 



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