ビッグ・リボウスキ


(原題:The Big Lebowski)
1998年/アメリカ
上映時間:117分
監督:ジョエル・コーエン
キャスト:ジェフ・ブリッジス/ジョン・グッドマン/スティーヴ・ブシェミ/デヴィッド・ハドルストン/ジュリアン・ムーア/他

 




 

ニートなおじさんが誘拐事件に巻き込まれていく様を描くクライムサスペンス・コメディ。

「ファーゴ」や「ノーカントリー」など、独特の余韻が印象的なコーエン兄弟が監督・脚本を務めます。

 

公開された1998年当時は微妙な評価を受け、興行的にはギリギリ成功という感じだったそうですが、何故か現在はカルト的な人気を誇る本作。

熱狂的なファンによる「リボウスキ・フェス」が毎年開催されるなど、良く分からん異常な人気を博しております。

 

 

さっくりあらすじ

自称”デュード”と名乗るジェフリー・リボウスキは同姓同名の富豪と間違えられ、自宅に乱入してきた暴漢に襲われた挙句、カーペットに小便されてしまった。

とばっちりに納得がいかないデュードは富豪ビッグ・リボウスキ宅を訪れカーペットの弁償を訴えるも、怠惰な穀潰しとなじられてしまう。

それでも帰り際に立派な敷物を持ち帰ったデュードだったが、そこに再びビッグ・リボウスキから連絡が入る。

再度ビッグ・リボウスキ宅を訪れると、誘拐された彼の妻・バニーの身代金の受け渡しを依頼されるのだが、、、

 

 

 

 

街で一番の無精者・デュード
違う世界では軍事企業のNo.2だった

 

退役軍人でデュードの親友・ウォルター
若い女性を監禁していたことも

 

ビッグ・リボウスキの娘・モード
麻薬密売組織のボスだったり

 

 

 

 

ビンテージワイン

上質な年代物のワインのような、分かる人には分かる映画ですな。

一度の鑑賞で全てを味わい尽くすことは難しく、2度3度と味わうことで魅力が見え始め、その内にどっぷりと浸かることでしょう。

ちなみに筆者はお酒が苦手で全然美味しいとは思いませんし、本作もそこまで面白くはなかったっす。

しかしアルコールに付き物な”中毒性”だけは十分に理解できましたが。

 

コーエン兄弟は作家レイモンド・チャンドラーの推理小説に影響を受けたと明言しており、定職に就かない男のハードボイルドさが意識されています。

演出的な意味合いだけではなく、比喩的な表現を多用する社会風刺のような側面が垣間見え、痛烈な批判をブラック・ユーモアで包んだパロディ探偵映画とも言えるのでしょう。

複雑ですな。

 

 

物語としては怠け者・デュードが本人の意思とは裏腹に、次々と巻き起こるトラブルに振り回されるという流れ。

冒頭からして物語の背景がブッシュ政権下の湾岸戦争中だけに、デュード(クウェート)の家に暴漢(イラク)が押し入り、親友のウォルター(アメリカ)が憤慨し事態を悪化させるという演出にスパイスが効いてます。

 

デュードは音楽と酒とマリファナとボウリングに耽る日々を送る、真性ダメ人間。

ヨレヨレのTシャツにダボダボのパンツに、伸ばし切った髪と髭と、もう見た目も中身もダメダメなおじさんです。

しかしどこか可愛らしく、牧歌的に自由に生きる人としての魅力も存在し、演じるジェフ・ブリッジスの演技力も相まって極めて面白みのあるキャラクターになっています。

相次ぐ災難に対し行動しているようで何もしていないようで、主人公のくせにこの何とも言えない不思議な立ち位置は他の映画には無いエッセンスだと思いますね。

 

ジョン・グッドマンとスティーブ・ブシェミだけだと何となく不穏な匂いが漂うのに対し、ジェフ・ブリッジスが画面に加わるだけで安定感が生まれる不思議。

この演者たちによる化学反応は凄く新鮮に感じました。

 

退役軍人のウォルターはマジモンのキ〇ガイであり、何かにつけては戦争の話になぞらえ自分の主張を押し通し、最後にはキレるという本当にヤバい奴。

ジョン・グッドマンは流石の演技力で、鬼気迫るキチ〇イっぷりを披露してくれます。

デュードが主人公であるのならば、このウォルターは確実にヒロインなポジションになっており、むさ苦しいオヤジ2人のロマンスにも見えてきます。

前々から好きな俳優ではありましたが、本作を観てからまた一段と評価が上がり、久しぶりに好きな俳優の序列が変わりそうです。

 

後はオマケですが、前衛芸術家が性的倒錯者だったり、ジーザスというちょいキャラが小児性愛者で露出狂というのも凄い脚本ですよね。

一歩間違えればヤバい人を怒らせそうな下らない演出に、賛辞を贈りたいと思います。

 




 

 

まとめ

アメリカでは深夜に観る映画の定番と言われているそうですが、このいかにもサブカル風な作風は好みが分かれそうなところではあります。

最初に述べたように、正直そこまで響く要素はなかったものの、また観たくなる不思議な作品でもあります。

90年代のロサンゼルス、酒、音楽、ハッパなどなど、あらゆる文化背景が上手い具合に融合した、極めて繊細なバランスの上に成り立った稀有な映画ですな。

 

個人的にはそこまででしたが、ハマる人の気持ちは十分に理解できます。

オススメとは言いませんが(多分)傑作です。

 

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。


 



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