(原題:Blade Runner 2049)
2017年/アメリカ
上映時間:163分
監督:ドゥニ・ヴィルヌーブ
キャスト:ライアン・ゴズリング/ハリソン・フォード/アナ・デ・アルマス/シルヴィア・フークス/ロビン・ライト/他
1982年に公開された「ブレードランナー」の続編となるSFサスペンス。
製作総指揮には生みの親であるリドリー・スコットも参加し、アカデミー賞をはじめ数々の賞に輝きました。
前作の主人公・デッカードを演じたハリソン・フォードが35年ぶりに出演するということで、当時は話題を呼んでいたと記憶しております。
酷評から始まった映画が待望の続編として公開されるなど、興行的な映画の価値観というのは難しいものですね。
マニア的には歓喜に湧き上がるような作品だとも言えますし、実際に映画評論家の間では極めて高い評価を得たようです。
それでも興行的には地味に伸び悩んだりと、芸術とエンタメの匙加減に首を捻る今日この頃ですな。
さっくりあらすじ
2049年、地球の異常気象はより深刻になり、ロサンゼルスの沿岸部は無くなり巨大な防波堤に囲まれるようになった。
ロス市警で「ブレードランナー」として任務に就いている”K”はロス郊外の農場へと足を運び、逃亡中のレプリカントを始末した後、庭先でトランクを発見する。
中に入っていた遺骨を分析した結果、帝王切開の合併症で30年前に亡くなった女性だと分かり、さらに遺骨に刻まれた製造番号により、レプリカントであったことが判明した。
レプリカントが出産することはあり得ないことであり、警部補のジョシは社会の混乱を危惧し、Kに秘密裏に事件を処理するよう命令するのだが、、、
ブレードランナー・K
同僚からは「人間もどき」と呼ばれる
前作の主人公・デッカード
秘密を抱えている
ウォレス社のAI・ジョイ
献身的で可愛い
譲れない哲学性
そもそも公開時には酷評された前作「ブレードランナー」ですが、哲学性や神秘性すら感じさせる謎を追い求め、現在では傑作と呼ばれている作品です。
時間をおいて何度も繰り返し鑑賞することで見えてくる新たな要素、比喩や暗喩、その奥深さこそが最大の持ち味と言って良いでしょう。
そんな傑作に対しての本作では、やはり期待値が高いが故に不満も出てくるというもので。
前作が公開されてから35年もの月日が流れているにも関わらず、あまり進歩の無い暗愚な作りが引っかかります。
1982年に公開された前作はその難解さと特異な映像が後に評価されましたが、本作は悪い意味でそれを追っかけている感じ。
最新の映像を用いた世界観の構築に時間をかけ、でも終わってみれば大した盛り上がりもなく、ただただ無駄に長い映画だと言う印象です。
総じてアクションは控えめであり、それに対して哲学性も薄めな印象であり、訴えかけてくる”本物”がありません。
演出された農場や都会の雑踏、廃墟に至るまで全てが良く出来ていると思う反面、どこか綺麗すぎて重厚さが無いんですよね。
前作の流れを現代の技術でアレンジした無難な演出だとも受け取れますが、ある程度ハッキリと絞られたテーマの割には深みが無く、脚本に奥行きを感じないわけで。
尺が長いことを除けばそれなりに観れる内容ではありますが、逆に独特のクセも無くなった気もしますし、どうにもモヤモヤする微妙な判定になりますね。
ただし、映像だけに限れば”未来”を描いた作品が多数公開される現代なので、そういったSFな演出に僕らが馴れてしまったことも考慮しておくべきかと。
そんな中で一際の輝きを放つのが主人公・Kを演じるライアン・ゴズリング。
寡黙で悩める人物を演じさせたら、近年ではピカイチじゃないですかね。
Kという不憫なレプリカントというキャラクターを通して、描かれる悲惨な境遇や出自から来るストレスや切なさを表現する役者として、彼以上の適任者はいないかもしれません。
カルト的な人気を誇る作品の続編、ましてその作品の主人公ともなればかなりの重圧が容易に想像できますが、なかなかどうして堂々たる存在感です。
降りしきる雪の中で、何かを想い横たわっていくKの姿は切なく、美しく、非常に強い印象を残す名シーンだと思いますよ。
まとめ
全体的に7:3で不満が勝りますが、ヴィルニーヴ監督を以てしても恐らくコレが限界でしょう。
むしろ他の監督が撮っていたらもっと悲惨な結果になっていたかもしれません。
世界中のニッチな映画ファンに愛される作品の続編として、あまりに高いハードルを考えれば及第点な完成度ではないでしょうか。
どう見ても大成功とは言えない気がしますが、かといって決して失敗した作品でもありません。
それ故にモヤモヤしますが、個人的には十分に観るに値する作品だと思います。
とにかく長く、また抽象的・哲学的な映画です。
よければ一度ご鑑賞くださいませ。