(原題:Collateral Beauty)
2016年/アメリカ
上映時間:97分
監督:デヴィッド・フランケル
キャスト:ウィル・スミス/エドワード・ノートン/キーラ・ナイトレイ/マイケル・ペーニャ/ナオミ・ハリス/ケイト・ウィンスレット/他
成功した広告会社の社長が娘を亡くしたことで自暴自棄となり、傾いた会社を立て直すために策を練る部下達を描くドラマ映画。
「マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと」や「プラダを着た悪魔」などを手掛けたデヴィッド・フランケルが監督を務めます。
主演のウィル・スミスをはじめ、エドワード・ノートンやキーラ・ナイトレイ、ヘレン・ミレンにケイト・ウィンスレットなどなど、主演クラスの俳優が目白押し。
にも関わらず興行的には伸び悩み、あまり評価もされなかったようで、日本でもいまいち話題にならなかったような気がします。
決して退屈な作品ではないですが、個人的にも微妙に記憶に残りづらい、何とも言い難い仕上がりだった気がします。
さっくりあらすじ
ハワードは敏腕広告マンとして、親友のホイットと共同経営している会社の業績を著しく伸ばしていたが、娘を失った悲しみに暮れ、仕事に手をつけない日々が続いていた。
ホイットをはじめ、同僚のクレアとサイモンも業績悪化で傾いた会社に心配が尽きず、ハワードの不審な行動を記録するために探偵を雇うことに。
ハワードがポストに投函した手紙を回収した探偵によると、手紙は「愛」「時間」「死」に宛てたものであることが判明し、ホイットは会社を救うアイデアを思いつくのだが、、、
ひたすらドミノに没頭する
口を閉ざし、喋らなくなる
困った同僚たちは策を練るが、、
「概念」と「人生」
勢いのある広告会社の経営者にして筆頭株主・ハワードが娘を亡くし、人生の意味を見失い、最高責任者の立場を忘れ自暴自棄になっているところから物語は始まります。
感傷に浸っているハワードを横目に、共同経営者であり親友でもあるホイットをはじめ、側近たちが会社の存続のために裏で動き回るのが作品の中心と言っても良いでしょう。
落ち込んでいるハワードを心配しつつも、心神喪失で経営者に不適格という証拠を掴むために策を講じる側近たちの姿には何とも苦笑いですな。
個人的には「有能なハワードを復活させる」のは後回しにして、「ハワード抜きでも安定した会社を作る」のが先じゃないかとも思うんですけどね。
心の病だけに無神経なことは言いづらいとは思いますが、会社で仕事をする全ての従業員にそれぞれの人生があるわけで、経営者というのは全従業員の人生を預かっている身ですからねぇ。
ハワードの立場で考えれば、仕事ができるのならとりあえず会社を立て直してから引き篭もれば良いし、側近達は会社を立て直してからハワードの面倒を見れば良いし。
これは会社の規模の大小に関わらず、経営者or責任者なら誰でも考えることのはずなんですけどね。。
ちょっと話が逸れましたが、かつて広告マンとして「人に物事を伝える上で大事なこと」と称して「愛」「時間」「死」の3つを訴えていたハワード。
ウィル・スミスの持ち前の演技力もあり「なるほどなぁ」と思わせる説得力を持ち、理想の上司のような佇まいは憧れすら感じますが、どこかに漂う宗教観。
何というかね、マルチ商法とかネズミ講とかの言い分に近いような気がしてね、新興宗教の教祖様が言い出しそうなことに見えてしまうんですよね。
そのくせ自分が娘を亡くしたらこうも自暴自棄になるんですからね、お前が講釈たれてた主張はどうしたんだと。
相棒のホイットもまた然り、自分の不義のせいで妻も娘も離れ、会社のためとはいえ真っ先にハワードを裏切った張本人ですよ。
それでもハワードには「友人として」と言い張り、娘には「父親として」と言い張る、どう見ても1番信用しちゃいけない人だよね。
むしろ仕事に忙殺されて子供が持てなかった側近とか、末期の病により余命の短い側近とか、そっちの方がよほど感情移入させるだけの説得力があったような気がします。
ちなみに原題の「コレテラル・ビューティー」ですが、個人的には解釈できず、和訳では「幸せのオマケ」とされています。
もう意味分からんね、大事な人が死んで悲しんでいるのに「幸せのオマケを見逃すな」とか言われたら普通に「アッチ行けよバカ野郎」とか言っちゃいそう。
何か深い意味があったっぽいんだけど、個人的には全く響かず。
3人の舞台俳優も人間だったのか、天使のような存在だったのかもハッキリせず、余韻を残したと言うよりは投げっぱなした印象ですね。
ただね、いかにも「優しい映画」っぽい作品ではあるので、こういう映画を楽しめないと自分の方がズレているのかなと心配になりますよね。
映画の内容を、素直に受け入れる純粋さが必要なのかもしれません。
ちなみに各俳優は良い仕事をしていますし、キャスティングには全く問題はありません。
脚本的にも退屈なものではないですが、やはり演出の方に少々首を傾げてしまうのも事実ですが。
まとめ
「3人の訪問者が主人公の人生を変える」というプロットで考えれば、往年の名作「クリスマス・キャロル」とか、個人的には「3人のゴースト」の方が面白かったかなと。
きっと良い映画なんだろうとは思いますが、何と言うか、ことごとく自分の”ツボ”に刺さらなかった感じ。
マッサージされて「そこじゃないんだよなぁ、、」の感じに近いですかね。
それでも大体の方はそれなりに感動できるのでしょうし、決して観て損するような映画ではありません。。
良ければ一度ご鑑賞くださいませ。