ドラゴン×マッハ


(原題:殺破狼2)
2015年/中国・香港
上映時間:120分
監督:ソイ・チェン
キャスト:トニー・ジャー/ウー・ジン/マックス・チャン/サイモン・ヤム/ルイス・クー/ロー・ワイコン/アンダ・クンティーラ・ヨードチャーン/他

 




 

タイと中国を舞台に、思いのほかドラマ性に溢れたアクション映画。

本作は原題の「殺破狼」を発音するアルファベットの頭文字を取って「SPL」シリーズの2作目となりますが、かなり重みのある意味が練られています。

具体的な話はWikiに任せるとして、その意味を知れば「ドラゴン×マッハ」とか邦題をつけた担当のセンスをガチで疑いますよ。

 

マッハ」のトニー・ジャーに加え「SPL/狼よ静かに死ね」でドニー・イェンとバチバチのアクションを繰り広げたウー・ジンのW主演となります。

カンフー・アクションならではの優美な動き、トニー・ジャーが繰り出すムエタイの直線的な動きはどちらも素晴らしく、また非常に贅沢で撮影の難しい長回しも極めて特徴的。

その上で描かれる、人の倫理観を揺さぶる展開は一見の価値ありです。

 

 

 

 

さっくりあらすじ

香港で臓器売買ビジネスを取り仕切る黒幕を追い、捜査官のチーキットは組織に潜入していたが正体がバレ、タイの刑務所へと収監されてしまう。

捜査の指揮を執るチャン刑事は甥でもあるチーキットの行方を探すが見つからず、臓器売買の拠点ともなっている刑務所の所長はチーキットに対し、強引に重い刑を課そうとしていた。

看守を務めるチャイは臓器移植が必要な娘のために非道な行いを見過ごしてはいるものの、ある事実を知ることでチーキットを救おうとするのだが、、、

 

 

 

 

捕らわれた潜入捜査官・チーキット
ウー・ジンの演技が素晴らしい

 

モラルに悩む看守・チャイ
トニー・ジャーの演技も素晴らしい

 

ラスボス・所長
超イケメン

 

 

 

 

 

問われる倫理

いやね、違法な臓器売買なんてもってのほかだしね、そんな組織となんか関わりたくもないのは当たり前なんだけどね。

「自分の大事な人、愛する人が助かるのであれば」という一縷の望みに目が眩み、なおかつ自分の手を汚すわけでもないので見て見ぬふりをする気持ちは理解できちゃうわけですよ。

コレが意外と考えさせられるお話でして、重ためな作風と相まって非常に倫理観を問われる仕上がりとなっております。

念のために言っておきますが、違法臓器移植、ダメ、絶対。

 

序盤に臓器のために人が誘拐されるシーンがありますが、結構ショッキングなのでお気をつけて。

グロではないかもだけど、妊婦さんとか犠牲になるので結構メンタルにきます。

 

 

そんなドラマ性を上手いこと繋げ、1つの物語に収束する流れが実に素晴らしく、作品の重みを損なうことなくアクションを演出できているのは凄いことですよ。

エンタメ性溢れるアクションと、感情豊かなドラマ性はなかなか両立しないですからね。

コレはソイ・チェン監督の手腕が光ります。

 

そして言わずもがな、トニー・ジャー&ウー・ジンのアクションは素晴らしいの一言。

序盤の暴れるチーキットvs取り押さえるチャイからもうエンジン全開、狭い密室での迫力溢れるアクションを始め、どれも目を離せない迫力に溢れています。

特に中盤の刑務所の大乱闘は目玉のひとつで、トニー・ジャーのお家芸とも言える長回しにウー・ジンまで参戦し、これは本当に圧巻の一言。

皆して当たり前かのように2階から落ちてきますし、この体の張りっぷりには頭が下がる思いです。

 

 

後は非情な刑務所長を演じるマックス・チャンがとにかくイケメン。

高級スーツを着こなす端正な顔立ちは絵になりますし、それでいてスマートなアクションをこなす姿は本当にカッコいいものです。

最終決戦となる所長vsチーキット&チャイの戦いも迫力満点で超面白いですし、今まで埋もれていたのが嘘のような堂々たる存在感です。

長らく裏方を務めた遅咲きな俳優ですが、今後の活躍にも期待したいところですな。

 

ついでに余命幾ばくも無い少女・サーを演じるアンダ・クンティーラ・ヨードチャーンちゃん(長い)が超絶可愛いです。

年相応に無邪気ながらも、悲哀を感じさせる雰囲気を纏う姿はまさに女優そのもの。

どこの国でも昨今の子役の演技力は凄まじいものだと感心させられます。

本当に可愛らしい子でね、この愛らしさこそが我々の倫理観をグラつかせる最大の要因となるわけで、重大な決断を迫られるトニー・ジャーの演技にも改めて注目です。

 




 

 

まとめ

超人的アクションだけではなく、背景になるドラマ性に秀でた良作だと思います。

何の予備知識も無かったもので「思てたんと違う」感は否めませんでしたが、それを差し引いても実に印象深い映画でした。

 

潜入捜査官と刑務官という2つの点を描き、やがて繋がり線となり、最終的に絵が完成していくような構成も見事ですし。

目を背けたくなるような演出が玉に瑕ですが、胸を撫でおろすようなエンディングも感動しますし、トータルでは文句のつけようも無いっすね。

 

オススメです。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。



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