1994~1999
作者:望月峰太郎
週刊ヤングマガジン(講談社)
全10巻
中学生の時に流行ったんだよなぁー。。
修学旅行帰りの少年少女が乗る新幹線が謎の事故を起こし、闇に包まれたトンネル内でのサバイバルから始まるミステリアスな物語。
当時は今ほどインターネットも普及していなかったため、いわゆるネタバレが起きづらい時代だったと記憶しております。
筆者は千葉県出身なものであまり天災に見舞われることなく育ってきたのですが、現実にはありえないだろうと達観しつつも、もし大地震や火山の噴火が身近で起きた際に人間はどうなるのか?
極限からの脱出に独自のミステリー要素を加え、人間の狂気、ややカルト的な描写が当時の中学生の心をわし掴みにしたものです。
ただ作者が語るように「恐怖」にフォーカスした作品なので、張ってきた伏線を回収するでもなく、謎は謎のままに。
面白い漫画だとは思いますが、読んでもスッキリはしませんよ。
さっくりあらすじ
修学旅行の帰り、新幹線がトンネルに差し掛かるあたりでテルが窓を見上げると巨大な火柱が上がるのを目撃する。
直後に怒った大地震、新幹線は脱線し車内は悲鳴の渦に巻き込まれる。
運良く生き残ったテル、アコ、ノブオの3人だがトンネルは崩落し外に出る手段が見当たらない。
水とお菓子で空腹を紛らわしながら、どうにか脱出路を探す3人。
しかし闇に囲まれた環境に、少しずつノブオの言動が狂い始めるのだが、、、
ノブオ君
色々な意味でイっちゃってます
哲学的なミステリー
というわけで天変地異からのサバイバルで幕を開ける本作ですが、人間の内面に宿る「恐怖」の源泉を描くことにフォーカスしております。
人間の闇や狂気を描くというよりは、闇と狂気の源はどこからくるのか?に集中しているような印象。
全体的にゾクゾク不気味な描写や表現は多いものの、登場人物たちの心理描写に?となってしまうような、微妙に理解できないようなところもある気がします。
まぁ絶体絶命状態の人の心理なんて、日和見な毎日を送る僕らが理解できるわけないんですがね。
特筆すべきは最初に狂ったノブオ君。
気が小さく内向的だった彼が闇に魅入られ、闇に堕ちていく様はなんとも恐ろしく、独特のボディペイントも手伝ってインパクトの塊のような存在に。
強者に虐げられていた人間が解放され、ものすごく小さいヒエラルキーの頂点に立とうとする彼の気持ちは知る術もありません。
何としても生き残ろうとするのではなく、好きに振る舞って闇と共に死ぬ、狂気に憑りつかれた人間の究極系ですね。
本作が表す究極の恐怖とは端的に言うと「想像力」、つまり脳が生み出す幻想ということになります。
ロボトミー手術で恐怖を感じないようになるという描写もありますが、それはつまり脳が恐怖を生み出すという証拠にもなるわけです。
闇に恐怖を見出したノブオ君もまたしかり、何も無いところに何かを感じるのが人間てもので、恐怖=暗闇=想像力という方程式が本作を読む上での基本ですね。
災害の原因に始まり、龍脈の存在やオカルト的な表現など色々と情報が交錯し、やや難解な漫画ではあります。
ついでにエピソードの顛末をハッキリと描かないところで賛否あるようですが、それも読者の想像力を掻き立てるために狙ったのではと感じます。
まとめ
中盤までは非常に面白いと太鼓判を押します。
後半にかけては賛否あるので何とも言えませんが、個人的には十分楽しめる作品だったと言っておきます。
大地震に津波に火山噴火など、現実に残酷な自然災害が多発している現代では連載できなかったであろう本作。
物語の本質を掴むのは難しい漫画ではありますが、それに伴う魅力があるのも確かです。
ぜひ一度ご閲読くださいませ。