ヘッド・ショット


(原題:Head Shot)
2016年/インドネシア
上映時間:118分
監督:ティモ・ジャヤント/キモ・スタンボエル
(モー・ブラザーズ)
キャスト:イコ・ウワイス/チェルシー・イスラン/サニー・パン/ジュリー・エステル/他

 




 

インドネシア発、ドラマ性が強めなバイオレンス・アクション。

 

「ザ・レイド」でのシラットを活用したアクションに魅了され、すっかりイコ・ウワイスの虜になってしまった筆者。

トロント国際映画祭やシッチェス国際映画祭など、個人的に信用できる映画祭で絶賛されたそうで、インドネシアでは相当な観客動員を記録したんだとか。

ザ・レイド」では閉鎖的な空間でのサバイバルをテーマに、純度100%のアクションを披露してくれましたが、今回は罪を背負う男が愛する人を守るという、王道な物語となっております。

 

2億5千万任を超え、実に世界4位(2017年時)の人口を誇るインドネシア。

日本企業も続々と投資し始め、経済成長が著しい発展途上国として、これからの映画産業にも期待が膨らみますな。

 

 

 

 

さっくりあらすじ

海岸沿いで意識不明の男性が発見され、2か月に渡る入院の末に男は意識を取り戻した。

担当女医・アイリンの治療もあり回復していく男だったが、自分の名前すら思い出せない記憶喪失になっており、アイリンには”イシュマエル”と呼ばれることに。

アイリンとイシュマエルは戻らない記憶に不安を覚えながらも、治療を通し徐々に惹かれ合っていく。

そんな折、巨大犯罪組織を率いるリーは、殺したはずの男が生きているとの情報を得る。

真偽をハッキリとさせるため、リーは病院に刺客を送り込むのだが、、、

 

 

 

 

アイリンとイシュマエル
超速でラブラブに

 

”地獄の父”ことリー
武闘派組織の親玉

 

インドネシアン・アクションの特徴
痛い・エグい・不死身

 

 

 

 

 

素材が死んでる

インドネシアの映画は先述した「ザ・レイド」くらいしか観たことがありません。

それ故に初めて目にした時の衝撃は計り知れないものであり、単純なアクション映画で感動を覚えたのは本当に久しぶりでした。

 

しかし本作に限っては2度目のインドネシア映画ということで、ハードルを上げ過ぎた感も否めませんが、トータルで言えば極めて微妙だったとしか言えません。

決してつまらないとは思いませんが、目に余る稚拙な演出と、ないがしろにされた脚本と、全く素材が活きていないアクション・スタントと、どれを取っても残念な仕上がりですな。

あまりにも見過ごせないツッコミどころの数々に、アクション映画だとわかっていても失笑の絶えない不思議な印象です。

 

 

物語としては記憶喪失で身元不明な主人公が、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる女医を助けるために戦うというシンプルなもの。

これ自体は問題無いんですが、いかんせん展開が早すぎて違和感が凄いですな。

 

何せ2か月も意識不明だったにも関わらず、他の患者を診るわけでもなく主人公・イシュマエルの個室に入り浸る女医・アイリンの存在自体が疑問です。

明らかに医者の範疇を超え、何の疑問も無しにイシュマエルに対して好意を抱く脈絡の無さにただただビックリです( ゚д゚)

 

そしてアイリンが誘拐され、彼女を取り戻すためにイシュマエルが立ち上がるのが作品の本筋になりますが、こっちは逆に演出過剰でドン引きです。

何せ女性1人を誘拐するためにバスの乗員を皆殺しですからね。

これはもう犯罪組織なんて可愛らしいものではなく、立派なテロリストでしょ。

 

むしろ大規模な犯罪組織が行うにしては、あまりにも稚拙な犯罪過ぎて、怖いという感情よりも先に呆れる気持ちが強いですかね。

ついでに警察組織のおバカ&無能っぷりも目につきますし、いくら途上国の警察組織でも、ここまでバカではないだろうと。

プロットの中心はシンプルで良いとしても、それを肉付けする脚本に欠けている部分が多すぎるんです。

 

 

そして、そんな無茶な脚本を挽回するべく演出されるアクションも個人的には不満点。

理由はもう至って簡単で、カメラがブレ過ぎ

 

アクション畑じゃない俳優がアクションに挑む際によく使われる”手ブレ”演出ですが、イコ・ウワイスのような本格派には必要の無いものであり、むしろ使わないでほしい。

せっかくの優美で迫力ある武術が観づらいという致命的な欠陥は、これはもうアカン。

やたらと意味の無い上方視点からの演出も多いし、どうやったら俳優とアクションの素材が活きるのかを本当に考えたのかと聞いてみたいくらい。

 

スタントの完成度によっては、どれだけ大雑把な物語でも大目に見れるものですが、これも微妙となるとねぇ。

ここまで来ると嫌な部分ばかりが目に入るようになっちゃいまして、インドネシア映画特有の不死身な敵の数々も、アクション自体が面白くないから苦行に近い退屈な時間でした。

ついでに言えばとばっちりで誘拐された女医はまだしも、更なるとばっちりで親を殺された挙句に誘拐された少女の存在が痛々しい程に気の毒です。

あの子がいる限り、どう言い繕ってもハッピーエンドにはならんでしょ。

 




 

まとめ

期待値が高すぎたが故に辛口な意見になってしまいましたが、そもそもアクション映画にツッコむ時点で間違った感想なので、ズレてる自覚はありますよ。

ある意味でコメディ的な捉え方もできるのかもしれませんが、いかんせん(唯一)良く出来たメイクの数々が生む痛そうな傷跡が、そんな雰囲気にもしてくれません。

 

著名で実力ある俳優を使い、またそれに頼り切った結果、ダメになる見本のような仕上がりだと思います。

またキャスティングに味があり、主要な登場人物に個性と魅力があるから余計にもどかしくなるんですよね。

 

駄作ではありませんが、オススメはできないかな。

よければ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 



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