(原題:Jersey Boys)
2014年/アメリカ
上映時間:134分
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ジョン・ローガン
キャスト:ジョン・ロイド・ヤング/エリック・バーゲン/マイケル・ロメンダ/ヴィンセント・ピアッツァ/クリストファー・ウォーケン/レネー・マリーノ/キャサリン・ナルドゥッチ/フレイヤ・ティングレイ/他
85歳ながら、精力的に映画製作を続ける巨匠クリント・イーストウッド監督による、伝記ミュージカル映画です。
個人的には当たりはずれがやや大きい(といよりこだわりが強すぎて商業的でない)監督だと思っています。
適材適所を正確にこなすキャスティングは他の追随を許さず、必要な俳優を必要なところに置ける数少ない監督の一人です。
ざっくり言えば“映画を良く分かってらっしゃる”ということです。
日本では舞台という文化にあまり馴染みが無いと思います。
小劇団の舞台はともかく、劇団四季ですら観に行ったことない方も多いんじゃないですかね?
余談ですが筆者は昨年末に始めて劇団四季を観に行ってきましたが、かなり面白かったし感動しましたよ。
演目はサウンド・オブ・ミュージックでしたが、演者さんの歌唱力を目の当たりにしてメチャクチャ感動しました。
もちろん映画よりもずっと割高な料金でしたけれども、全然”高い!”とは思いませんでしたよ。
個人的には2ヶ月に一回くらいなら「アリ」だと思います。
で、ただでさえミュージカル調な映画というのは人を選ぶもので、とっつきづらい印象が拭えないものです。
イーストウッド監督はそこで、製作においての決断をします。
ミュージカル的な演出はやや控えめに、ドラマ的な演出をやや多めにすることで映画としてのハードルを下げたのだろうという意図が見えるんですな。
シリアスなドラマシーンから、音楽を交えた歌唱シーンへの自然な切り替わり。
登場人物がカメラ越しにこちらへ話しかけてくる懐かしさを感じる演出など。
作品の流れの中に、起伏のある構成に飽きさせない工夫を感じます。
さっくりあらすじ
貧しいイタリア移民が集まるニュージャージー州、ペルヴィル。
16歳のフランキーは類稀なる声の才能を持っているものの、ペルヴィルにいる限り歌手としての成功は望めなかった。
せこい犯罪を繰り返しながら、プロのミュージシャンを目指す兄貴分のニックとトミーのバンド仲間になるフランキー。
彼らは「フォー・ラバーズ」として活動を開始するも、全く売れることがない。
数年後、作詞・作曲を手がけるボブと出会い四人は「フォー・シーズンズ」と改め活動を開始。
その後に発表した「シェリー」が大ヒットし、その後もヒット曲を連発しスターへの階段を上って行く。
成功を手にしたフォー・シーズンズだが、華やかな姿と裏腹に四人の歯車は狂い始めていく、、
同じ方向へと進んでいた4人
いつしか諍いも増えていく
実際はめっちゃ仲良さそうだね
本物のカメレオン俳優
クリストファー・ ウォーケン
ドラマと舞台演劇
実はミュージカル映画というものに苦手意識があるんですよ。
ただでさえ現実と虚構を織り混ぜる映画というコンテンツに、ミュージカル補正が入ると少しくどいかなぁと感じてしまうんですね。
明るい雰囲気に終始するストーリーならともかく、人間の本質や内面を描くような本格派の作品には相性が悪い気がします。
映画とミュージカル。
どちらもエンターテイメントではありますが、あくまで似て非なるものです。
完璧に噛み合う内容にするのは至難の業です。
数々のドラマを描きヒット作を連発するイーストウッド監督を以ってしても、その感覚は拭えませんでした。
とはいえ、あくまで好きなだけで映画偏差値の低い人間の戯言なので、作品としての価値は素晴らしいのは分かってますよ。
音楽で成り上がるために、もがく若者たちの青春ドラマがテーマとなります。
華やかな成功の陰にある苦悩や挫折を描く王道ストーリーに、懐かしの名曲を軸に織り成す演出は実に興味深く、面白いところではあります。
まとめ
深い人間性の交差をドラマに仕立ててあるので、普通に作っても十分面白い作品になったと思います。
繰り返しになりますが、ミュージカル調にする意味があまり感じられないのが本音ですかね。。
でも実際にミュージカル大好きな方もいますしね。
このへんは個人の趣味の問題で、映画としては誰が観てもそれなりに楽しめる内容でしょう。
劇中のフォー・シーズンズの演奏は吹き替えではなく、奏でられる楽曲の数々は全て本当に演奏されているそうです。
サントラも含め、往年のファンの方にはたまらないんじゃないでしょうか?
ビートルズよりも以前に、音楽業界を席巻していたフォー・シーズンズ。
数々の名曲を残し、名前は知らなくても聞いた事のある曲は多いはずです。
近代ミュージックシーンの元祖の姿を観てみるのも良いのではないでしょうか?
良ければ一度ご鑑賞くださいませ。