(原題:一個人的武林)
2014年/香港・中国
上映時間:100分
監督:テディ・チャン
キャスト:ドニー・イェン/ワン・バオチャン/チャーリー・ヤン/ミシェル・バイ/アレックス・フォン/ルイス・ファン/他
久しぶりに、ゴリゴリの本格カンフー・アクション。
かつては香港を代表するアクション製作会社だったゴールデン・ハーベストの面々や、それに由来する各方面の著名人がカメオ出演したことで少々話題となりました。
徐々に衰退していくカンフー映画界での、ある種の節目と言っても良いのかもしれません。
主演を務めるは「イップマン」シリーズが大ヒットし、アクションだけに限らず演技力も高い評価を受けているドニー・イェン。
それ故に、極めて完成度の高いアクションもさることながら、滋味深い演技にも注目です。
さっくりあらすじ
高名な武術家であり、警察学校の教官も務めていたハーハウは他流試合で相手を殺してしまい、刑務所へと収監される。
服役中のある日、武術の達人が撲殺された事件をニュースで目にしたハーハウは、事件の指揮を執るロク警部に面会するために乱闘騒ぎを起こした。
3年もの間を模範囚として過ごしたハーハウに興味を持ったロク警部は、ハーハウと面会した際に今後も武術家の犠牲者が出ること、事件解決の為に自分を釈放することを伝えられる。
釈放の要求を却下したロク警部だったが、彼の言うとおりに2人目の犠牲者が発見され、ハーハウを仮釈放し協力させるのだが、、、
ハーハウ・モウ
元・警察教官で武術の達人
フォン・ユィシウ
よく分からんけど、マジキチ
ハーハウの師匠の娘シン・イン
死亡フラグの塊
現代に蘇るニッチなテイスト
香港アクションといえば「武侠」系なカンフー・アクションが定番ですが、まさにそのド真ん中をいく硬派な作品です。
現代風な味付けにはなっているものの、武術を極めた同士がその拳で対峙し、生き残るは1人だけというストイックな内容は今時では珍しいかもしれませんね。
物語としては謎の男による武術家狩りが判明し、それを食い止めようとする武術の達人・ハーハウと、殺人事件の犯人として逮捕しようと奔走するロク警部が中心となります。
武侠的なカンフー・アクションが作品としての土台となりますが、刑事モノとしてのサスペンス風なエッセンスが加わるわけですね。
ただ、大筋としてどういった展開にしたいのかは分かりやすくて良いのですが、そこに至るまでの過程が斜め上過ぎて少々理解に苦しみます。
登場人物の掘り下げも決して十分とは言えず、説明不足な部分も少なからずあるので、かなり考察の余地が残っているわけですな。
サスペンスとしてはそれでも良いのですが、カンフー・アクション主体の映画だとすれば作りの雑さが気になります。
まずはアクションありきで、設定や脚本は後付けになったのかもしれませんね。
ドニー・イェンの演技やアクションは圧巻で、これだけでも十分に観るに値します。
この鋭さ、速さ、重さ、どれを取っても素晴らしい迫力であり、それに伴った演出もなかなかのものです。
リアルファイトでも超強いんだろう、そう思わせるだけの十分な説得力がありますね。
その対戦相手となる連続殺人犯のフォン、それを演じるワン・バオチャンもかなりの好演。
意味不明な理屈で武術家をぬっ殺してく彼もまた武術の達人なわけですが、その不気味さ、異常さ、どちらも狂気に溢れ恐ろしいまでの存在感です。
作中ではあまり目立ちませんが、実際は161cmとかなり小柄ながらも、ドニー・イェンにも全く引けを取らないアクションはこれまた圧巻です。
ジェット・リーに憧れて嵩山少林寺で6年も修行を重ねた本格派なアクション俳優ながら、その多彩な演技力も高い評価を受けているようで、それも納得の素晴らしい演技です。
ただ素晴らしい演技ゆえに、作中で描かれるマジキチっぷりが際立つわけで、狂気の塊のような姿は何とも受け入れがたいものではありますが。
あとは中国拳法に於いての豆知識がチラホラと。
拳・蹴・擒拿(きんな:関節技)・武器・外功・内功というジャンルに別れ、それぞれの戦い方が非常に分かりやすく描かれます。
マーシャルアーツや軍隊格闘技がアクション演出の中心となっている昨今で、ここまで硬派に中国武術を貫く作品は珍しいと思います。
端々にカンフー映画、並びに香港アクション映画への回帰とリスペクトが見えますね。
まとめ
脚本的には微妙なサスペンス要素と、ゴリッゴリなカンフー・アクションと、トータルで見ると及第点な出来といったところ。
犯人を追いかける追跡劇だと思うと内容は薄いのですが、それを補って余りあるアクションの数々は非常に素晴らしく、満足できる仕上がりだと思います。
ちょっと玄人向けな作品ではありますが、ジャッキー映画以外で、本格派のカンフーに触れる良い機会だとも思います。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。