(原題:Memento)
2000年/アメリカ
上映時間:113分
監督:クリストファー・ノーラン
キャスト:ガイ・ピアース/キャリー=アン・モス/ジョー・パントリアーノ/マーク・ブーン・Jr/ジョージャ・フォックス/スティーブン・トボロウスキー/他
一見しただけでは理解できなかったり、何通りもの解釈ができるような映画というものは少なからずあるものですが、そういった難解な映画の代表的な作品です。
物語のラストシーンから始まり、時間軸を逆行して冒頭に終わる。
作品のインパクトを狙って中盤に入るシーンを頭に持ってくる作品はよくありますが、1から10まで逆さにした演出は極めて珍しいものです。
冒頭のシーンで結末を知った上で答え合わせをしていくかのように遡っていくわけですが、真実と虚構が入り混じった主人公の記憶は非常に曖昧なものであり、観ている側の人間も素直に受け入れることが難しくなっていきます。
それ故に解釈が分かれやすい作品でもありますが、「インセプション」然り、全く新しい表現方法を作り出すクリストファー・ノーラン監督はやはり天才と言うほかにないでしょう。
凡人がついていくのは大変なんですけどね。。
さっくりあらすじ
妻を強姦された挙句に殺害された男レナードは犯人の一人を射殺するも、もう一人の犯人に突き飛ばされた時の怪我により、10分しか記憶を保てない健忘症になってしまう。
復讐のためメモやカメラを用意し、大事なことは自らの体にタトゥーとして残していくレナード。
「犯人探しを手伝う」レナードに付きまとう謎の警官テディ、何か事情を知っている謎の女性ナタリー。
それぞれの思惑が交錯し、犯人の後を追うレナードだが、、、
大事な情報は刺青として残す
でも10分経つと何をしていたか
忘れてしまう
「主観」と「客観」
ストーリーを細かくぶつ切りにして、各セクションの終点を見てからシーンが遡っていきます。
この最後→最初→中間といった物語の流れがもどかしく、ネタばらしの爽快感というよりは知っていたことを「思い出す」ような錯覚を感じます。
主人公レナードが感じていることをそのままに、ある種の疑似体験をしながら物語の真相を追っていくわけです。
なので開始30~40分は正直意味が分かりません。
「あぁ、とりあえず忘れっぽい人が嫁さんの復讐を企んでいるんだな」程度が理解の限界かと。
3歩進んで2歩下がる映画なので、集中して観るとすごく疲れる作品でもあります。
レナードは10分しか記憶を保てないため、メモや写真、タトゥー以外の情報は全て忘れてしまうわけですが、犯人像を追う過程で観ている側の僕らの記憶は無くなりません。
現在のレナードの話はカラーで、過去のレナードの回想はモノクロで表現されていますが、この「レナード」本人の話を聞いてくるとあやふやになってくる彼の人格。
話が進むにつれ、レナードが掴む「真実」と客観的に我々が得る「真実」にギャップが生まれ始め、結果的に登場人物全員が怪しく見えてくるわけですな。
この主観と客観のズレを利用した演出は本当に見事で、まさに衝撃の結末としか言いようの無い演出。
映画のアクセントとしてのどんでん返しというよりは、映画そのものがどんでん返し。
監督を務めた兄クリストファー、脚本・原案を書いた弟ジョナサン、この兄弟はマジで頭おかしいっす(褒め言葉)
最近では「プロメテウス」や「アイアンマン3」などに出演しているガイ・ピアース氏。
この何とも絶妙な抜けっぷり、確固たる復讐心で犯人を追うけれども記憶ができないという非常に難しそうな男を完璧に演じきっています。
異常と正常の間を綱渡りのように行き来する姿はインパクト十分、ちょっと危ないナイスミドルとしての存在感は素晴らしいですね。
まとめ
「えぇー、、、(・д・)」
↑
まさにこんな感じの結末。
面白いとは思いますが、人を選ぶ作品だとも思います。
大事なものを無くした人間が、心の隙間を埋めるために夢中になること。
名誉や欲、財産を得るために生まれる因果と応報。
サスペンスやミステリーはもちろんのこと、終わってみれば何故か悲しいヒューマンドラマを観たような不思議な後味の残る作品です。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。