Red Cliff Part1
2008年/中国/香港/日本/韓国/台湾
上映時間:145分
監督:ジョン・ウー
キャスト:トニー・レオン/チャン・チェン/金城武/チャン・フォンイー/ヴィッキー・チャオ/中村獅童/フー・ジュン/ヨウ・ヨン/他
説明不要なほどに有名な歴史小説「三国志演義」を元にした、アクション活劇。
三国時代(西暦184年~280年)の官僚・陳寿が書いたとされる「三国志」ですが、講談師によって後世に伝えられるにつれ、歴史は形を変え、「王族の血を引く正義」と「王朝を支配した悪」との争いにフォーカスされております。
ざっくり言えば、
「三国志」→歴史書
「三国志演義」→エンターテイメント歴史小説
だと思えば大体合ってると思います。
その中でも三国時代の幕開けとなる「赤壁の戦い」を描いた作品であり、中国の歴史的にも色々と転機となった208年頃の物語です。
「中国映画史上最大の投資」と揶揄されるほどに潤沢な資金を投入し、撮影された大規模な合戦シーンは素晴らしい大迫力。
内容はともかく中国大陸と、それを手中に収めようとした男たちの夢は壮大の一言ですな。
さっくりあらすじ
漢の丞相・曹操は中国北部を平定し、天下統一のため南部制圧の準備に取り掛かる。
漢王朝の血を引く劉備は長坂の戦いにて曹操軍に敗れ、諸葛亮の提案もあり孫権と同盟を結ぶために南下。
孫権軍の最高司令官である周瑜と諸葛亮は意気投合し、二大勢力は曹操に対抗するために同盟を結ぶ。
数万の軍勢を連れ周瑜は長江の赤壁近くに布陣、大軍を引き連れ南下してくる曹操を倒すため、水路と陸路、共に兵を動かすのだが、、、
中原の覇者・曹操
呉の若き君主・孫権
呉軍の司令官・周瑜
映画は周瑜の物語
2分で分かる三国志
好きな人はとことんハマり、興味が無い人は全くもって興味を持たない「三国志」という物語。
まずは映画の前に超ざっくり説明させていただきます。
西暦184年、14代皇帝(霊帝)の政治は汚職だらけ。
そんな世の中を背景に、皇后の親族と皇帝の使用人の間で権力争いが勃発。
宗教家の張角は漢を滅ぼし、自ら皇帝になることで世の中を良くしたいと考え、信者を焚きつけて農民一揆を起こす。
皇室は権力争いを中断し、張角を倒すために軍を編成、大将軍は元お肉屋さんの何進(霊帝の正妻の兄)
名家出身の袁紹・金持ちのドラ息子の曹操・堅実に出世する孫堅が台頭し、特に曹操は張角率いる黄布党をフルボッコにする。
189年~192年
霊帝が崩御し、何進の後ろ盾で息子の劉弁が少帝として即位。
北方でブイブイいわせていた董卓が洛陽に入城、少帝を廃し劉弁の弟・劉協を献帝として即位させ、自身も相国(実質の最高権力者)になる。
董卓の暴虐っぷりにキレた袁紹を中心に反董卓連合が結成。
反董卓として大活躍していた孫堅が戦死。
追い詰められた董卓は洛陽に火を放ち、お隣の長安へ引っ越すものの、腹心だった呂布の裏切りで死亡。
194年~198年
劉備が病死した地方の責任者に代わり、大規模な土地を手に入れる。
南方で孫堅の息子・孫策がもの凄い勢いで台頭。
劉備は袁術(自称皇帝)に敗れ、さらに呂布にも敗れ、曹操の元で世話になる。
曹操が董卓亡き後の洛陽へ入城、献帝を保護しお隣の許昌に身柄を移す。
曹操の軍勢に追い詰められた呂布軍はお城に引きこもり防御態勢、でも水攻めに遭い敗北し、呂布は処刑される。
199年~207年
当時最強の軍を誇った袁紹vs曹操の争いが本格化。
ここぞとばかりに劉備が曹操に反旗を翻すもあっさり曹操軍に敗れ、袁紹の元へと身を寄せる。
曹操が総力戦の末に袁紹を撃破(官渡の戦い=三国志史上最大規模の戦争)、またも劉備は敗走し、劉表の元へと身を寄せる。
ついでに曹操は北方民族も撃破し、中国大陸の北半分を手中に収めノリノリに、準備を整え南への進軍を開始、標的は劉表(with劉備)
刺客により孫策が死亡、弟の孫権が跡継ぎになる。
208年
劉表が病死、後継者争いが勃発し、息子が勝手に曹操に降伏。
劉備は再び曹操軍と闘うも敗走、腹心の諸葛亮を派遣し南の孫権との同盟を狙う←映画はココ!!
三国志スペクタクル
といわけで前置きが長くなりましたが、三国志マニア及び、三国無双マニアにはたまらない長坂の戦い(劉備vs曹操)から映画は始まります。
というか”長坂の戦い~赤壁の戦い”の直前までがPart1となるので、実際に赤壁の火蓋が切って落とされるのはPart2ということになります。
つまり本編の前フリが一本の映画になっているということですな。
劇中で描かれる80万(諸説あり)の軍勢に追いかけ回される劉備軍の面々ですが、まぁ関羽・張飛・趙雲が強いのなんのって。
実写版三国無双の如く、全体的に人間離れした荒業のオンパレード。
これを大袈裟な中華アクションと見るか、迫力溢れる雄姿と見るかで評価がガラリと変わることでしょう。
良く言えば漫画的というか、智将・猛将は一目見れば分かるレベルのビジュアルを完備してあり、「巨悪に対し立ち上がる勇士」という分かりやすい図式も相まって非常に単純な作りになっております。
ぶっちゃけ三国志に興味が無ければ観ないであろう作品にも関わらず、史実に詳しくない人にすら親切に視覚化されている親切設計です。
まとめ
前フリが長すぎたので簡潔にまとめます(汗)
ロクに会話も交わさずに同盟を組んだり、軍師(作戦練る人)なのに前線に突っ込んだり、野暮な見方をすればツッコミどころのオンパレードではあります。
それを楽しむために、ある意味で少女漫画やプロレスのような”お約束”的な視点が必要だとは言っておきたいところです。
ちなみに正史では赤壁の戦いは”周瑜の戦い”と評されるほどに曹操vs孫権の図式が色濃くなっており、ぶっちゃけ劉備軍は何もしてないのが正直なところだけに、本作では劉備軍御一行様の見せ場に気を使った印象です。
小ネタではありますが、正史に記述されるネタが所どころに挟まるのもオタクとしては嬉しいところ。
壮大過ぎる国土と歴史を誇る中国史で”赤壁”にスポットを当て、余計なものをできるだけ省き、映画作品としてタイトに仕上げたジョン・ウー監督の手腕はなかなかのものです。
多少なり興味があれば、三国無双にハマった経験があれば、後編も含め、ぜひとも観てほしい作品です。
ただ「これは思いっきりフィクションです」とだけハッキリ言っておきます。
Part2に続く。