(原題:RIGOR MORTIS)
2013年/香港
上映時間:101分
監督:ジュノ・マック
キャスト:チン・シュウホウ/クララ・ウェイ/パウ・ヘイチン/アンソニー・チェン/他
かの有名な「キョンシー」をリブートさせたアクション・スリラー。
1980年代から始まった「幽幻道士」や「霊幻道士」などを経て、当時ブームとなった「キョンシー」という概念。
確かファミコンにもなってたような気がしますが、当時まだ子供だった筆者の記憶が曖昧で、どんな作品でどんな物語だったのか、いまいちハッキリしません。
ので、観るにあたり改めて調べてみるともう出るわ出るわで、こんなに複雑な設定があったコンテンツだとは知りませんでしたよ。
80年代の「キョンシー」をサモ・ハン・キンポーが手掛けてたことも知りませんでしたし、そもそものキョンシーの元ネタとなる言い伝えも初めて知りました。
あまりの懐かしさと、予想以上のエンタメ性に度肝を抜かれ、オススメしづらい作品ではありますが、コレはもう是が非でも観て欲しい映画ですわ。
ちなみにプロデューサーとして「呪怨」の清水監督が参加しているそうな。
さっくりあらすじ
若い頃に出演した「霊幻道士」が大ヒットを記録したものの、現在は見るも無残に落ちぶれたシウホウは寂れたアパートへと入居した。
自分の部屋へと案内され荷ほどきを終えた後、おもむろに自殺を図ったシウホウの元に悪霊が現れるが、すんでのところで道士の末裔・ヤンに助けられる。
同じアパートに住む初老の女性・ムイの夫であるトンはゴミを捨てに行った際に足を滑らせ、そのまま死んでしまう事故が起きた。
夫の死を受け入れられないムイは現役の道士であるガウに蘇生を頼み、死んだトンを復活させるためにガウは準備を始めるのだが、、、
自殺を図ったシウホウ(右)
元道士で料理人のヤン(左)
同じアパートに住むムイ
誰にでも親切で良い人
しかし夫の死をきっかけに
徐々に精神が崩壊していく
続編希望
そもそものキョンシーがどんなんだったか覚えておらず、特に先入観の無い状態で観ましたが、コレがマジで面白いんですよ。
キョンシーがどう生まれ、道士がどう闘うのかという点で実にロマン溢れる内容となっており、ただただシビれます。
原作シリーズとはかなり剥離した内容なんだそうで、元々のファンからすれば認めがたい映画になっているんだそうですが、この独特の風合いは他の作品には無いんじゃないかなと。
かつてゴールデンハーベスト(香港の映画製作会社、初期のジャッキー映画は大体ここ)で活躍していたキャストの姿も微笑ましいものですし、今なお活躍する姿を見ると個人的にホッとしますね。
原作に出演していたオリジナルキャストも多数参加しているそうで、そういう意味では古参ファンの方にも嬉しいサービスと言えるかもしれません。
ただし、いち映画として考えると粗が多く、昨今では珍しいレベルのオチの酷さもあり、決して完成度の高い作品だとは言えません。
とはいえ矛盾するようですが特筆すべきは「全編に渡る独自の個性」、もうコレに限ります。
廃墟のような、禍々しさすら感じさせる住居のロケーション。
明るい人も暗い人も、総じて住人達に垣間見える影。
過去に凄惨な事件があり、怪奇的な空気が漂う空気感。
その空気感に馴染む和製ホラーなテイスト。
心優しい女性が狂気に囚われ、盲目的に目的に突き進むギャップ。
その結果生まれてしまった怪物。
怪物を退治するために用いられる風水や妖術、そして肉弾戦。
と、もう思い出すだけでワクワクしてくるわけですよ!
(病気)
全編に渡る適度な緊張感により目を離す隙間が無く、人に危害を加える怪物「キョンシー」の容赦の無さが実に印象深く、迫力溢れるラストバトルが感慨深く。
どうにも人に勧めづらい映画であるにも関わらず、それでも誰かに観て欲しくなる独特の魅力が本当にクセになります。
個人的なマイナス点としては、まずオチがあまりにもアレなところと、ちょいとジャパニーズ・ホラーに寄せ過ぎなところ。
まぁ、ここは正直賛否が分かれるところだと思いますし、好意的に捉える人も少なくないと思いますが。
何だか一つの映画作品で終わっちゃうのが勿体無いというか、何と言うか。
できれば同じクォリティで続編&シリーズ化してほしいなぁと、本気で思うほどにハマりましたねぇー。
マジで。
まとめ
もはや世界中でザコorモブとして、恐怖の象徴では無くなりつつある「ゾンビ」の概念。
そんな風潮の中でここまで輝きを放てる存在は貴重ですし、しかも掘り下げられる伸びしろを感じられるのはもはやキョンシーしかいないんじゃないかと。
ちょっと熱が入り過ぎて前のめりになってる感は否めませんが、すっかり忘れていたコンテンツの面白さを思い出させてくれた作品として、胸に刻んでおこうと思います。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。
おまけ
中国では出稼ぎに出た人が亡くなった時、故郷で埋葬してあげないと残された家族が不幸に見舞われるという伝承があったそうです。
遺体を運ぶのが大変なため、道士が呪術で遺体を歩かせ、故郷へと連れ帰ったんだそうな。
ピョンピョン跳ねるのは死後硬直により、関節が曲がらなくなったからだそうです。