リプリー


(原題:The Talented Mr. Ripley)
1999年/アメリカ
上映時間:140分
監督・脚本/アンソニー・ミンゲラ
キャスト:マット・デイモン/グウィネス・パルトロウ/ジュード・ロウ/ケイト・ブランシェット/フィリップ・シーモア・ホフマン/他

 




 

 

著名なミステリー作家パトリシア・ハイスミスによる同名小説を映画化したサスペンス。

1960年にもアラン・ドロン主演で「太陽がいっぱい」という名で映画化されているものの、さすがに観たことはありません。

 

マット・デイモン、ジュード・ロウをはじめ、結構なスター俳優の起用し、社会的な優劣や奥深い恋愛感情、そして同性愛などを描いた複雑な物語です。

サスペンス映画として人を惹きつける魅力はあるものの、非常に単調で起伏に欠ける玄人向けな作品であり、端的に言えば眠くなる作品ではあります。

しかし作品のテーマを通して感じる奥深さ、現在では世界的に有名な俳優たちの演技力を楽しむという意味で良作と言えるでしょう。

 

 

 

 

さっくりあらすじ

1950年代のニューヨーク。

貧しく孤独な青年トム・リプリーはピアノ演奏の代役として出向いたパーティーで、借り物のジャケットを羽織っていたために大富豪グリーンリーフの目に留まり、息子・ディッキーと同じプリンストン大学の卒業生だと勘違いされる。

これをチャンスだと思ったリプリーはとっさにディッキーの友人を装い、グリーンリーフは地中海で遊んでいるディッキーを連れ戻すようリプリーに依頼をした。

ジャズを愛するディッキーに近づくためにジャズを猛勉強し、いざイタリアへと辿り着いたリプリーは大学の友人を装い、贅沢なバカンスを過ごしているディッキーに近づくのだが、、、

 

 

 

 

トム・リプリー
劇場でボーイとして働く

 

御曹司ディッキー・グリーンリーフ
ジャズとヨットを愛する遊び人

 

ディッキーの友人・フレディ
傲慢で人を馬鹿にする

 

 

 

 

滲み出る緊張感

古い作品とはいえ、ベストセラー作家の原作というだけあって脚本は極めて素晴らしい。

小さな嘘から始まった一連の事件がやがて大きな波となり、殺人を厭わず、綱渡りのような嘘をつくことに馴れてしまう描写には静かな怖さを感じます。

孤独な人間が持つ羨望、嫉妬、愛情、憎悪、そして嘘に次ぐ嘘。

自分の人生に対するコンプレックスか、はたまた雲の上の存在に対するジェラシーか、コミュニティの中で暮らす”人間”の本質に迫るかのような物語は興味深いものです。

 

そして本作の最大の魅力はキャスティングの素晴らしさで、まさに適材適所といった配役であり、どの人物を演じる俳優も非常に説得力を感じます。

 

 

トム・リプリーを演じるマット・デイモンは特に群を抜いていて、外見的に絶妙な平凡さ、どこか垢抜けない庶民感、でも何かを考えているかのような深みのある表情は極めて高い演技力を窺わせます。

咄嗟についた嘘が人生を好転させ、好転した人生を保つために嘘を貫く。

序盤は自身の境遇を変えるための上昇志向に溢れる青年として、後半は自身の矛盾した思考に蝕まれ徐々に正気を失っていく人物として、彼以上のキャスティングはかなり難しいと言えるでしょう。

 

そしてそんなリプリーが憧れ、友愛以上の感情を抱いたディッキー。

演じるジュード・ロウは説明するまでもなくセクシー枠代表のイケメン俳優ですが、ただイケメンなだけでなく、彼が持ち合わせる気品や賢さを感じさせる佇まい、それに伴う強い存在感は一段と際立っています。

バカボンな二代目御曹司として、毎日を気ままに遊び呆けるお坊ちゃんとして、しかしどこかに気難しさを感じさせる富裕層として、それでも人を惹きつける魅力を持つ人物という役にピタリとハマっていますね。

 

 

さらに本作の隠れたテーマとも言える「同性愛」という背景。

最初こそ田舎者の弟分といった感じでトムを可愛がったディッキーが徐々に感じる疎ましさ、それは住む世界が異なるという要素に加えて潜在的なセクシャリティの問題が見え隠れしています。

意図的に趣味を合わせたとはいえ、唯我独尊なディッキーの趣味や好みを共有できるトムという友人に対し、潜在的なホモセクシャルの気持ちが開花していくことに耐えられないような描写がチラホラと描かれます。

自分の中の矛盾した性的嗜好に困惑するディッキー、加えて憧れ以上の愛情や欲望が生まれてしまったトム、この極めて複雑な人間模様が最大の見どころかもしれません。

 

 




 

 

まとめ

過去作「太陽がいっぱい」と比べると、より原作に近いようですが、アラン・ドロン>マット・デイモンということで過去作を好む方も多いようですな。

振り返ってみれば独りよがりな貧乏人の犯罪物語と言えてしまいますが、ヨットで遊び呆け、美女を侍らせ、何の苦労もない人生を送る人に対しての羨望や憎悪の気持ちは深く理解できます。

 

高い演技力、計算された繊細な演出、良く出来た映画だとは思いますが、さすがにその場しのぎの嘘を続けることや成りすましを続けることは視覚的に無理があるような気もしますが。

地中海を照らす爽やかな光と対照的に描かれる陰湿な人の欲望、そしてバレそうでバレない緊張感と、非常に深みと奥行きのある作品ですが玄人向けかな。

 

良ければ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 



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