(原題:Silent Hill)
2006年/カナダ/フランス
上映時間:126分
監督:クリストフ・ガンズ
キャスト:ラダ・ミッチェル/ショーン・ビーン/ジョデル・フェルランド/ローリー・ホールデン/キム・コーツ/タニヤ・アレン/デボラ・カーラ・アンガー/アリス・クリーグ/他
娘を助けるため、危険な異世界を彷徨うサスペンス・スリラー。
元は「バイオハザード」と並ぶ恐怖感を誇る、和製ホラーゲームとして有名な作品です。
ゾンビがワラワラと襲ってきて、直接的にビビらせてくるのが特徴的な「バイオハザード」シリーズ。
対して、遠まわしに得体の知れない恐怖感でジワジワ包んでくるのが「サイレントヒル」の特徴です。
まさに「静」と「動」
ホラーという同じコンテンツでありながら、正反対の属性を持っていると言えるでしょう。
また映画としても、ミラ・ジョヴォヴィッチを中心とした、分かりやすいアクションが重視される「バイオハザード」シリーズ。
対して「サイレントヒル」は静かで不気味な世界観を前面に押し出し、限りなくゲーム版に近い質感を再現しています。
ゲームとしての商業的な面では「バイオハザード」に一歩譲りますが、逆に映画としては三歩は先を行っていると思います。
とにかく丁寧に、ゆっくりと引き込んで行くミステリアスな世界。
何が起こるのか先が読めない緊張感が終始続くため、純度の濃いホラーの世界に吸い込まれるような奇妙な魅力があります。
ゲームをプレイした方はそこそこに、未プレイの方はかなり楽しめるんじゃないかと思います。
さっくりあらすじ
ローズとクリストファー夫妻は、養女として引き取ったシャロンが情緒不安定になり、頭を悩ませていた。
「サイレントヒル」と呻いて動きまわるシャロンを見て、クリストファーは本格的に入院させようと考える。
しかしサイレントヒルという街が実在することを知ったローズは、クリストファーに無断でシャロンを連れその街へと向かう。
サイレントヒルは30年前に大規模な火災が発生し、多くの犠牲者が出た場所だった上、現在でも地下火災が続くゴーストタウンとなっていた。
道中、白バイ警官・シビルの職務質問を無視し、追いかけてくるシビルを振り切るように荒々しく運転をするローズ。
不意に前方に飛び出してきた少女を避けると車は山腹に激突し、そのまま気を失ってしまう。
夜が明け、目を覚ましたローズはシャロンがいないことに気づく。
あたり一面が灰に覆われた街「サイレントヒル」でローズはシャロンを探しに行くのだが、、、
血と錆びにまみれた、おぞましい世界
あちこちに異形なクリーチャーが
”三角頭”の再現度は秀逸
ほぼ完璧な世界観の再現
まず完成されたゲームを映画化するにあたり、世界観や背景に対して余計なことをしなかったことが一番評価に値するところだと思います。
”有名な原作ありき”が当たり前の昨今の映画業界ですが、結果的に改悪されたものも少なくありません。
映画というコンテンツとして、完成度が優れた作品に出会うことがほとんど無いのが現状でしょう。
原作が有名な映画は、脚本や演出に自分の個性を出そうとすると大体失敗するもんなんです。
中には監督や脚本家がでしゃばり過ぎて「お前は何がしたいんだ!?」と本気でツッコミたくなるようなものも少なくありません。
その点、本作はオリジナル(アレンジ?)の脚本でありながらも世界観や舞台背景はそのままに、完璧に近いバランス感覚で良くまとまっていると言えます。
これってなかなかできそうでできないんですよね、ホント。
原作に対するリスペクトを感じる素晴らしい完成度でした。
ゲーム版をプレイしたのも随分昔の話なので、詳細までは覚えていませんが、脚本的にも概ね原作に近い思われます。
一部で批判の的となった、主人公が女性になったのもマイナスではないかな。
個人的には男性でも良かった気もしますが、映画として考えれば妥当なところでしょう。
そして特筆すべきは、極めて素晴らしい映像表現。
サイレントヒルの裏世界に突入する際の、血と錆びにまみれたおぞましい世界の表現は完璧でしょう。
グロさが一周して、むしろ美しさすら感じる気がします(病気)
また数は少ないものの、クリーチャーのデザインも良くできていると思います。
まとめ
原作の象徴となる三角頭も健在で、原作とは若干印象が異なるものの、不条理で理不尽な暴力の権化として圧倒的な存在感を示しています。
この「サイレントヒル」という原作ゲームの性質上、ハッピーエンドにはなりませんが完成度の非常に高い良作だと思います。
数あるホラーと比べても何の遜色もありません。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。
おまけ
サイレントヒルシリーズで使われる楽曲は国内外問わずに非常に高い評価を受けています。
本作での製作総指揮を努めたのはシリーズの楽曲を担当した山岡晃氏。
最近は海外のゲーム業界に押され気味な日本のゲーム業界事情ですが、まだまだ日本のクリエイターも捨てたもんじゃないですね。
いちゲーマーとして、今後のご活躍に期待します。