サバービコン 仮面を被った街


(原題:Suburbicon)
2017年/アメリカ
上映時間:105分
監督:ジョージ・クルーニー
キャスト:マット・デイモン/ジュリアン・ムーア/ノア・ジュープ/オスカー・アイザック/グレン・フレシュラー/他

 




 

新興住宅地で巻き起こる事件を描いたサスペンス。

何故かジャンルがブラック・コメディとなっているようですが、どう見ても違います

ちなみに脚本を担当したのは「ファーゴ」や「ノーカントリー」で有名なコーエン兄弟、脚本自体は1986年には完成していたんだとか。

それに目を付けたジョージ・クルーニーが監督として製作に臨んだわけですが、改めて”役者”と”監督”の差異を感じさせられる仕上がりとなりました。

 

 

 

さっくりあらすじ

1959年、閑静な新興住宅地・サバービコンでは誰もが幸福な日々を送っていた。

そんな街に黒人の一家が引っ越してきたことで状況が一変、白人至上主義者が大半を占める街では不穏な空気が流れ始める。

しかし黒人一家の隣に住むロッジ家は差別的な態度を取ることなく、息子のニッキーに黒人の少年と遊ぶように促していた。

そんなある日の夜、ロッジ家に強盗が入るのだが、、、

 

 

 

 

一軒家を購入したガードナー
妻・ローズを亡くし、息子と暮らす

 

ローズの双子の妹・マーガレット
本作最強のサイコパス

 

保険調査員・バド
ローズの死に疑問を持つ

 

 

 

 

バラバラ

郊外に並ぶ中流家庭が住む街並み、誰もが同じ家を持ち、また同じような生活を送っている。

閑静な住宅街でありながらも、住むのは白人だけであり、どこか閉鎖的な空気が感じ取れる街・サバービコン。

そんな平和な街並みに黒人の家族が住み始め、小さな違和感は波紋を広げていく、、と。

 

人種差別を背景にしたコーエン兄弟の原案は魅力的なものであり、人の業というか、社会の負の側面にスポットを当てた物語はなかなかに魅せるものがあります。

が、そんな物語の背景がありながらも、実際に描かれるのはとある家庭の保険金殺人という肩透かしっぷりで、2つの物語がリンクしていないことが最大の問題点だと思います。

一応フォローしておくと、黒人に対し敵対心をむき出しにする住民と、常識人を装いながらも私利私欲に妻を手に欠ける男性という、いわば「二面性」を描いたであろうことは理解はできます。

端的に言えば「人の仮面の下に潜む、排他的な思想がもたらす醜さ」と言っても良いでしょう。

 

しかし、幸せに包まれた明るい街の闇が暴かれるような物語を期待しただけに、微妙に繋がらない2つのエピソードがしっくりこないというか。

2つの物語が収束していくからこそ面白いんであって、そのまま交わらずに終わると意味が分かんないんですよ。

先述したように作品のテーマを汲み取って繋げようとすれば繋がる物語でありますが、どう見ても映画としての完成度が低いという印象が勝ってしまいますね。

 

さらに言えば白人家族の事件の方にフォーカスされたサスペンスになっていますし、黒人に対する人種差別がオマケになっちゃっているんですな。

それはそれで良いとしても、白人が集団で黒人に嫌がらせをするというセンシティブな表現をオマケ扱いになるのはいかがなものかと。

監督を務めたジョージ・クルーニーの判断には疑問符が拭えません。

 

 

良い点としては、俳優陣の演技が素晴らしいこと。

むしろコレが無かったら相当に退屈な映画になっていただろうとも思うくらい。

堅物風なガードナーを演じるマット・デイモンは流石の一言であり、自分の利益のためには殺人も辞さない中年サイコパスを極めて自然に演じております。

物分かりが良さそうな雰囲気を出しつつも、決して頭が良いとは言えない小悪党であり、そのくせ容赦の無い冷酷な態度がまた不気味さを助長します。

 

ジュリアン・ムーア演じる双子の妹・マーガレットもまた素晴らしいインパクト。

とってつけたような胡散臭い笑顔が実に印象的で、個人的には一番のサイコパスは彼女だと思います。

一見して優しい女性を演じつつ、その闇が深くて見えない怖さがジワジワ味わえる素晴らしい演技です。

 

そして、保険調査員を演じるオスカー・アイザックも良い味を出しております。

やはり一見すると優秀で紳士的な男性でありながら、内面は軽薄で利己的、彼もまた小悪党としての存在感が抜群です。

 

 




 

 

まとめ

総じて演者に助けられている本作ですが、エッセンスは面白そうなだけに、どうも勿体ない感想が付いて回ります。

もっと面白くできたであろう伸びしろが大いに感じられるだけに、やはり残念な仕上がりですね。

とはいえ、それなりのサスペンス性や焦燥感は十分に感じられますし、決して駄作と言うわけでもありません。

 

無理して観るほどではないけど、何となく観てたら面白かった系に分類しても良いでしょう。

良ければ一度ご鑑賞くださいませ。



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