(原題:Vidocq)
2001年/フランス
上映時間/100分
監督/脚本:ピトフ
キャスト:ジェラール・ドパルデュー/ギヨーム・カネ/イネス・サストーレ/アンドレ・デュソリエ/エディット・スコブ/ムサ・マースクリ/他
19世紀に実在した世界初の探偵と言われる、フランソワ・ヴィドックをモチーフにしたSFサスペンス。
オシャレで可愛いフランス映画として有名な「アメリ」で美術担当だった、ピトフ氏の初監督作品です。
実写映像にミニチュア・CG・アートペイントを組み合わせるなど、非常に先進的でアート性の高い演出が特徴で、禍々しい雰囲気に混乱するパリの映像美は秀逸。
また、脚本的にも過去と現在を組み合わせ、意図的にミスリードを誘う構成も面白いと感じます。
都市伝説や錬金術といった胡散臭くも興味深い物語を、これほどのエンターテイメントに仕上げる手腕は素晴らしいの一言です。
芸術性の高い映画を好むフランス人ですが、娯楽と芸術を高いバランスで備えた秀作だと思います。
さっくりあらすじ
「ヴィドックが死んだ!」
そんな声と共に、新聞の号外が町中にバラ撒かれた。
18XX年、政府で武器開発を担当していた貴族が2人とも落雷に身を焼かれ、死亡した。
一連の落雷事故は偶然ではないと考えた警視総監・ロートレンヌは、犯罪王にして最高の私立探偵であるヴィドックに捜査を依頼する。
捜査の末に恐ろしい事件の真相に辿りついたヴィドックだったが、ガラス工房の燃え盛る窯の中へと落とされ絶命してしまった。
そんなヴィドックの伝記を執筆しようと若き作家・エチエンヌは、ヴィドックの相棒であったニミエを皮切りに、独自に取材を開始する。
ヴィドックが死ぬまでの足跡を追う中で、事件の真相に近づいていくエチエンヌだったが、、、
実在した世界初の私立探偵
フランソワ・ヴィドック
こっちは映画のヴィドック
そっくりじゃない!?
独特の色彩で描かれるパリ
禍々しい雰囲気がすごい
映像の進歩
世界初(実際は知らんけど)と謳われるデジタル映像を見ると、撮影技術&映像技術がドンドン進化しているのがよく分かります。
最近の映画だと言われてもそれほど違和感を感じない程の完成度が、15年以上も前に製作されたのは本当にすごいこと。
まぁ、さすがに最新映画には見劣りするけどね。
ただやはり試験的な段階なのか、カメラワークはややきついっす。
ちょっとした豆知識として、本作はHD24Pという映像規格で製作されています。
(ちなみに考案者はジョージ・ルーカス)
撮影した映像をすぐに確認できたり、暗い場所でも明るく撮影できたりと便利な反面、映像の質感に差が出たり、遠近感が掴みづらくなったりします。
(現在は解消済み)
そういった特徴が影響してるのか、けっこう揺れたり、唐突に画面が役者に寄ったりするので、人によっては酔うかもしれません。
全体的に暗めな背景に、鮮やかな色彩があるからなおさらね。
進歩に対して技術が追いついてない感は否めません。
推理モノとしてはやや印象は薄く、アクションで始まったと思いきやミステリアスな展開になり、最終的にはオカルトなノリで終わります。
結末がやや強引な流れなので、消化不良な感じになるかも。
そういう意味ではよく練られたサスペンスとは言い難く、実際に評論家の間では「上っ面だけで内容が無い」と評されてしまうのも頷けるところではあります。
ただ本格派サスペンスではないからね、あくまで映像とミステリアスな世界観を楽しむための作品だと思ってください。
まとめ
サスペンスやミステリーからはみ出ることはなく、良くも悪くもお約束な作品です。
デヴィッド・フィンチャー作品のような、退廃的な世界観にピタリとハマる錬金術の謎という点で、好きな人はとことん楽しめる映画なのではと思います。
でかい図体して、スタイリッシュにアクションを決めるジェラール・ドパルデューもなかなかカッコいいですし、一度は観ても損の無い作品です。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。