(原題:While We’re Young)
2014年/アメリカ
上映時間:97分
監督:ノア・バームバック
キャスト:ベン・スティラー/ナオミ・ワッツ/アダム・ドライバー/アマンダ・セイフリッド/チャールズ・グローディン/他
夫婦、友人、出産、人付き合い、歳を重ねる恐れ、若さへの羨望などなど、様々な要素が複雑に絡み合うコメディ・ドラマ。
「フランシス ハ」や「マイ・ファニー・レディ」で監督や製作を務めたノア・バームバックが監督・製作・脚本を務めています。
自身が選択してきた道を歩いてはや幾年、個人差はあるでしょうが一定の歳を超えると人生の逆算を始めることがあります。
今まで自分は何を培い、何を成し遂げ、これから何ができるのか?
また早く結婚した方が良いのか、早く子供を持った方が良いのか?
将来の人生設計とは正解が無いだけに、得てして指針を作りづらく、人と自分を比べてしまうことは誰にでもあるでしょう。
人生の先輩として、本来は尊敬されるべき立場にいる人間の苦悩や願望など、時として老いは疎ましいものであり、また若さが本当に羨ましい時もあるわけですな。
そんな複雑な胸中を抱く中年男性の物語です。
さっくりあらすじ
ニューヨークに暮らすドキュメンタリー映画監督のジョシュと、妻であり映画プロデューサーでもあるコーネリアは子宝に恵まれず、気ままな日々に多少の物足りなさを感じていた。
親友の夫婦には子供が生まれ、生活環境の変化から疎遠気味になったある日、映像学校の講師でもあるジョシュのクラスに講聴に来ていたジェイミーとダービーという若い夫婦と出会う。
映画監督としての尊敬を得たジョシュは気を良くして彼らと付き合うようになるが、彼らの若々しい生き方に影響を受け、いつしか大きく影響を受けるようになっていた。
そしてジェイミーが映画を製作することになり、共同監督としてジョシュも参加することになるのだが、、、
中年夫婦のジョシュとコーネリア
日々に何か物足りなさを感じている
そんな折に出会った若夫婦
ジェイミーとダービー
一緒に過ごす機会が増えていき、
いつしか若い感性に影響されていく
器用と不器用
経験的な差と言うものは絶対的なものであり、努力や才能では簡単には越えられない壁となるものだと強く信じております。
当然無駄に経験だけは積んで、何の努力もせずに歳を重ねる人も少なからずいるものですが、それでも”歳の功”というものはいつの時代にも普遍的にあるものでしょう。
しかし、実際におっさんな歳になってみると良く分かりますが、まぁ今時っ子は賢いし要領いいし、程度の差はあれ優秀なポテンシャルを秘めている子が多いなと常日頃感じますね。
自分が頑張ってきた努力が時代の流れによって無駄になり、必要なことだけを順次覚えていけるアドバンテージはやはり埋めがたいなとも思いますし、新たに時代を切り開く若者の登場に期待はつつも嫉妬心も芽生えます(笑)
俺だってスゴいんだ!まだまだやれるんだ!とね。
本作に於いては2度の流産を経験し、子供を諦め自由な生活を送る夫婦がメインテーマとなります。
親友には子供が生まれ、生活感や価値観のズレからか互いに付き合いづらいと感じてしまい、その上で日常の刺激に何かが欠けていると日々感じている夫婦です。
特に夫のジョシュは自分のドキュメンタリー映画を8年かけても完成させられず、子供も映画も作れないという焦燥感に晒され、心の隙間が広がっていくばかり。
そんな折に、自分に欠けていたものを持つ若夫婦と出会うことで人生の価値感が大きく変わっていくという流れが前半の大筋になります。
自分が築いてきた仕事や経験、人間関係にもマンネリを感じることもあるでしょうし、逆にハツラツとした若者の姿が羨ましくなることもあります。
背伸びをして若いノリに身を任せることは楽しいものですが、実際には結構疲れるし、大体の場合は自分の生活に対する満足度を確認して終わるのではと思います(笑)
またキャスティングが非常にバランス良く、上手く噛み合った演技は極めて素晴らしいと思います。
「ナイトミュージアム」でお馴染み、コミカルながらもドラマ性のある演技が持ち味のベン・スティラーはさすがの安定感。
不器用で上手くことを運べないことを自覚し、冴えないおじさんになりかけている演技は素晴らしく、申し分なし。
「21グラム」や「ヴィンセントが教えてくれたこと」など、数々の役で色々と表情を変えるナオミ・ワッツ。
冷静で洞察力があり、心に傷を抱えながらも逞しく夫を支える素晴らしい女性を演じています。
自分を客観視できず、不器用で意地っ張りなジョシュの欠点を正確に捉え、尚且つ彼の人間的な成長を信じ、さらに彼の(欠点でもある)純粋さを心から愛する。
もう外見も中身も100点ですな、独身のメンズはこういう女性を探しましょう。
ついでにダンスにハマる姿がとってもラブリーで可愛らしかったっすね。
さらに”カイロ・レン”ことアダム・ドライバー。
彼の演技を初めて見たと思いますが、独特な顔立ちや存在感といい、悪意を自覚しない狡猾な若者と言うキャラは本当にハマってます。
バームバック監督によるオシャレなライフスタイルの演出や、才能を感じさせる若者の言葉の選び方(脚本)など、どこかにウザさを感じながらも何故か憧れてしまうような、そんな絶妙なバランス感覚は秀逸ですね。
そして”天使”ことアマンダ・セイフリッド。
んまぁ可愛くて素敵、以上。
まとめ
冒頭で語られる「三匹の子豚」の教訓が作品全体の伏線となっており、ユニークなドラマ性やコミカルな演出も面白く、よく練られた映画だと思います。
強いて言えばバームバック監督作品はエンディングが極めて平行線で、ハッピーエンドでもバッドエンドでもなく、人が歩く道の延長線を描くだけに地味には見えるかもしれませんが。
ゆったりとしながらも内容があり、個人的には結構面白かったと思いますが、それなりに残酷なお話なのでご注意を。
どちらかと言えば”おじさん・おばさん”な歳になってから観た方が面白いかもしれません。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。