ウィンド・リバー


(原題:Wind River)
2017年/アメリカ
上映時間:107分
監督:テイラー・シェリダン
キャスト:ジェレミー・レナー/エリザベス・オルセン/グラハム・グリーン/ケルシー・アスビル/ギル・バーミンガム/他

 

-Warning-

今日の「俺の映画が観れんのか!!」は
鬱要素が強めの作品となっております。

楽しい映画をお探しの方は
他の記事を参照くださいませ。

 

 




 

ネイティヴ・アメリカンが居住する過疎地で起きた事件の真相を巡るサスペンス。

デルトロ兄貴の傑作「ボーダーライン」の脚本を手掛けた、テイラー・シェリダンが監督・脚本を務めます。

 

雪と山しかない過酷で殺風景な環境で、アメリカのニュースでちょろっとだけ流れそうな事件が描かれます。

つまり大事件ではなく、小さな町の小さな事件ということですな。

人が死ぬ以上、事件に大も小もないですが、そういった現実的な人権の在り方をエッセンスに添えたなかなかの良作だと思います。

ただし、女性にとっては極めて不快な演出が生々しく描かれますので、鑑賞の際はご注意を。

 

 

 

さっくりあらすじ

ワイオミング州ウィンド・リバー居留地にて、野生生物局の職員であるコリーは雪が積もる荒野のど真ん中で裸足の少女の遺体を発見した。

事件の報を聞いたFBIは新人捜査官のジェーンを派遣するが、現地の過酷な環境と風土により捜査は難航する。

事件解決のため、ジェーンは土地に詳しいコリーの協力を要請するのだが、、、

 

 

 

 

遺体を発見したコリー
決して弓の名手ではない

 

新人FBI捜査官のジェーン
決して魔女ではない

 

現地警察と捜査に当たるが、、

 

 

 

 

人間の闇

非常に陰鬱で重ためな作品ではありますが、十分に観るに値する社会派のサスペンスだと断言できます。

 

豊かな暮らしを堪能する人がいれば、過酷な環境に身を置かざるを得ない人がいて。

物語のメインはとある事件によるものですが、その背景にある過疎地の構造や貧困や差別、そして格差社会の闇が描かれているわけですな。

また広大で美しくも、ゆっくりと確実に降り積もっていく雪山が閉塞感を増長するのに一役買っています。

 

どんな形であれ、犠牲になるのはいつだって弱者という真実は気を滅入らせるものではありますが、それに対して目を背けずらい構成になっているのがまたお見事。

本作が監督としてのデビュー作になるそうですが、シェリダン監督の手腕と信念に脱帽です。

 

 

物語としては、FBI捜査官と地元ハンターが女性の凍死事件を解決していくというもの。

現場となる居留地がとにかく寒く、とにかく静か。

居留地というにはあまりにも広く未開拓な土地と、そこで暮らす人々の極めて狭いコミュニティとのコントラストが非常に印象的です。

 

そんな町だからこそ、捜査にやってきたFBI捜査官の場違いっぷりが際立ちます。

シャレにならんほどの低気温にも関わらず軽装だったり、現地の文化や風土に馴染みきれない都会っ子のセンスが垣間見えたり。

先住民から見たよそ者、もっと言えば現代社会を築いた白人に対しての苛立ちや不信感を表現する重要なキーパーソンです。

 

演じるエリザベス・オルセンの垢抜けた雰囲気が良い意味でマッチしており、まだまだこれから伸びしろを感じる好演でした。

芸能界のサラブレッドな雰囲気は徐々に抜けてきていますね、着実に演技力とキャリアを気付いてますな。

 

 

そして、原住民と捜査官の橋渡しを務めるジェレミー・レナーはもう、圧巻の演技力。

白人でありながらインディアン居留地で生活し、彼らの文化を理解している善人です。

程よくマイルドでありながらも、程よくワイルド。

 

そんな彼のビジュアルと演技力が相まって、「インディアン社会で暮らす変わった白人」感がすごい馴染んでるんですよね。

本当にこういう人いそうだなと、醸し出される雰囲気にそう思わせるだけの説得力があるんです。

これは本当に難しいことでして、地味だけど大事な要素だと思います。

 

そして彼もまた心に深い傷の残る、悲しい過去を背負った人間でもあります。

何故なのか、どうしてなのか。

理由が分からず理不尽な悲しみに飲み込まれ、ひたすらに痛みに耐え続ける苦しさが吐露されるんですな。

そんな彼がジェーンを導き、またジェーンも捜査官として、人として成長するドラマ性も深い味わいが隠れています。

 

 

事件が収束する終盤では、コリーがホークアイと化すシーンに思わず笑ってしまいましたが、不謹慎ですんません。

最後の最後でコリーが選んだ決断には一縷の救いがあるものの、凄惨な事件は後を絶たないという現実がまた辛いところ。

善とか悪の尺度ではなく、誰もが良識的な人であってほしいという、人間としての心の叫びにも感じ取れると思います。

 

ちなみに彼の選んだ制裁には多少の賛否はあると思いますが、個人的にはむしろ正解を教えてもらったような気分になりましたよ。

もし自分が同じ状況に陥った時は、こうすべきだと。

 




 

 

まとめ

だだっ広い土地に対し、警察官が6人しかいないという社会。

誰もがモラルに準ずる善人というわけでもなく、単に土地に対しての投資が少なすぎるだけという現実。

過酷な環境にしがみついて生きる人々。

徐々に土地を理解し、考えを改める白人。

心の痛みに耐えながら、己の正義を実行する白人。

 

いやぁ、、本当に骨太で興味深い作品でした、傑作と言っても良いくらい。

ただサスペンスとはいえ、娯楽作品とはかけ離れた内容ですし万人受けはしないんでしょうね。

でも個人的には大満足な映画でした。

 

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。



ブログランキング参加してみました。
良ければポチっと押しちゃってください。