2002年~2003年
作者:宮下英樹
週刊ヤングマガジン(講談社)
全6巻
久しぶりの日本人横綱や大関が台頭し、再びブームの兆しを見せている相撲業界。
まぁどんなジャンルであれ日本人が活躍するのは大いに誇らしいものではありますが、どうも相撲というジャンルは国技なだけあって差別的な雰囲気が漂いますな。
確かにモンゴル勢だけがトップを占めるというのは寂しいものがあるのも事実ですが、あまりにも日本人びいきなのもいかがなものかと。
常人には真似できないパフォーマンスを見せてくれるんだから出身国なんかどうでも良いと思うんですけどねぇ。。
本作はそんな”相撲”という文化を挑戦的に描いた作品であり、作者・宮下英樹氏のデビュー作でもあります。
現在は戦国時代を描いた歴史漫画「センゴク」で有名な方ですね。
プロの力士ではなく、学生相撲というこれまたマイナーなスポーツに焦点を定め、「ガリガリ土俵革命児」と銘打たれるだけあってアイデア満載の面白い作品に仕上がっております。
さっくりあらすじ
茨垣高校1年生の和泉大和は幼い頃から体格は小柄ながらも誰よりも力は強く、かつては自分よりも大きな相手を投げ飛ばしていたものの現在では相撲部で最弱の部員となっていた。
しかし自身の強さを疑わない大和は持ち前の根性に優れた身体能力、中国拳法から取り入れた必殺技を武器に、巨漢の力士に向かっていくのだが、、、
己を信じること
物語の舞台は高校ですが、これは学生だけでなく社会人の方々にも読んでほしいなと。
というのも60kgそこそこの小柄な体格は相撲の世界では笑い話であり、負けん気だけは異常に強い大和の姿は非常に滑稽なものです。
良くも悪くも非常に図太い性格もまたそれに拍車をかけており、”努力と根性を武器に戦う”を通り越して”自分が見えていないイタイ少年”にも見えてしまうところが本作のキモですな。
とある事件をきっかけに必殺技を身につけ、漫画的な流れで勝利をもぎ取るのはお約束的な展開ではありますが、人に笑われ、バカにされ、それでも自分だけは自分を信じようとする姿は何か心に訴えかけてくるものがありますね。
外から見ても分からないものですが、大和は大和なりに考え、努力し、勝ちに行く姿勢を貫いています。
その一貫した姿勢は愚直とも言えるし、真摯とも言えるでしょう。
人に理解されなくとも、誰の信用を得られなくとも、せめて自分だけは自分を支えてあげられる心の強さ、そしてそれを結果に結びつける賢さ、そんな大人の社会でも大切なメッセージが見え隠れします。
さらに言えば学生相撲という日の当たらない地味さ、にも関わらず端々で感じる相撲界の厳しさ、知ってるようでよく知らない相撲を勉強するにはちょうど良いかもしれません。
あくまで漫画なので現実とは剥離している部分も少なくないでしょうが、それを踏まえても相撲の世界観を知る良いきっかけになることでしょう。
まとめ
端的に言えば小兵が巨漢力士をやっつける爽快さ、そこに至るまでの努力や執念を感じ取る作品です。
相撲の楽しみ方を紐解く初心者向けな作品としても、至ってスタンダードな青春漫画としても、それなりに楽しめると思います。
ただね、もう少しだけ画力が向上すればねぇ、、、そこはデビュー作だから仕方ないか。
良ければぜひ一度ご拝読くださいませ。