(原題:Zodiac)
2007年/アメリカ
上映時間:158分
監督:デヴィッド・フィンチャー
キャスト:ジェイク・ギレンホール/マーク・ラファロ/ロバート・ダウニー・Jr/アンソニー・エドワーズ/ブライアン・コックス/他
アメリカで起きた連続殺人事件、通称”ゾディアック事件”をテーマに、一連の事件を追う人々の姿を描いたサスペンス映画です。
監督は「セブン」や「ファイトクラブ」で有名なデヴィッド・フィンチャー。
未解決事件に関わる人間模様を描いたサスペンスが主体となりますが、関わった人達を群像的に描くヒューマン・ドラマのような印象もあります。
淡々と進む物語でありながらも、時として見え隠れする人間の狂気や緊張感もあり、それなりに内容はあるのですが、いかんせん長い。
その割にスッキリ終わらないフィンチャー節な作品なので、人は選びそうですね。
さっくりあらすじ
1969年、カリフォルニア州で若いカップルが銃撃され、女性は死亡し、男性も重傷を負う。
1ヵ月後、”ゾディアック”と名乗る人物から新聞社に手紙が届き、犯人しか知り得ない事件の詳細と共に、2つの殺人事件の犯人だと告白してくる。
さらに手紙には暗号文が添えられており、新聞の一面に掲載しなければ大量殺人を起こすと付け加えられていた。
新聞に掲載された暗号文を読み解こうと誰もが夢中になる中、記者のポールと風刺漫画化のロバートは並々ならぬ執着を見せ始めるのだが、、、
敏腕記者・ポール
風刺漫画化・ロバート
夢中で事件を追いかけまわす
事件を担当する刑事・デイヴィッド
違う世界では緑の巨人だったり
事件の容疑者・アーサー
しかし証拠は不十分で、、
長ーい事件
単純に上映時間も長ければ、時系列も長い、かなり面長な作品です。
基本的には劇場型殺人鬼の正体を追い求める人々の群像劇となり、暗号文に隠されたヒントや証言などからそれぞれが推理を繰り返すという感じ。
で、推理に綻びが出る度に「~年後」と時間が飛ぶので”一からやり直し”を延々繰り返すわけですな。
実際の事件の捜査は地味でしょうし、突然閃いて犯人逮捕に繋がるなんてことは無いでしょうからリアルと言えばリアルなんでしょう。
しかし主人公格のロバートの恋路とか、多少なりとも端折れる部分がある気がしますし、淡々と抑揚無く進む物語としての完成度が高いとは思えません。
端的に言えば無駄に長いってことね。
とはいえ、実際に起きた事件ではありますし、その詳細や結末は非常に興味深いものではあります。
事件を追い求めていくよりは、事件を突き詰めていく人達に焦点を当てているので直接的ではないにしろ、十分に内容はあると言えるでしょう。
事件を担当する刑事はもちろんのこと、マスメディアも犯人を見つけ出そうと躍起になります。
元々は正義感から始まるものではあるでしょうが、それはいつしか正体不明の人間を割り出すパズルとなり、徐々に狂気に憑りつかれていくわけで。
事件を風化させないという信念と、誰が犯人なのか知りたいという好奇心。
相反するような、矛盾にも似た気持ちを両立させた人間達が狂っていくサマは何とも不気味で恐ろしさを感じます。
そういった点に加え、フィンチャー風の演出や映像表現も相まって、低空飛行のサスペンスとしての魅力はなかなかのもの。
それ故に長く観てると疲れるわけですが。。
主要の登場人物は豪華なキャスティングであり、脇を固める俳優も渋くて素晴らしい布陣です。
主人公格の漫画家・ロバートを演じるジェイク・ギレンホールは堂々とした素晴らしい演技。
新聞社の端っこで食いつなぐバツイチの風刺漫画化ですが、暗号の解読に興味を持ち始め、最終的に家族を犠牲にしても構わないような熱中っぷりはなんとも不快な不気味さを感じさせます。
彼を動かすのは好奇心か、名誉欲か、ゾディアックという人物を通して彼が何を見ていたのか、という面に狂気を感じますね。
敏腕記者・ポールを演じるロバート・ダウニー・Jrはさすが、圧巻の演技力。
飄々とした態度を崩さない天才肌な人物ですが、ゾディアックの正体に執着するあまりにメンタルを壊していく姿はマジモンの狂気を感じさせます。
ゾディアックの正体が掴めない苛立ちから酒やドラッグに溺れていくわけですが、、、これも素晴らしい演技なんだと信じたいところですな。
さらに事件の担当刑事・デイヴィッドを演じるマーク・ラファロ。
警察だからこそ、市民の安全の為に動いていたわけですが、いつしかゾディアックの影を追い求めることこそが目標となってしまいます。
時間が経過する度に焦りは募っていき、ついには違法なことにすら手をつけようとする姿もまた狂気に憑りつかれたもの。
ある意味で最も繊細な役柄だけに、演者の技量が良く分かります。
総じて役者の技量が素晴らしく、作品の魅力の大部分をカバーしていると思います。
まとめ
つまらなくはないけど、長い。
面白いけれども、長い。
とにかく尺の長さが気になる映画であり、もう少しタイトに編集できればもっと魅力的な作品になり得ただろうと確信します。
平凡な映像の積み重ね、スッキリとは終わらない後味、良くも悪くもデヴィッド・フィンチャーの持ち味が存分に発揮されていますね。
好みが分かれそうな作品ではありますが、実際に起きた出来事として興味深いものですし、長い上映時間に目を瞑れば面白いですよ。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。