ハイネケン誘拐の代償


(原題:Kidnapping Freddy Heineken)
2015年/ベルギー・イギリス・オランダ
上映時間:95分
監督:ダニエル・アルフレッドソン
キャスト:アンソニー・ホプキンス/ジム・スタージェス/サム・ワーシントン/ライアン・クワンテン/他

 




 

1983年に実際に起きた、世界的なビール製造会社「ハイネケン」の経営者フレディ・ハイネケン誘拐事件を描いたクライム・サスペンス。

当時の史上最高額となる3500万ギルダー(約23億円)を巡り、5人の若者と、1人の大富豪のやり取りが見所となります。

 

人並みの良心を持っていた若者たちが犯罪者へと変貌していく過程。

ずば抜けたお金持ちが語る世の中の真理。

演じる俳優陣の技量も素晴らしいものであり、これはなかなか見応えのある作品でした。

 

 

 

さっくりあらすじ

1982年のオランダ・アムステルダム。

幼馴染で経営していた事業に行き詰まったコル達は、銀行からの融資を受けられず途方に暮れていた。

明けて1983年。

コルの義兄・ヴィレムも加わった5人組は巨大ビール企業「ハイネケン」の会長であるフレディ・ハイネケンの誘拐を計画する。

誘拐計画に必要な資金源として、現金輸送中の警備員を襲撃し、必要な現金の調達に成功した。

一行は誘拐に必要なものを購入し、監禁するための部屋を用意し、ハイネケンの行動を監視する。

全ての準備を綿密に進め、いざ誘拐計画に臨むのだが、、、

 

 

 

 

幼馴染で共同経営していた建設会社
担保が無くなり、融資を断られる

 

それぞれが大金を得るために
ハイネケン誘拐を計画する

 

計画自体は成功し、誘拐されるも
全く余裕を崩さないハイネケン

 

 

 

 

 

ハイネケンの名言

事業が倒産寸前となり、何かでかいことを成し遂げようとする5人の若者。

思いついたのが誘拐と、その発想自体はヤケっぱちなものですが、いざ実行するにあたっては緻密な計画を練り上げます。

あくまで犯罪に関しての素人集団ではありますが、本気になった素人の怖さはジワジワと伝わってきますね。

 

彼らが人生を懸けて挑んだ誘拐計画は、割とすんなり成功します。

実際に誘拐されたのはハイネケンとお抱え運転手の2人になり、今度はどうやって身代金の受け渡しを成功させるかを考えるわけです。

 

 

で、ここからが本作の軸となりますが、誘拐されたハイネケンと、誘拐犯である5人組の微妙なパワーバランスに注目です。

明かな強者(誘拐犯)と、明らかな弱者(ハイネケン)であるにも関わらず、全く以て余裕な態度を崩さないハイネケンの姿はどう見ても不気味で怖いもの。

 

名前すら知り得ない正体不明な誘拐犯を相手に、実にあっけらかんと要求を突きつけます。

自分が大富豪であること。

メッセージさえ届けば、すぐに身代金が支払われること。

知性や冷静さ、交渉術などで明らかに誘拐犯を上回っていることを自覚しているんですね。

 

 

追い詰められた素人犯罪者の純粋さと、成り上がった企業人の狡猾さがくっきりと浮き彫りになり、何だか観ていて切ない気持ちにさせられます。

支払われない身代金に苛立ちを募らせ、仲間割れしながらもギリギリで踏みとどまり、しかし疲弊していく5人組。

 

ジム・スタージェスやサム・ワーシントンなど、実力派の俳優が演じる5人組の熱意は素晴らしく、戻ることの出来ない犯罪に対する葛藤がよく伝わってきます。

いざ犯罪の世界へと飛び込む際のテンションや、終わった後の賢者タイムなど、押すことも引くこともできないもどかしさには説得力がありますね。

 

 

しかし、そんな5人を1人の存在感だけで覆すアンソニー・ホプキンスの演技力には脱帽です。

とにかく威厳に溢れ、また憎たらしい。

自身の弱さは微塵も感じさせず、常に余裕な態度を崩さず、相手を気遣っているかのような言葉の数々は極めて魅力的であり、また恐ろしいものでもあります。

 

特に彼が語る”2種類の裕福”の概念は切なさを感じるほどに世の真理を突いており、悔しいけど納得せざるを得ないパワーが溢れています。

認めたくはない、けど金持ちの言うことは大体正しい。

そんな歯痒い気持ちになること請け合いですな。

 

 

ただし、実話をベースにしているだけあって、事件の顛末は地味なものです。

サスペンスとしては微妙にうやむやな部分も多く、あまりスッキリと解決するような展開はありません。

老獪な被害者と、崖っぷちな加害者のやり取りを期待するだけに、やや不完全燃焼な印象です。

 

あとはね、犯罪者サイドとしては何ともやるせない気持ちになりますよね。

もちろん超が付くほどの犯罪行為ですし、いかなる理由があろうと誘拐はアウトな事案だとは思います。

しかし、子供の為、生まれてくる子供のため、そして愛する人のため。

そういった”背負うもの”のために手を染めた犯罪者が、結果的にそれらにすがる姿には哀愁が漂います。

 

何のために誘拐したのか?

お金を得て何をするつもりだったのか?

時間が過ぎるにつれボヤけていく彼らの願望は儚く、刹那的で、先を見据えられない人間の現実が映されますね。

 

ハイネケンが語る裕福の条件は2つ。

多くの資産を持つ。

多くの友人を持つ。

この2つだけであり、また2つが同時に成し得ることはありえないと断言します。

 

非常に説得力を持つ名言であり、心に刻んでおこうとは思います。

ただね、資産も無ければ友人もいない筆者としては、もう死刑宣告に近い痛みを覚えますがね(笑)

 




 

まとめ

結局は追い詰められて馬鹿な考えに囚われた若者と、無事に保護され何事も無かった富豪の現実を描いた物語です。

何せ実際に起きた事件ですからね、それ以上でもなく、それ以下でもないでしょう。

強いて言えば事件後のハイネケンが警備会社を設立したと語られ、転んでもタダじゃ起きない老獪な富豪のバイタリティに感嘆としますが。

 

クライム・サスペンスとしての薄味さは否めませんが、出演した俳優の鬼気迫る演技は観て損はありません。

95分という短い時間に、ギュッとつまった人生の真理。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。



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