パトリオット


(原題:The Patriot)
2000年/アメリカ
上映時間:164分
監督:ローランド・エメリッヒ
キャスト:メル・ギブソン/ヒース・レジャー/ミカ・ブーレム/ローガン・ラーマン/ジョエリー・リチャードソン/クリス・クーパー/他

 




 

アメリカ独立戦争に巻き込まれた家族の戦いを描く、壮大な戦争ドラマ。

全然毛色が違いますが、パニック・ディザスター系映画の第一人者であるローランド・エメリッヒが監督を務めます。

 

18世紀に実際に起きた戦争を背景に家族の希望や悲哀、そして憤怒など、様々な感情が交錯する本作は個人的に結構お気に入り。

163分という長丁場な作品ではありますが、非常に見応えのある良作だと思います。

 

 

 

さっくりあらすじ

北米の植民地が次々とイギリス帝国に反旗を翻す中、かつて英雄と呼ばれたベンジャミン・マーティンが暮らすサウスカロライナも開戦か従属かを迫られていた。

子供を抱えるマーティンは難色を示すが、その態度に反発した長男のガブリエルは陸軍に志願し、また次男のトーマスも従軍を希望している。

2年後のある日、マーティンの敷地にまで戦火が迫ると共に負傷したガブリエルが帰還し、それを追ったイギリス軍にトーマスが殺されてしまう。

激しい怒りに燃えたマーティンは嘗ての本能を取り戻し、再び戦場へと赴くのだが、、、

 

 

 

 

圧倒的な戦力を保有するイギリス軍
その戦火はサウスカロライナにも迫る

 

次男を殺されたマーティン
怒りを胸に参戦を決意する

 

長男・ガブリエル
ヒース・レジャーは2008年に帰らぬ人に

 

 

 

 

 

正義と復讐

反戦思想と言いますか、かつて参加した戦争であまりにも(英雄と評されるほど)人を殺してしまったマーティンは議会を通して独立を勝ち取ろうと主張していました。

つまりは暴力ではなく政治的に、平和的に交渉を重ねようとしたわけですが、事情を知らない長男・ガブリエルは父の腰抜けっぷりに落胆し、彼なりの正義感から戦争に参加してしまうんですな。

そしてこの長男の行動が引き金となり、マーティンの家族まで巻き込む悲しい結果を生み、復讐心に駆られたマーティンの喜怒哀楽が物語の中心となります。

 

さらに言えば、この手の戦争映画は反戦を掲げることをはじめ、宗教的だったり哲学的だったりする説教臭さが付き物ですが、そういった点が極力抑えてあるのもポイント。

戦争を背景にしてあるものの、あくまでベンジャミン・マーティンという1人の民兵にフォーカスしてあるだけに、それ以上の壮大な思想は出てきません。

長丁場を感じさせないテンポの良い構成も然り、エメリッヒ監督もこういった映画が作れるのかとちょっとした驚きすら感じます。

 

 

演じるメル・ギブソンの卓越した演技力が実に素晴らしく、これだけでもう観るに値すると言って良いでしょう。

好戦的な相手に我慢を重ね、開戦に反対する姿。

かと思えば息子を殺され、とち狂ったかのようにイギリス軍を襲う姿。

かと思えば敵軍将校の椅子に興味を持ち、手に取って調べようとする姿などなど。

冷静さと凶暴さに悲しみと怒り、そして家族に対する愛情深さやお茶目な一面など、実に感情豊かで深みがあり、物語に奥行きを与えています。

これは本当に流石の一言で、彼のキャリアの中でも屈指の名演技ではないでしょうか。

 

 

で、本作を通じて語られるのは自由と犠牲の2つ。

正義感によりかけがえの無いものを亡くし、復讐心により戦いに臨んでいくという2つのアクションですが、これが実に印象的。

若さゆえ、血気盛んな長男が原因の一端となり次男は死に、怒りを胸に戦争に参加するマーティン。

そして彼の呼び声に共鳴し、次々と自由を求めて賛同者が現れますが、彼らもまた次々と犠牲になっていきます。

 

こういった犠牲の上に自由が成り立つのは歴史上で実際に起こった話ですし、結果として現在の平和にも繋がることではあります。

しかし人を殺し、友を殺されたマーティンが語ったように、守らなければならないものを次々と失う喪失感もまた事実として残るわけで。

つまりは刃を向けても矛を収めても犠牲は生まれ、それにより新たな復讐者が生まれ、再び戦火が巻き起こるという螺旋こそが人類の歴史だとも言えると思うわけですよ。

 

大事なものを守るために戦いに参加する勇気、耐え忍んで大事なものを守る勇気、どちらも間違いではないと思いますし、正しい答えを探すのは非常に困難なこと。

無慈悲に人が死んでいく光景を見て、果たして自分ならどういう選択をするだろうかと、また彼女や妻や家族はどう思うだろうかと、考える機会になるかもしれません。

 

 

 




 

 

まとめ

あくまでエンタメ映画の域は出ていないものの、戦争を考えさせられる説得力に溢れた作品です。

歴史に残る独立戦争として、大国・アメリカが勝利するまでの過程としてもそれなりに楽しめるのではないでしょうか。

ドキドキハラハラ、悲しみがあり喜びもあり、ちょっとした笑いまであるエンターテイメント作品として。

その上で何か大事なものを感じさせるドラマとして、非常に良く出来た傑作だと思います。

 

オススメです。

ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。



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