(原題:28Days Later)
2002年/イギリス
上映時間:114分
監督:ダニー・ボイル
キャスト:キリアン・マーフィー/ナオミ・ハリス/ノア・ハントレー/ブレンダン・グリーソン/ミーガン・バーンズ/他
「トレインスポッティング」や「ザ・ビーチ」ついでに「サンシャイン2057」など、映画の背景に人間の倫理観や心の闇を混ぜ込むダニー・ボイル監督のSFホラー映画。
2007年に続編となる「28週後」も公開されました。
元々は舞台役者として活躍していたキリアン・マーフィーの出世作でもあり、その後キリアンは「ダークナイト」シリーズや「インセプション」などに出演、順調にキャリアを伸ばしております。
霊長類にのみ感染するウィルスの脅威を描いた作品ですが、何よりも”発症が異常に早い”と”感染者の全力疾走”でセンセーショナルを巻き起こした秀作です。
さっくりあらすじ
動物愛護活動家がケンブリッジ霊長類センターを襲撃し、研究員による感染症の警告も空しく、檻から出たチンパンジーは活動家にも研究員にも襲いかかった。
襲撃により外部へと流出したウィルスは罹患して数秒で脳に達し、脳の精神性を司る分野を破壊し人間を凶暴にしてしまう。
そして28日後、瞬く間に広がったバイオハザードによりロンドンはゴーストタウンと化し、メッセンジャーだったジムは病院で昏睡状態から目覚めるのだが、、、
昏睡状態から復活したジム
しかしロンドンは廃墟となっていて、、
こんなんがいる
怖いのは「感染者」か「人間」か
奇しくも大ヒットゾンビ映画「バイオハザード」と同年に公開された本作ですが、既存の量産型ゾンビ映画との差別化を図るために細かい設定に差異を感じます。
というか、感染してから発症までがせいぜい数十秒という異例の速さを誇り、文字通り息もつかせぬ緊迫感が基本的なスタンスとなるわけです。
死んだ人間がゾンビとして復活するわけでなく、生きた人間がそのままイカれてしまうあたりも、厳密にいえば”ゾンビ”とは異なります。
そのため、ハンパじゃない数の感染者が陸上選手並みの走りを見せてくれるのも本作独自の魅力と言えるでしょう。
ただ、この手の映画によくある話ですが、次々と切り替わる細かいカット割りと手ブレは個人的に苦手です。
緊迫感や切迫感を出すのは理解できますが、どうしてもゴチャゴチャ見づらいのが気になります、あと酔うし。
物語としてはよくある”ゾンビに対抗し無力化する”ものではなく、あくまで緊急事態での人間同士の思惑や行動を描く社会派なもの。
前半は人のいなくなったロンドンを舞台に、音のしない街並みを移すことで未曽有の不気味さを感じさせ、後半はゾンビそのものよりも人間同士のエゴのぶつかり合いが見どころとなります。
そういう意味では前半・後半でやや異なるジャンルの映画とも言え、ゾンビ映画としての新しい展開にドキドキしつつもB級の枠に収まった残念な作品とも言えます。
特にバイオハザードから一か月たらずで、女性を拉致してはハーレムを目指すという流れはさすがに短絡的過ぎてちょい興ざめかな。
余談ですが、現在流行中のTVドラマ「ウォーキングデッド」のようにゾンビだらけの環境の中での人間ドラマを描く作品も増えましたが、もはや”ゾンビ”というコンテンツは怖くないのかもしれませんね。
初めて触れた「バイオハザード」の時も、もっと掘り下げれば幼年時に触れた「キョンシー」の時も、当時はガチで風呂もトイレも行けないほどにビビってたものですが。。
まぁいい歳こいたオッサンがそんなもので震えあがるのもどうかと思いますが、いわゆるB級映画の大量発生により、もはやゾンビというコンテンツも終わりに近づいているのかもしれません。
むしろこれからのホラー業界としてはゾンビに取って代わる存在の発掘が急務とも言えますし、今後は何か新しく、そして魅力的な”何か”の登場を切に願うばかりですな。
まとめ
ありそうで無かった新しいゾンビの形を作ったものとして、記憶に残る作品なのは間違いないでしょう。
常に緊張感のある演出や設定、スピード感に溢れテンポ良く進む映像やスリル感もなかなかのものです。
若干無理のある脚本や唐突な展開などツッコミどころも少なからずありますが、そもそもゾンビ映画にそんな整合性を求める方が野暮というもの。
トータルで見れば十分に楽しめる内容かと思います。
暑い夏、一服の清涼感にはピッタリです。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。