(原題:Mulan)
1998年/アメリカ
上映時間:88分
監督:バリー・クック
キャスト:ミン・ナ/エディ・マーフィー/B・D・ウォン/ミゲル・フェラー/スーン=テック・オー/パット・モリタ/他
中国の京劇「花木蘭」をディズニー風にアレンジしたアニメ作品。
もう一度言いますが、ディズニー映画です、ちなみに中国を舞台にした初のディズニー作品でもあります。
クリスティーナ・アギレラが主題歌を歌い、大御所エディ・マーフィが声優として起用。
さらにパット・モリタ(ベストキッドのおじいちゃん)が声優を務めるなど、それなりの大作となるはずの作品でしたが、日本での知名度はいまひとつ。
観たこと無いどころか、その存在を知らない人も少なくありません。
とはいえ海外での評価は高く、ディズニー・ルネッサンスとも評される本作はアニー賞(アニメのアカデミー賞)も獲得しています。
独特の絵と独特の演出、ミュージカルのようなテンポ良い作風にはディズニー風味は少なく、従来のイメージとは遠いかもしれませんが、紛れもなく良作です。
2018年に実写版が公開予定なんだそうで、ふと思い出して記事にした次第でございます。
さっくりあらすじ
中原への侵略を目論む北方騎馬民族、フン族が侵攻を開始したため、防衛のため軍は各家庭に対し男子1名の徴兵令を下す。
徴兵令により花(ファ)家も男子を軍に送らなければいけないのだが、花家には高齢で病を患わっている父ファ・ズーしかおらず、娘のムーランは父に代わり、男装して軍に入隊する。
頼りなく失敗も多いムーランだったが努力の末に成長し、意地悪な仲間たちも次第にムーランを認めるようになり、またムーランもシャン隊長に対し、淡い憧れを抱くようになっていく。
しかしシャン隊長の父・リー将軍が率いた部隊はフン族との交戦の末に全滅、さらにムーラン達の部隊も急襲を受ける。
何とか勝利を収めるものの、ケガの手当ての際にムーランが女性であることが発覚してしまうのだが、、、
ムーラン(木蘭)、いわゆる”おてんば娘”
でも父親想いの良い子
髪を切り、軍に入隊したムーラン
機転を利かせ成長していく
シャン・ユー
騎馬民族・フン族のボス
映像と音楽で彩られる”女性の力”
特筆すべきはまずアニメーションと演出、そして音楽。
中国を舞台に、女性の活劇を中心に、それだけでもうディズニーとしては異例の作品だと言えますが、どれも馴染み良く、さほどの違和感も無く非常に高い完成度を誇ります。
”アメリカナイズな東洋”といったバカげた演出は極力控えめに、でも各キャラクターの個性は大袈裟に、非常にバランスのとり方が上手なんですね。
これは演出にも言えることで、コミカルなシーンもアクションシーンも、セリフのあるシーンも無いシーンも、どちらも印象深く、場面に合わせた音楽も相まって盛り上げてくれます。
まさに映画とミュージカルの良いとこどりと言ったところでしょうか。
さらに言えば善も悪も、キャラクターのイメージを植え付けるような無駄なシーンは皆無で、ただただ演出と雰囲気で”魅せる”手腕は素直に凄い事だなと感心します。
ちなみに知恵と勇気で戦うムーランですが、彼女はれっきとした「ヒロイン」です。
ただヒーローの助けを求めるステレオタイプな女性ではなく、父のために剣を取り、肉体的な弱さを勇気でカバーする姿は女性が秘める”強さ”と”優しさ”を表します。
本作においての「ヒーロー」であるシャン隊長の存在はそこまで重要なわけでもなく、男性に依存しない新たなヒロイン像としての価値観は当時かなり斬新だったのではないでしょうか。
か弱く優しい「外国のプリンセス」は今でも人気の中心ですが、個人的にはムーランのような強く優しい女性に対して、好感よりも尊敬すら感じる気がします。
まとめ
「男なんだから、、、」
「女なんだから、、、」
こういった男女のイメージや理想像は非常に根深く、そう簡単に拭えるものではないでしょう。
しかしそういった”当たり前”とされる男女間のイメージに一石を投じた作品という意味でも価値ある作品だと思います。
が、重ねて言いますが、知名度の低い作品です。
しかし本作を観れば観るほどに、何故こんなに知名度が低いのか不思議な作品でもあります。
リトルマーメイドとか。
白雪姫とか。
アナスタシアとか。
ジャスミンとか。
ラプンツェルだけじゃぁないんです。
良作です。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。
まとめ
もはや有名な話になってしまいましたがMr.サンデー某報道番組にて、上海のディズニーランドでのパレードの映像で「三国志風の山車」と報道されたそうです。
間違えたことに気づくと「中国風にアレンジしたキャラクター」だと訂正されました。
ものの価値に気づかず、学ばず、自分の無知をひけらかす恥を知らない良い例ですね(怒)