(原題:The Thing)
1982年/アメリカ
上映時間:109分
監督:ジョン・カーペンター
キャスト:カート・ラッセル/A・ウィルフォード・ブリムリー/リチャード・ダイサート/ドナルド・モファット/T・K・カーター/他
1951年に公開されたSFホラー映画「遊星よりの物体X」のリメイク作品。
SFホラーであり正体不明な生物の脅威が中心になる物語でありながら、実際に描かれるのは閉鎖的な空間で緊迫状況になる人間たちの心理であり、どちらかと言えばサスペンス色の強い映画です。
人間に擬態し捕食する驚異的な生物は非常におぞましく、生理的な嫌悪を促す造形であり、一般的に思い描く怪物の姿とは一線を画します。
良い意味で明確ではなく、形容しがたいモンスターの造形は後の作品に多大な影響を与えたとも言われています。
CGやVFXがが進化した現在の視点で見ても、見劣りしないとまでは言いませんが、得体の知れない恐怖は感じ取れることでしょう。
さっくりあらすじ
1982年、南極のアメリカ合衆国・南極観測隊第四基地。
突如としてノルウェー隊のヘリが現れ、銃弾や手榴弾をまき散らしながらハスキー犬を追い回していた。
手榴弾によりヘリは爆発、生き残った男は必死に何かを訴えるもノルウェー語を理解できる者がおらず、銃撃してきたために止むを得ず射殺された。
犬は保護されたが電波状況が悪く、パイロットのマクレディ達はノルウェー基地に赴くものの、そこはすでに壊滅しており、自殺した遺体と謎の焼死体だけが残されていた。
残されたテープや異様な焼死体を持ち帰り解剖するが、結果として彼らは健康そのものであった。
そしてその夜、小屋に入れられ、人目が無くなった犬に異変が起き始めるのだが、、、
保護されたハスキー
可愛い
直後にはこんな生き物が、、、
気持ちわりぃぃぃ
”生物”は人間に擬態する
みんなそろって疑心暗鬼に
誰を信じるのか?
圧倒的な脅威に四苦八苦するのではなく、仲間内の誰が”それ(怪物)”になってしまったのかが不明という、そんなもどかしい怖さが最大の見所となります。
ちなみに監督曰く「”それ”になってしまった人間の目には光がない」とのことです。
うん、さっぱり分からないよ。
「エイリアン」のように変身後は一定の決まった形になるでもなく、寄生した人や部分に合わせて動き回る”それ”はもう本当に、、、気持ち悪い。
何というか、全身に鳥肌が立つような、テンションの下がる気持ち悪さなんですよね。
逆にこれを見て嬉々とする人がいたら、それはもう病気です、はい。
このグロテスクな表現、どこかリアリティを感じさせる演出は秀逸で、生理的な嫌悪感を限界まで刺激してきます。
どこで。
誰に。
どのように。
寄生する経路が全く読めないために、よくあるビックリ系ホラーとは異なり、怖さに慣れることが無いんですよね。
「お前かい!?」とツッコみたくなるような変身が多く、怪しい人物に気を逸らせた上でビックリさせるという演出は基本ではありますが、それを究極にまで昇華させるとこんなにも怖いものなんです。
また南極の基地だけに閉鎖的であり、基地内の無機質な空間や外の吹雪など、どこを見ても景色が変わらないという点も人間が感じる閉塞感やストレスを助長させます。
とにかく疲れる映画ですな。
まとめ
ホラー・ミステリー・グロテスクが黄金比率で成立している傑作です。
もう不気味だし、気持ち悪いし、怖いし。
何てことのない日常が徐々に崩壊していく緊張感、そして未知の脅威に追い立てられる恐怖、これはもうぜひ体験してほしいところ。
苦手な人にはオススメしませんが、ホラーに興味のある人には観てほしい傑作です。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。