スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師


(原題:Sweeney Todd:The Demon Barber of Fleet Street)
2007年/イギリス・アメリカ
上映時間:116分
監督:ティム・バートン
キャスト:ジョニー・デップ/ヘレナ・ボナム=カーター/アラン・リックマン/ティモシー・スポール/ジェイン・ワイズナー/他

 




 

 

ご存じ変態天才映画監督ティム・バートンが手掛けたミュージカル・ホラー映画。

元ネタは1979年に公開された同名ミュージカル、当時トニー賞(演劇・ミュージカルでの栄誉ある賞)で8部門で受賞するなど、いわゆる”名作”のひとつとして数えられています。

余談ですが原作を手掛けた作曲家スティーヴン・ソンドハイム氏はミュージカル界ではの如く有名人であり、大統領自由勲章(日本でいう紫綬褒章的な)をはじめ、アカデミー賞、トニー賞、グラミー賞などなど数々の栄誉ある賞複数回受賞しております。

 

そんな古典的名作の数々に魅せられ、ティム・バートンはいつか映像化してみたいと考えていたそうですが、盟友ジョニー・デップとヘレナ・ボナム=カーターとの名コンビを武器に、極めて意欲的に取り組んだんだとか。

ただ物語のテーマがカニバリズムなんでね、どう考えても現代文化の価値観ではヒット作にはなり得ないものではあったはずです。

 

 

 

さっくりあらすじ

15年前、美しい妻・ルーシーを狙ったターピン判事の謀略で無実の罪を着せられ、理髪師ベンジャミン・バーカーはオーストラリアへと流罪にされていた。

脱獄し、再びロンドンへと戻ったベンジャミンは「スウィーニー・トッド」と名乗り、かつて理容業を営んでいた自分の店へと舞い戻った。

階下で売れないミートパイの店を営むラヴェット夫人はルーシーはターピンに嬲られ自殺してしまったこと、そして娘のジョアンナもターピンに軟禁され狙われていることを伝え、それを聞いたスウィーニーは復讐を誓うのだが、、、

 

 

 

 

スウィーニー・トッドことベンジャミン・バーカー
判事への復讐を誓う

 

売れないパイ屋の主人・ラヴェット夫人
彼女のパイで店は大繁盛するが、、

 

ターピン判事
女好きで職権乱用も厭わない

 

 

 

 

 

興味深い”都市伝説”

まずはこのスウィーニー・トッドという都市伝説を具現化したような存在が非常に興味深いですよね。

当時は産業革命真っ只中のイギリス・ロンドンですが、世は深刻な不景気がはびこる格差社会であり、かの有名な殺人鬼”切り裂きジャック”が事件を起こしていたのもこの時代と、色々とカオスな時期だったんだと思われます。

実際に1800年代初期に実在しただとか、事実に基づき作られた人物だとか、恐ろしくも非常に好奇心をそそられるキャラクターではありますな。

 

作品としてはミュージカル調ながらも生々しさを感じるような、ややグロ系のサスペンス・ホラーといったところか。

ただ描写にいちいち不快さを感じるだけで、実際はホラーとしての怖さや不気味さはあまり感じませんけどね。

スパッと切れる肉の感触、グチャッと潰れる肉の感触、ブニューっとミンチにされる肉の感触、それぞれが感触として伝わってきそうな表現は人を選びそうですが、、端的に言えば気持ち悪いっす。

時代背景も描くミュージカルの映像だと思えば良くできているようにも思いますし、ホラー映画の括りで考えればミュージカル色は邪魔とも取れますし、何とも不可思議な作品ではあります。

 

 

全体的に灰色がかった映像が表現するように退廃的で貧しいロンドンの街並み、そんな中で声高に歌う演出はなかなか芸術性が高く、見応えがあります。

利己的な正義を振りかざした人間が憎悪の波に飲まれ、いつしか場当たり的に殺人を繰り返すという歪んだ人間の狂気。

そんなおどろおどろしい演出と、ティム・バートン独特のダークファンタジーの世界観は非常に上手いこと噛み合っていますね。

普段からファンタジックなファンタジーを求められるティム・バートン監督の欲求というか、「お花畑を求める奴にはコレでも食らえ!」と言わんばかりの描写が個人的にツボでした。

基本的にミュージカルが苦手な筆者ですが、本作は最後まで飽きずに観れましたよ。

 

 

全編を通してフォーカスされるのはジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター、アラン・リックマンの3人ですが、さすがは個性派&演技派俳優だけあって、三者三様に素晴らしい演技で魅せてくれます。

個人的にはジョニデのスウィーニー・トッドはジャック・スパロウに次ぐハマり役かなと。

美しき血飛沫をあげながら首を掻き切るジョニデはまさに怪演という言葉がピッタリで、ミュージカルや歌の部分はちょっとアレですが、それを差し引いても極めて印象深いキャラクターです。

 

ヘレナ・ボナム=カーターは相変わらず安定感のある存在感。

ブスなのか美人なのか未だに判断できない独特の魅力が持ち味ですが、本作でも頭のネジが少々外れた女性として、何とも不気味な魅力を発揮しております。

 

アラン・リックマンは本当に素晴らしいですなぁ。。

善人も悪人も演じ分けられる技量の深さ、独特の声色、醸し出す緊張感、彼がいるだけで画面が引き締まる素晴らしい俳優ですね。

亡くなってしまったのが本当に惜しくなりますな。

 

 




 

 

まとめ

何というか、悪趣味な映画です(笑)

独特な色彩と強烈なグロ演出、そして後味の悪いエンディングとオススメできる要素はあまり無いかもしれませんね(汗)

不可思議で明るく健全なティム・バートン作品に辟易としている筆者としては非常に好印象な映画でしたが、好評とは言えず、また興行的にも大成功とは言えなかったようです。

やや投げっぱなしの終わり方も賛否ありそうですし、本作に限ってはティム・バートン監督がやりたかったことを詰め込んだのだろうと見て間違いなさそうです。

 

非常にアクが強く、好き嫌いが分かれる作品ですが決して退屈な作品ではありませんし、食わず嫌いで観ないのは勿体ないようにも感じます。

よければ一度ご鑑賞くださいませ。

おまけ

昔はマク〇ナルドのチキンナゲットがあまりに安く食べられるため、実はミミズ(地域によってはネズミ)の肉を使ってる、という都市伝説(というよりかは難癖か?)がありましたよね。

実際に海外では食用のミミズやネズミというものがあるんだそうで、例えばですけどミミズ100%でナゲットを作ると鶏肉よりもコストが高くなるんだそうな。

ついでに味は「とても食べれないほど不味い」んだそうですよ。

企業努力に感謝ですなぁ。



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