2007年/日本
上映時間:110分
原作:伊坂幸太郎
監督:中村義洋
キャスト:濱田岳/瑛太/田村圭生/関めぐみ/松田龍平/大塚寧々/他
ご存じ原作→映画化で引っ張りだこの伊坂幸太郎もの。
宮城県仙台市を中心に全てのロケを宮城県内で行い、ビジュアル的にはどこにでもある殺風景な街並みにしか感じませんが、地元ではかなり大騒ぎになっていたんだそうな。
(宮城出身の筆者の嫁情報)
恥ずかしながら原作(というか伊坂幸太郎作品)を読んだことがないので、まっさらな状態での視聴に臨んだわけですが、何とも不可思議な作品です。
どこか違和感を感じる余韻は独特のものであり、後々に振り返ってみるとよく映画化できたなと感心してしまいます。
さっくりあらすじ
大学入学に向けて椎名は仙台に引っ越してきた。
引っ越しの片づけをしながらボブ・ディランの「風にふかれて」を口ずさんでいる椎名を見て隣に住む河崎が声をかけ、共にボブ・ディランが好きだということで意気投合する。
そんなある日、河崎が同じアパートに住むブータン人のドルジに広辞苑を贈りたいと言い始め、一緒に本屋に強盗に入ろうと意味不明な提案をする。
全く気乗りのしない椎名だがなし崩し的に協力することになり、モデルガンを片手に本屋に向かうのだが、、、
ボブ・ディラン好きをきっかけに
仲良くなった二人
本屋を襲おうと言い出す河崎
しぶしぶ付き合う椎名
瑛太の魅力
映像化が困難だと言われていただけあって、現実と回想シーンを織り交ぜながら(カットバック形式)進んでいく物語は少し難解で、全体を理解するのに時間がかかります。
映画としての”尺”があるので仕方ないところですが、足りない部分は原作小説で補いましょう。
まぁ、それ以前に意味不明な犯罪計画を提案したり、それに乗っかって本屋強盗したり。
これまた意味不明な秘密をこれ見よがしにちらつかせたり、現実的な物語だと考えれば色々と破綻している気もしますがね。
そういった脚本はさておき、演出や構成はなかなか良く出来ていてトリッキーな演出の末に辿り着く結末は見応えがあり、それなりに面白かったように思います。
ただそのトリッキーさに慣れてしまえば割と読みやすい展開でもあり、”大どんでん返し”という程のインパクトは無かったかな。
あくまで”巻き込まれた”だけの普通の青年である椎名を演じた濱田岳の演技は悪目立ちせず、控えめで素晴らしい。
これは役者だけの手柄ではないですが、監督やエディターも含め非常に良いバランス感覚ですね。
主役だけに嫌でも物語の中心にくるわけですが地味過ぎず、目立ち過ぎず、ただ事件に巻き込まれた青年としてのキャラクターが完成しています。
その絶妙なバランスが映画としてのテンポを生み、また傍観者の視点=視聴者の視点として、距離の近さを感じさせます。
そして河崎を演じた瑛太の演技もまた素晴らしい。
なんかチャラい噂しか聞こえてこないし、俳優としても微妙だなとか思っていましたが、本作に限っては非常に魅力的に感じます。
河崎として生きる前、ダサくて田舎者で、言語の壁もあり友達のいない青年・ドルジとしての演技は一見の価値ありです。
もともと男前なのは間違いないでしょうが、イケてないメンズをここまで見事に演じ切るのは本当にすごいことです。
これはビジュアルだけの話ではなくて「ちょっと垢抜ければ男前になりそうな残念なメンズ」という現実にいそうな絶妙なキャラクター性であり、雰囲気的なものでもあるため簡単にできるものではありません。
これは見直したなぁー、マジで。
まとめ
全体としてはどこかシュールな笑いを感じさせながらも、またどこか重さを感じる悲しいお話。
ゆるいテンポで淡々と進む物語は、これまた淡々と悲しい歌詞を歌うボブ・ディランのメロディのようで、よく分からない感動があります。
オススメするほど面白いかどうかは微妙なところですが、なかなか印象深い映画であり観て損は無いでしょう。
ぜひ一度ご鑑賞くださいませ。