俺の獲物はビンラディン


(原題:Army of One)
2016年/アメリカ
上映時間:93分
監督:ラリー・チャールズ
キャスト:ニコラス・ケイジ/ウェンディ・マクレンドン=コーヴィ/ラッセル・ブランド/レイン・ウィルソン/デニス・オヘア/ポール・シェアー/他

 




 

ずっと気になっていた問題作、というか話題作、というか、、何なんすかね?

 

イスラム系テロ組織・アルカイダの司令官ウサマ・ビン・ラディンの誘拐を企て、実際にパキスタンへと渡りパキスタン当局に拘束されたアメリカ人男性の実話を元につくられたコメディ映画です。

とても正気の沙汰とは思えないお話ではありますし、本来ならこんな脚本は製作会社は目もくれずに捨ててしまうことでしょう。

 

しかし”実話である”という最強のエッセンスがあり、こんなイカれたことをやってのけた人物が本当にいるという事実は極めて興味深いものでもあるわけで。

とても人にオススメできるような内容ではないですが、世の中にはいろんな人がいると感じてもらえればこの映画にも価値が生まれるのではと思います。

 

 

さっくりあらすじ

アメリカ・コロラド州に住む、愛国心溢れる中年のアメリカ人男性ゲイリー・フォークナーはアメリカ同時多発テロの首謀者ビン・ラディンの消息が掴めないことにいら立ちを募らせていた。

腎臓疾患を抱えるゲイリーが人工透析の治療を受けていると神が現れ、ゲイリーは神からビン・ラディンを捕らえるよう啓示を受け、使命感と愛国心に燃えたゲイリーはパキスタンへと向かい、自らの手でビン・ラディンを捕まえることを決意。

仕事や住むところにすら困っていたゲイリーは担当医から借金し、日本刀やヨットを調達し、海路でパキスタンへと向かうのだが、、、

 

 

 

 

ゲイリー・フォークナー
異常な行動力を誇る

 

そんな彼が”神”と出会ったことで、、

 

こんなことになっちゃいました

 

 

 

 

 

”狂気”という名の”笑い”

ということで、要はおっさんにヤバい”神”が降りてきてしまったことで起きた一連の事件が描かれているわけですが、コレが本当にヤバい。

”神”という存在を信じるかは個人の自由なので何も言いませんが、何故に神がゲイリー・フォークナーという一般人を選んだのかはとても気になるところです。

 

というのもニコラス・ケイジ演じるゲイリーおじさんはデフォルトな状態でもまぁまぁヤバいお方でして、生活もメンタルも安定感の無い日々を余儀なくされているような立場です。

アメリカ製以外はクソだと主張し、メキシコ人は泥棒だと罵倒し、星条旗(の布団?)で眠りにつく姿は愛国者なのか差別主義者なのか判断がつきません。

幼少期のイジメを鑑みれば多少の同情もしなくはないですが、強い愛国心を胸に異常に明るく振る舞う姿には一抹の切なさが見え隠れしますね。

 

ただ決して異常者と断言できるわけでもなく、彼が愛する恋人や彼女と一緒に暮らす障害(失語症?)を抱える姪を気にする一面もあり、神の啓示を優先するにしても彼女らのお土産も忘れないという優しい一面も垣間見えます。

まぁそういった面を差し引いても日本刀を片手にパキスタンに行く時点でうやっぱり異常者だと思いますけどね(苦笑)

 

 

物語としてはゲイリーおじさんが神の啓示を受け、紆余曲折してパキスタンへと入国し、ビン・ラディンを探し回るといった内容。

この辺りは恐らく事実に基づいて作られたためか、映画的には極めて地味で単調な印象です。

 

そんな地味な映像を彩るのが他ならぬニコラス・ケイジ兄貴の怪演技。

役作りのためか大幅に体重増加し、文字通りイカれたハイテンションを演じる体当たり演技は称賛もので、むしろ金欠なせいか最近やたら小規模な映画に出まくってる兄貴の今後をを心配してしまうほど。

ビン・ラディン捕縛という難しい使命を与えるくせに何も助けてはくれない神に対し、憤りと使命感の葛藤で泣き崩れる姿などは本当に迫真の演技で、コチラはただただ苦笑いするしかないような迫力に溢れています。

 

また”神”を演じるラッセル・ブランドも非常に良い味を出しておりまして、神としての描写が無茶苦茶な気もしますが素晴らしい存在感です。

知性的なわけでもなく、優しく諭すわけでもなく、全知全能な割には俗っぽく、いいか悪いかは別にしてかなりユーモアのあるお姿で描かれております。

というか「お前が成長するために試練を課してやってんだよ!」と言わんばかりに凄味のある人物であり、ここまでくだけた神様像は初めて見る気もしますが、、

神様なりの疲労感や倦怠感、悩みなどを吐露する場面などは笑って良いのか困りますが、ゲイリーおじさんが見た神の姿がコレであれば、僕らは黙って納得するしかないのでしょう。

 

 




 

まとめ

コメディ路線ではあるものの、一人の男性が現実に起こした行動を描いた作品です。

実際は地味であったであろう一連の行動を面白おかしく脚色し、ニコラス兄貴の全力の演技がフィクション色を強めていますが、エンディングで流れる本人の映像が流れることで僕らも現実に戻ります。

そうだ、これはノンフィクションなんだと。

 

一人の人間の荒唐無稽な行動と、あまり馴染みの無いパキスタンという国を眺める映画だと思えば悪くはありませんが、いかんせん下品な表現も多々飛び出しますので少々人は選びそうですね。

でも個人的にはとても面白かったけどね。

 

よければ一度ご鑑賞くださいませ。

 

 

 



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