(原題:A Cure for Wellness)
2016年/アメリカ
上映時間:146分
監督:ゴア・ヴァービンスキー
キャスト:デイン・デハーン/ジェイソン・アイザックス/ミア・ゴス/ハリー・グローナー/セリア・イムリー/他
山奥の療養所に行った青年が、その地の隠された秘密に巻き込まれていくサイコ・スリラー。
かつては「ディカプリオの再来」と呼ばれたり呼ばれなかったり、その割には出演作に恵まれないデイン・デハーンが主演を務めます。
山奥に潜む病院、その地に残る陰湿な過去、何やら怪しい実験。
一つひとつのエッセンスだけを見れば中々に興味深い内容に感じられますが、どうにも今一つ伸びが足りない印象でした。
往年のゴシック・ホラーを再現したような雰囲気は良いんですけどね、観終わってみれば「ウナギがキモい(後述)」くらいの感想しか出てこない不可思議な映画です。
さっくりあらすじ
ウォールストリートで働く若き野心家のロックハートは会議室へと呼ばれ、スイスの療養所へ行った社長のペンブロークが戻ってこないため、連れ戻すよう命じられる。
療養所がある場所はかつてこの地を支配した男爵の敷地であり、人間を使って何かの実験を繰り返した結果村人の怒りを買い、妹と共に火をつけられ燃やされたという逸話を知る。
いざ療養所へと到着するも社長との面会は叶わず、ロックハートは一度ホテルへ戻り出直そうとするのだが、、、
エリート金融マンのロックハート
決して2代目ゴブリンではない
療養所の所長・ボルマー
決して白髪の魔法使いではない
療養所で過ごす少女・ハンナ
独特の魅力が素敵
うえぇぇぇぇ(吐)
忌まわしい言い伝えが起こる片田舎の療養所を舞台に、いかにも胡散臭い科学的な療養法やカルト的な信仰など、雰囲気はとても良いんです。
極めて鮮明で美しい映像の数々に、不気味なほどに協調される色調に、映像面や演出面での完成度は高く、その点だけは素直に評価したいところです。
惜しむらくは、それだけの良質な演出に脚本が追い付いてこれていないこと。
約2時間半という長めな尺に対して物語としての密度が薄く、間延び感が否めない薄っぺらい内容になってしあっています。
割と先の読みやすい展開なことも相まって、タイトにしきれない編集は明らかにマイナスな材料であり、これはもうシンプルに監督の責任ですな。
表立っては描かれませんが「現代社会におけるストレスや病的思想」という陰のテーマが立派なだけに、それに相応しい脚本にならなかったのが本当に残念。
キャストの演技力も高かっただけに、もっと内容深い作品になり得たであろうポテンシャルがひしひしと感じ取れます。
物語としては、事故って負傷したロックハートが療養所の秘密を解き明かしていくような流れ。
不自然なほどに白く統一された職員の制服や病院の内装、まるでロボットのように揃って同じ療養を繰り返す老人たち、そして一様に目が笑ってない笑顔。
もうね、1から10まで不気味な雰囲気に覆われている場所でして、実際にあんな所に行ったら10分で帰りたくなりそうですよ。
静かで牧歌的な療養所のはずなのに、どうにもこうにも居心地が悪い、そんな閉塞的な空気感が満載です。
そんな中で徐々に歪な何かを感じ取っていくロックハートを演じるデイン・デハーンは文句無し、堂々たる演技で安定感すら感じさせます。
顔色が悪く、現代社会でのし上がる為に色々と無理をしている野心家としての存在感は中々のもの。
本作も含め、何故かヒット作に恵まれない不遇の俳優ですが、まだまだ今後の活躍に期待したいところですな。
そしてヒロインに当たる薄幸の少女・ハンナを演じるミア・ゴスのクセのある魅力もまた素敵。
元々はミュウミュウのモデルだったそうで、カナダとブラジルのハーフでイギリス育ちと、中々にハイブリッドな血筋がそのまま彼女の魅力となっているのが印象的。
あっぱれな脱ぎっぷりといい、非常に強い個性を発揮できる良い女優ですね。
で、本作を最も印象づけるアイテムが、ウナギ。
非常に艶めかしく、ウネウネと動くウナギなんですが、これがまぁ気持ち悪いの何の。
全体的にスローなテンポで展開する映画ではありますが、漂う眠気を吹き飛ばすような痛そう&気持ち悪い演出だけは秀逸です。
特に口に無理やりホース的な器具を突っ込んで、ヤバい液体(ウナギ)を流し込むシーンは本当に、ほんっとうに気持ち悪い。
むしろ思い出すだけで気持ち悪い、おええぇぇぇ。。
まとめ
サスペンス・スリラーの影なるテーマに色々と盛り込もうとして、その大半がスベり、結果として記憶に残るのはウナギだけと、どうにもリアクションに困る作品です。
それなりに雰囲気もあって面白い気もするんだけど、2度観ようとは思わない、それくらいの感想ですな。
とにかく痛い・キモい作品ですので、それなりの耐性がある人以外は止めた方が良いかもしれません。
良ければ一度ご鑑賞くださいませ。