
(原題:Funny Games)
1997年/オーストリア
上映時間:108分
監督/脚本:ミヒャエル・ハネケ
キャスト:スザンヌ・ロタール/ウルリッヒ・ミューエ/アルノ・フリッシュ/フランク・ギーリング
-Caution-
本日の「俺の映画が観れんのか!!」は
非常に気分の悪くなる作品のご紹介です。
鬱展開が苦手な方はオススメ できませんので
お気をつけください。
知る人ぞ知る、胸糞悪くなるサスペンス・スリラー。
後に同監督によるハリウッドリメイクとして「ファニーゲームUSA」が公開されました。
そっちのが記憶に新しいと思いますが、こんな凄惨な映画がリメイクされるくらいなので、一定の支持は集めているということでしょう。
カンヌ映画祭出品時はあまりの内容の凄惨さ、胸糞の悪さから席を立つ評論家や観客が続出したそうです。
そんな良くも悪くもいわくつきの作品で、実際にイギリスでは発禁運動まで起こったんだとか。
ちなみに監督の言い分を要約すると次の通り。
「ハリウッド映画は暴力というものを娯楽や快楽の手段として用いている。
そこで理不尽な暴力というものを見せつけることで人の痛みというものを知らせたかった」
そうです。
うーん分かるような、分からんような。
つまりはアクション映画をはじめとする娯楽作品に対する強烈なアンチテーゼと共に、暴力がもたらす恐怖を感じることができる作品を作ろうとしたわけですな。。
さっくりあらすじ
夫ゲオルグと妻のアナ、息子のショルシと愛犬ロルフィーは湖に程近い別荘へとバカンスを過ごしにやって来た。
夕食の準備にとりかかるアナのもとに、二人の青年が訪れる。
白いシャツに白いパンツ、白い手袋を身に付けた二人はピーターとパウルと名乗り、卵を分けてほしいと申し出てくるが、、、
卵をもらいに来た隣人
徐々に狂気を滲ませていく二人
”救いの無さ”の最高峰
実際に観てみると監督の狙い通り、期待を裏切らずとっても胸糞悪いです(笑)
イライラモヤモヤして、とにもかくにも犯人の2人をヌっ殺してやりたくなります。
なるんですが、この映画の嫌なところは決してつまらない映画ではないという点なんですな。
だから余計にタチが悪いとも言えますが。。
作品としての構成が非常に練りこまれていて面白く、通常のサスペンス映画とは一線を画す演出に強い特徴を覚えます。
というのも、この映画では犯人サイドが常に有利な立場で話が進んでいきます。
普通ならご都合主義といいますか、あと一歩のところで見えない力が主人公サイドに働き、逃げ出すなり、やり返すなりするタイミングがありますよね。
しかし本作ではそういった要素はことごとく排除され、むしろ幸運は全て犯人サイドへと傾いていきます。
逃げ出す希望が見えてきたぞ!
↓
だが許さん
↓
今だ!やり返すんだ!
↓
だが許さん
↓
やっと抜け出した!逃げ切れ!頑張れ!
↓
だが、、、という絶望のループ。
あーすればいいのに!こーすればいいのに!というような視聴者の希望や願望を完璧にスルー。
言うても勧善懲悪が基本となる、ハリウッドのエンターテイメントに馴れきっている僕らに真っ向から挑んでくるわけです。
また役者さんたちも素晴らしく、絶望の中に見つけた一筋の光→結果絶望の流れの喜怒哀楽を完璧に演じています。
聞きなれないドイツ語も独特の雰囲気を作るのに一役買っていると思いました。
全体的にBGMが少なめであり、不気味に静かに、ただ淡々と流れる作風も良いですね。
音がしないだけで正体不明な不安感が拭えず、徐々に憔悴していくサマが印象的です。
まとめ
しつこいようですが、マジでテンションの下がる映画です。
結局この映画を通して、何が言いたいのかは分かりませんが、”お約束”を全てブッチしたミヒャエル監督の熱意は認めてあげるべきかなとは思います。
が、紹介しといてなんですが、どう考えてもオススメはできません(汗)
日常を非日常に変える狂気が見たい人、救いの無い鬱な映画が好きな人のみ観れば良いかなと。
よければ一度ご鑑賞くださいませ。