極悪がんぼ
2001~2009
原作:田島隆
作画:東風孝広
イブニング(講談社)
全16巻
激昂(ブチギレ)がんぼ
2009~2013
全8巻
がんぼ-ナニワ悪道(あくどう)編
2013~連載中
「カバチタレ!」で有名な田島隆先生、東風孝広先生タッグによる、事件屋として成り上がろうともがく青年の物語。
法律の網を潜り抜け、トラブルシューターとして揉め事の解決に奔走したりする一方で、ハイエナのように人を陥れるリアルにおっかない人々を描いた社会派の漫画です。
スクリーントーンを全く使わない独特の絵柄は好みが別れるところですが、人の感情や危機感、悲壮感を非常に上手く、分かりやすく表現していると感じます。
正義の行政書士が弱者を救う「カバチタレ!」に対し、「極悪がんぼ」はアウトローな面々が主人公。
特に社会的な弱者として借金まみれになっていた主人公・神崎守が四苦八苦しながらも成長していく姿は違法スレスレながらも頼もしく、ワルな男のロマンに溢れています。
さっくりあらすじ・極悪がんぼ
神崎守は中卒で学歴が無く、職を転々と変えうだつの上がらない人生を送り、気が付けば28歳の誕生日を迎えていた。
そんなある日、同僚の茸本に誘われカード詐欺を働くがあっさりと持ち主に見つかり、盗んだ額を返済するために秦探偵事務所の所員である金子&冬月に作業船へと売り飛ばされてしまう。
海洋上の重労働に辟易した神崎は、自分を売り飛ばした秦探偵事務所へと救助を依頼。
命がけで洋上の作業船から脱出し、無事に秦事務所に確保されるが、報酬費を含めた莫大な借金を返済するために秦事務所で働くことになるのだが、、、
主人公・神崎守
ビッグになるために覚悟を決める
さっくりあらすじ・激昂(ブチギレ)がんぼ
前作から3年後、大きく成長し、広島の裏業界では有名な事件屋となった神崎。
金子も秦探偵事務所から離れ、広島県芸南市議として表舞台で奮闘しつつも神崎をフォローしている。
そして総務省の官僚でありながらも、二流国立大卒という肩書のせいで東大卒の面々と出世レースで大きく引き離され、広島県庁に出向中の男・二宮亮。
とある事件をきっかけに、神崎と二宮が接触。
神崎はようやく手にした大きな足場を活かし、政治の利権に食い込むために。
二宮は裏社会で暗躍する神崎を利用し、出世のきっかけを作るために。
互いに利害と副作用を意識しつつも、持ちつ持たれつな関係を築いていくのだが、、、
さっくりあらすじ・がんぼ ナニワ悪道編
秦所長が自害し、今や大阪裏社会のトップに躍り出た若きフィクサー・神崎守。
極道や各地域の大物フィクサーとも渡り歩き、キャリア官僚・二宮と共に成り上がろうと奮闘するのだが、、、
がんぼの成長記
中卒で軽率、社会的弱者である上にダメ人間である神崎が将来「BIG」になることを夢見て奔走する物語からシリーズが始まります。
何も分からないことをいいことに、秦事務所の面々は使い捨て紛いに神崎を利用し、その度にどん底で這いつくばる神崎の姿は大袈裟でなく心を打ちます。
それ故に続編で成り上がり、裏社会のフィクサーとして顔が売れてくると何ともしみじみ「良かったねぇぇ」と声をかけてあげたくなるくらい、つまり感情移入っぷりが半端じゃないんですね。
何とも間抜けでお人好し、「悪」に徹しきれない甘さなどが人間臭く、非常に魅力的なキャラクターと言えるでしょう。
よく知らないけど、たぶん本当にあるんだろうなと思わせる裏社会の描写が極めて秀逸です。
知恵を武器にできるカッコよさと、知恵が無いために堕ちていく人間のサマはなかなかに勉強になります。
無能な人間は利用され、食い物にされる、極端ではあるものの、ある種の現実社会の縮図として考えさせられるものも多いのではないでしょうか?
まとめ
世の中に実在すると言われる「事件屋」という存在。
時にスマートに、時に荒っぽく、闇に紛れて利権を得て、大金を稼ぐ姿はダークヒーローそのもので独特の魅力に溢れています。
美味しい話には裏があり、裏には怖い人間がウジャウジャいるわけで、面白おかしく、また非常に興味深く教えてくれる教科書のような漫画でもあります。
続編からはより大きな利権を求め、政治・官僚・極道の世界も描かれていくわけですが、本作を読むことで、世の中の「理」というものが多少は理解できるのではないかと思います。
いや、ホント面白いんだから。
ぜひ一度ご拝読くださいませ。